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17章 再開の約束
11-1 捕虜の尋問
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11-1 捕虜の尋問
冷たい絹のような感触が、俺の顔をしきりに撫でている。なかなか心地いいが、ちょっとこそばゆいな。あ、あ、そこを触られると……
「……ぶえっくしょーい!」
「きゃあ!」
ん?俺は目を開けた。ウィルが腰を抜かして、こっちを見ている。
「なんだ、ウィル?幽霊でも見た顔して」
「それはこっちのセリフです!ああもう、ほんとに……」
ウィルは半分怒り、半分安堵といった表情で、俺の胸を軽く殴った。
「色々言ってやりたい気もしますが、無事だったのでチャラにしてあげます。みなさんを呼んできますね」
ウィルは目元をこすると、立ち上がってどこかに行ってしまった。ここは……連合軍の、キャンプ地か?それにウィル、泣いてたよな……体を起こして初めて、俺は毛布の上に寝かされていたことに気が付いた。ふーむ、だんだん状況が読めてきたな。俺は、ウィルに看病されていたのか。
「あれ?確か……」
額を押さえる。直前の記憶があいまいだ。なにがあったんだっけ?意識が途切れる前のことを思い出そうとしていると、テントのたれ布が勢いよくまくられ、仲間たちがどやどやと飛び込んで来た。
「桜下、だいじょーぶ?」
「ダーリン!生きてるの!?」
うわっ!ライラに頬を挟まれたかと思うと、ロウランにまぶたをこじ開けられた。二人とも吐息が掛かるくらい顔を近づけ、ジロジロのぞき込んでくる。
「ええい、ふぁなせ!」
二人を押しのけると、俺はテントの隅へと逃げた。このままほっとくと、顔の皮を剥がされかねないぞ。
「ったく、そこまで大げさにならなくてもいいだろ?ちょっとの間、昼寝してただけじゃないか」
俺が不満げに言うと、ロウランとライラは顔を見合わせた。
「昼寝って言うか……」
「もう、夜なの」
へ?夜?慌ててテントから首を出すと、頭上には茜色に染まる空が広がっていた。遠くの山並みに掛かる太陽は、今にも沈んでしまいそうだ。
「嘘だろ……さっきまで、昼間だったよな?」
俺は首を引っ込めると、みんなを茫然と見た。上から吊るされたランタンと、テントの薄暗さのせいで、時刻に全く気付かなかったんだ。
「ダーリン、なんにも覚えてないの?」
「いや……確か、フランと一緒にいたよな?それで、最後には慌てて逃げ出して」
フランはこくりとうなずいた。ウィルはほっと溜息をつく。
「よかった、記憶は確かみたいですね。ええ、その通りです。桜下さんはその後から今まで、気を失っていたんですよ。無事に目覚めたからよかったですけど、お二人が天井の穴から落っこちて来た時は、生きた心地がしませんでしたよ……」
はは、そりゃあ確かに、幽霊だしな……でも、ウィルはジョークではなく、本気でそう感じたようだ。さっきもふいに涙をこぼしていたし、申し訳ないな。
「そうだったのか。あ、そうだ、あれからどうなった?それにみんなは、俺たちの事も聞いてるのか?」
ウィルは首を横に振る。
「フランさんにざっくりとは聞いていますが、詳しくは桜下さんが起きてからにしようって。その方が二度手間じゃないですし。桜下さんさえよければ、その時のことをお聞きしても?」
「ああ、頼むよ」
「分かりました。さっきエドガーさんが、お水と食事を届けてくれましたよ。お腹空いたでしょうし、食べながら話しましょうか」
ウィルは革袋に入った水と、丸いパンを取り出した。おお、ありがたい。夜まで寝ていたせいで腹ペコだ。どうやら、エドガーにも心配されてしまったみたいだな。俺はみんなと輪になって座ると、パンを噛みながら、何があったのか話し始めた。
「あなた、どこまで覚えてる?」
フランが改めて、俺に訊ねた。
「確か……あの部屋から、逃げ出したんだよな?それで、機械が爆発して……そっから先が、覚えてねーや」
フランはうなずく。
「あの爆発で、わたしたちは吹き飛ばされた。狭い管のせいで、爆風の逃げ場がなかったんだ」
「だよなぁ……今考えると、我ながらよく無傷だったもんだ。フランが守ってくれたんだろ?ありがとな、フラン」
感謝を伝えると、フランはもごもごなにか呟いて、ふいっと目を逸らした。照れ隠しが不器用なのは相変わらずだな。
「あ、でもそれなら、戦いはどうなったんだ?フレッシュゴーレムたちは……」
「大丈夫、全部片付いたよ」
おお、よかった。俺はほっと息をつく。
俺たちが魔力の供給源を絶ったことで、フレッシュゴーレムは活動を停止したらしい。城門で戦った、浮遊砲台と同じだ。統括する大本を叩けば、残ったやつらは自力じゃ動けない。
「だけど、こっちもかなり消耗した。じき日も暮れるし、これ以上の進軍は命取りだって考えたみたい。一度下がって、立て直すことにしたんだよ」
「なるほど、それでキャンプ地に戻ってきたってわけか」
すると、ロウランがにこにこしながら言う。
「ダーリン、すっごい話題なんだよ!あの戦いを乗り切れたのは、ダーリンが単身敵に斬り込んでいったからだって、みんな言ってるの」
「はあ?いや、だいたい単身じゃないし……フランと一緒だったんだから」
「その辺はほら、ゴソーゾーにお任せしますってやつなの」
ロウランは自分のことのように喜んでくれている。俺だって、仲間が褒められればうれしい。ちょっと複雑だが、まぁ、水は差さないでおくか。
「ところで、ダーリンたちが叩いたのは、あのゴーレムたちの親玉だったってこと?そいつをやっつけたから、みんな止まったのかな」
「ああ、ううんと……実は、そんなんじゃなかったって言うか……」
俺の顔が暗くなると、ロウランは不思議そうに首をかしげた。正直話すことすら気が引けるが、あれを黙っておくことはできない。
「みんなにも、話しておいていいか。俺とフランが、何を見たのか。あんまり、気持ちのいい話じゃないんだけどな……」
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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冷たい絹のような感触が、俺の顔をしきりに撫でている。なかなか心地いいが、ちょっとこそばゆいな。あ、あ、そこを触られると……
「……ぶえっくしょーい!」
「きゃあ!」
ん?俺は目を開けた。ウィルが腰を抜かして、こっちを見ている。
「なんだ、ウィル?幽霊でも見た顔して」
「それはこっちのセリフです!ああもう、ほんとに……」
ウィルは半分怒り、半分安堵といった表情で、俺の胸を軽く殴った。
「色々言ってやりたい気もしますが、無事だったのでチャラにしてあげます。みなさんを呼んできますね」
ウィルは目元をこすると、立ち上がってどこかに行ってしまった。ここは……連合軍の、キャンプ地か?それにウィル、泣いてたよな……体を起こして初めて、俺は毛布の上に寝かされていたことに気が付いた。ふーむ、だんだん状況が読めてきたな。俺は、ウィルに看病されていたのか。
「あれ?確か……」
額を押さえる。直前の記憶があいまいだ。なにがあったんだっけ?意識が途切れる前のことを思い出そうとしていると、テントのたれ布が勢いよくまくられ、仲間たちがどやどやと飛び込んで来た。
「桜下、だいじょーぶ?」
「ダーリン!生きてるの!?」
うわっ!ライラに頬を挟まれたかと思うと、ロウランにまぶたをこじ開けられた。二人とも吐息が掛かるくらい顔を近づけ、ジロジロのぞき込んでくる。
「ええい、ふぁなせ!」
二人を押しのけると、俺はテントの隅へと逃げた。このままほっとくと、顔の皮を剥がされかねないぞ。
「ったく、そこまで大げさにならなくてもいいだろ?ちょっとの間、昼寝してただけじゃないか」
俺が不満げに言うと、ロウランとライラは顔を見合わせた。
「昼寝って言うか……」
「もう、夜なの」
へ?夜?慌ててテントから首を出すと、頭上には茜色に染まる空が広がっていた。遠くの山並みに掛かる太陽は、今にも沈んでしまいそうだ。
「嘘だろ……さっきまで、昼間だったよな?」
俺は首を引っ込めると、みんなを茫然と見た。上から吊るされたランタンと、テントの薄暗さのせいで、時刻に全く気付かなかったんだ。
「ダーリン、なんにも覚えてないの?」
「いや……確か、フランと一緒にいたよな?それで、最後には慌てて逃げ出して」
フランはこくりとうなずいた。ウィルはほっと溜息をつく。
「よかった、記憶は確かみたいですね。ええ、その通りです。桜下さんはその後から今まで、気を失っていたんですよ。無事に目覚めたからよかったですけど、お二人が天井の穴から落っこちて来た時は、生きた心地がしませんでしたよ……」
はは、そりゃあ確かに、幽霊だしな……でも、ウィルはジョークではなく、本気でそう感じたようだ。さっきもふいに涙をこぼしていたし、申し訳ないな。
「そうだったのか。あ、そうだ、あれからどうなった?それにみんなは、俺たちの事も聞いてるのか?」
ウィルは首を横に振る。
「フランさんにざっくりとは聞いていますが、詳しくは桜下さんが起きてからにしようって。その方が二度手間じゃないですし。桜下さんさえよければ、その時のことをお聞きしても?」
「ああ、頼むよ」
「分かりました。さっきエドガーさんが、お水と食事を届けてくれましたよ。お腹空いたでしょうし、食べながら話しましょうか」
ウィルは革袋に入った水と、丸いパンを取り出した。おお、ありがたい。夜まで寝ていたせいで腹ペコだ。どうやら、エドガーにも心配されてしまったみたいだな。俺はみんなと輪になって座ると、パンを噛みながら、何があったのか話し始めた。
「あなた、どこまで覚えてる?」
フランが改めて、俺に訊ねた。
「確か……あの部屋から、逃げ出したんだよな?それで、機械が爆発して……そっから先が、覚えてねーや」
フランはうなずく。
「あの爆発で、わたしたちは吹き飛ばされた。狭い管のせいで、爆風の逃げ場がなかったんだ」
「だよなぁ……今考えると、我ながらよく無傷だったもんだ。フランが守ってくれたんだろ?ありがとな、フラン」
感謝を伝えると、フランはもごもごなにか呟いて、ふいっと目を逸らした。照れ隠しが不器用なのは相変わらずだな。
「あ、でもそれなら、戦いはどうなったんだ?フレッシュゴーレムたちは……」
「大丈夫、全部片付いたよ」
おお、よかった。俺はほっと息をつく。
俺たちが魔力の供給源を絶ったことで、フレッシュゴーレムは活動を停止したらしい。城門で戦った、浮遊砲台と同じだ。統括する大本を叩けば、残ったやつらは自力じゃ動けない。
「だけど、こっちもかなり消耗した。じき日も暮れるし、これ以上の進軍は命取りだって考えたみたい。一度下がって、立て直すことにしたんだよ」
「なるほど、それでキャンプ地に戻ってきたってわけか」
すると、ロウランがにこにこしながら言う。
「ダーリン、すっごい話題なんだよ!あの戦いを乗り切れたのは、ダーリンが単身敵に斬り込んでいったからだって、みんな言ってるの」
「はあ?いや、だいたい単身じゃないし……フランと一緒だったんだから」
「その辺はほら、ゴソーゾーにお任せしますってやつなの」
ロウランは自分のことのように喜んでくれている。俺だって、仲間が褒められればうれしい。ちょっと複雑だが、まぁ、水は差さないでおくか。
「ところで、ダーリンたちが叩いたのは、あのゴーレムたちの親玉だったってこと?そいつをやっつけたから、みんな止まったのかな」
「ああ、ううんと……実は、そんなんじゃなかったって言うか……」
俺の顔が暗くなると、ロウランは不思議そうに首をかしげた。正直話すことすら気が引けるが、あれを黙っておくことはできない。
「みんなにも、話しておいていいか。俺とフランが、何を見たのか。あんまり、気持ちのいい話じゃないんだけどな……」
つづく
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