じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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17章 再開の約束

5-4

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5-4

くる!強い魔力が、ヴォルフガングの下に集まっている。ボクは素早く反応した。

(桜下!)

「わかってる!」

ボクとヴォルフガングは同時に、詠唱を開始した。さあ、考えろ。むやみに撃ち合うだけじゃ、きっと勝てない。さっきの事から見て、たぶんあいつの属性は……

「ガルテンペスト!」

ヴォルフガングが、手首を捻るようにして、腕を突き出した。ビュゴオオオオオ!渦を巻く突風が、こちらに迫ってくる!

「迎え撃つ!ジラソーレ!」

ゴウッ!燃え上がる火の玉が、ボクの手のひらから発射された。が、火の玉は突風にぶつかると、あっけなく弾け飛んでしまった。

(危ない!)

「いいや、狙い通りさ!」

(え?)

ボクは空間を蹴ると、ぴょーんと空に飛びあがった。突風はボクの下すれすれを通り過ぎていく。髪が引っ張られて、バタバタと舞う。この長い髪の毛ってのには、どうにも慣れないな。

「テメエ……妙な技を使うじゃねえか」

ヴォルフガングがうつろな眼窩で、ボクを見上げている。

「ただのいきったガキってわけじゃねえな。何をした?」

「見てのとーりだと思うけど?」

「ふざけるな。オレ様の攻撃は、確実にテメエを捕えてた。今頃、そのムカつく口と胴体とは、別々になってたはずなんだよ」

ふーん。ま、そうだろうね。直撃していたら、きっと今のボクは、一発でアウトだろう。この体、防御はすごく苦手だ。

「オレ様の攻撃は、完璧だった。なら、テメエがなにかしたんだろう」

ヴォルフガングは自分の手を見つめて、指を握ったり開いたりしている。わざわざ説明してあげる義理もないけど、まあいいか。大したネタじゃないし。

「ジラソーレをぶつけて、相殺したんだよ」

「相殺だと?そんなことができるものか。適当言ってんじゃねえぞ」

さてね。ボクは黙って肩をすくめてみせた。と、耳元でライラの声がする。

(属性作用……風の魔力ヘカは、火の魔力ヘカを強くするから。ジラソーレを相手の魔法で強化して、軌道をずらしたんだ……)

「お、さすがライラ。お見通しだね」

(お見通しなんかじゃないよ!それは理論上の話しで、現実には正確なマナコントロールと、空間演算が必要になるはずだよ!?)

「そうなの?よく分かんないけど、今のボクは、色々よく“見えている”んだ」

そう、今なら見える。うっすらと色づく、魔力のラインが。ひときわ強いのがヴォルフガングに集まっているけど、なにも奴にしか魔力がないわけじゃない。そう、ボクらの味方の中にだって……

「レイライトニング!」

バリバリバリ!ボクの背後から、電撃の槍が飛び出して、ヴォルフガングに真っすぐ飛んで行った。ヴォルフガングは無造作に片腕を上げて、槍を防いだ。電撃がまたたく。ズガガーン!

「……チッ。痛ってぇな。だが、この電撃は知ってるぞ。一の国の勇者だろ」

「その通りだ!」

兵士たちの中から、金髪碧眼の男が飛び出してくる。

「僕の名は、クラーク!お前を倒す者の名だ、悪の魔族!」

クラークは白く輝く剣を突き立てて、声高に叫んだ。あーあー、決まっちゃって。千両役者のおでましってわけかい?ヴォルフガングも若干呆れているみたいだ。この時だけは、あの魔人とも気が合う気がする。

「聞いてもないのに名乗るたぁ、ずいぶん出しゃばりな勇者が来たもんだ」

「何を!それに、女の子一人に戦わせるだなんて、勇者ができるはずがないだろう!」

「だーかーらー、ボクは男だってば!」

「え?」

まったくもう、事態がややこしくなっちゃったよ。クラークは困惑した目でこっちを見ているけれど、今説明している暇はないな。ボクはクラークの側へ駆け寄り、その首に腕を回すと、ぐいっとこっちに引っ張る。

「わっ、ちょ、君!」

「いいから!耳貸しなって」

何を勘違いしたのか、クラークのやつは顔を赤くしている。まったくもう、どうしようもないやつだな。

「いい?あの骨男、見た目通りかなりヤバイやつだよ。なめてかかっちゃダメ」

「わ、わかってるさ。僕のレイライトニングを片手ではじくような奴だからね」

「なんだ、わかってるじゃん。それなら話は早いよ。君はガンガン攻撃して、奴の気を引いてくれないかな。その隙にボクが忍び寄って、あいつの弱点を探してみる」

「でも、それだと君が危険だ!」

「だいじょーぶ、上手くやるから。それより、そっちこそ上手くやってよ。うまいことチャンスが作れたら……」

「そしたら、あなたがガツン!と決めてくれるってことね」

え?わっ!び、びっくりした。いつの間にか、尊がすぐ隣にいた。ぜんぜん気が付かなかった……

「み、尊さん!?危ないですよ、こんなところで何を……」

「なにって、蔵……じゃなかった、クラーク君。私だって、勇者なんだよ?みんなばかりを戦わせられないよ」

「それは、そうかもしれませんが……」

「ほら、早く!敵さんだって、いつまでも待ってはくれないよ」

ボクとクラークは見つめ合うと、ため息をついた。しょうがない、尊が戦っちゃいけない理由はないからね。

「でもまあ、勇者のお二人が加勢に加わってくれるなら、ボクとしても心強いけどね……!」

三人寄ればなんとやら。さあ、反撃のお時間です!

「ピーコックウェイブ!」

クラークが口火を切った。剣を大きくスイングすると、その剣先から、扇状の電撃が噴き出す。シャアアー!だけどヴォルフガングは、避けようとすらしなかった。よほど自信があるのか、腕一本だけを前に伸ばしている。まさか、あれで止める気?

「クレイローチ!」

尊の呪文!地面から土の触手が飛び出して、伸ばしたヴォルフガングの腕に噛みついた。

「これでもう、防げないでしょ!」

「ナイスです、尊さん!」

電撃がヴォルフガングに迫る。だけど……ボクは宙を蹴って、空へと駆け上った。

「しゃらくせえ!」

するとヴォルフガングは、自由な方の片腕を、地面へと向けた。

「ブラストビート!」

バアアァァァー!風が、奴の足下で爆発した。突風が吹き荒れ、電撃も土も吹き飛ばす。尊とクラークも風で倒れてしまったが、爆心地にいるヴォルフガング自身も、相当の風を喰らっているはずだ。

「むちゃくちゃするなぁ」

(でも、チャンスだよ!あいつ、こっちに気付いてない!)

「そーだね。任せてばかりもいられないし!」

二人のおかげで、ボクは敵の頭上を取ることができた。よし、行くぞ!あっという間に呪文は完成した。

「ジラソーレ!」

ボンッ!火の玉が、ボクの頭上に燃え上がる。

「かける、十!」

(えっ)

ボボボボン!ジラソーレが、さらに追加で九個出現した。赤々と燃える火の玉は、太陽のミニチュアみたいだ。

「いっけー!」

十個の火の玉が、流星群のように降り注ぐ!ガンッ、ガガンッ、ガンッ!

(すごい!これなら……)

「っ!まだだ!」

魔力のラインが、はっきりと見えた。ボクが慌てて飛び退ると、さっきまでいた場所を、鋭いつむじ風が吹き抜けた。逃げ遅れた髪の毛が数本、プツリと切れて宙を舞う。まるではさみで断ち切ったように鋭い。

「恐ろしいな……もろに喰らってたら、真っ二つになってたね」

もうもうと立ち込める煙が、徐々に晴れていく。さあ、次はどんな手で来るか……

「あれ?」

(桜下、どうしたの?)

「おかしい。さっきまであんなに集中してた魔力が、嘘みたいに消えた……」

やがて煙が完全に晴れると、ボクの違和感が間違っていないことが判明した。ヴォルフガングの姿は、どこにもなかったんだ。

(倒した……わけじゃ、なさそうだよね)

「うん。きっと、逃げたんだ」

(なんだ、あっけなかったね!ライラたちの勝ちだよ!)

ライラは無邪気に喜んでいるけど、ボクはそこまで浮かれる気持ちにはなれなかった。

「厄介な相手だった。できれば、ここで仕留めておきたかったな……」



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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