じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

文字の大きさ
757 / 860
17章 再開の約束

11-1 捕虜の尋問

しおりを挟む
11-1 捕虜の尋問

冷たい絹のような感触が、俺の顔をしきりに撫でている。なかなか心地いいが、ちょっとこそばゆいな。あ、あ、そこを触られると……

「……ぶえっくしょーい!」

「きゃあ!」

ん?俺は目を開けた。ウィルが腰を抜かして、こっちを見ている。

「なんだ、ウィル?幽霊でも見た顔して」

「それはこっちのセリフです!ああもう、ほんとに……」

ウィルは半分怒り、半分安堵といった表情で、俺の胸を軽く殴った。

「色々言ってやりたい気もしますが、無事だったのでチャラにしてあげます。みなさんを呼んできますね」

ウィルは目元をこすると、立ち上がってどこかに行ってしまった。ここは……連合軍の、キャンプ地か?それにウィル、泣いてたよな……体を起こして初めて、俺は毛布の上に寝かされていたことに気が付いた。ふーむ、だんだん状況が読めてきたな。俺は、ウィルに看病されていたのか。

「あれ?確か……」

額を押さえる。直前の記憶があいまいだ。なにがあったんだっけ?意識が途切れる前のことを思い出そうとしていると、テントのたれ布が勢いよくまくられ、仲間たちがどやどやと飛び込んで来た。

「桜下、だいじょーぶ?」

「ダーリン!生きてるの!?」

うわっ!ライラに頬を挟まれたかと思うと、ロウランにまぶたをこじ開けられた。二人とも吐息が掛かるくらい顔を近づけ、ジロジロのぞき込んでくる。

「ええい、ふぁなせ!」

二人を押しのけると、俺はテントの隅へと逃げた。このままほっとくと、顔の皮を剥がされかねないぞ。

「ったく、そこまで大げさにならなくてもいいだろ?ちょっとの間、昼寝してただけじゃないか」

俺が不満げに言うと、ロウランとライラは顔を見合わせた。

「昼寝って言うか……」

「もう、夜なの」

へ?夜?慌ててテントから首を出すと、頭上には茜色に染まる空が広がっていた。遠くの山並みに掛かる太陽は、今にも沈んでしまいそうだ。

「嘘だろ……さっきまで、昼間だったよな?」

俺は首を引っ込めると、みんなを茫然と見た。上から吊るされたランタンと、テントの薄暗さのせいで、時刻に全く気付かなかったんだ。

「ダーリン、なんにも覚えてないの?」

「いや……確か、フランと一緒にいたよな?それで、最後には慌てて逃げ出して」

フランはこくりとうなずいた。ウィルはほっと溜息をつく。

「よかった、記憶は確かみたいですね。ええ、その通りです。桜下さんはその後から今まで、気を失っていたんですよ。無事に目覚めたからよかったですけど、お二人が天井の穴から落っこちて来た時は、生きた心地がしませんでしたよ……」

はは、そりゃあ確かに、幽霊だしな……でも、ウィルはジョークではなく、本気でそう感じたようだ。さっきもふいに涙をこぼしていたし、申し訳ないな。

「そうだったのか。あ、そうだ、あれからどうなった?それにみんなは、俺たちの事も聞いてるのか?」

ウィルは首を横に振る。

「フランさんにざっくりとは聞いていますが、詳しくは桜下さんが起きてからにしようって。その方が二度手間じゃないですし。桜下さんさえよければ、その時のことをお聞きしても?」

「ああ、頼むよ」

「分かりました。さっきエドガーさんが、お水と食事を届けてくれましたよ。お腹空いたでしょうし、食べながら話しましょうか」

ウィルは革袋に入った水と、丸いパンを取り出した。おお、ありがたい。夜まで寝ていたせいで腹ペコだ。どうやら、エドガーにも心配されてしまったみたいだな。俺はみんなと輪になって座ると、パンを噛みながら、何があったのか話し始めた。

「あなた、どこまで覚えてる?」

フランが改めて、俺に訊ねた。

「確か……あの部屋から、逃げ出したんだよな?それで、機械が爆発して……そっから先が、覚えてねーや」

フランはうなずく。

「あの爆発で、わたしたちは吹き飛ばされた。狭い管のせいで、爆風の逃げ場がなかったんだ」

「だよなぁ……今考えると、我ながらよく無傷だったもんだ。フランが守ってくれたんだろ?ありがとな、フラン」

感謝を伝えると、フランはもごもごなにか呟いて、ふいっと目を逸らした。照れ隠しが不器用なのは相変わらずだな。

「あ、でもそれなら、戦いはどうなったんだ?フレッシュゴーレムたちは……」

「大丈夫、全部片付いたよ」

おお、よかった。俺はほっと息をつく。
俺たちが魔力の供給源を絶ったことで、フレッシュゴーレムは活動を停止したらしい。城門で戦った、浮遊砲台と同じだ。統括する大本を叩けば、残ったやつらは自力じゃ動けない。

「だけど、こっちもかなり消耗した。じき日も暮れるし、これ以上の進軍は命取りだって考えたみたい。一度下がって、立て直すことにしたんだよ」

「なるほど、それでキャンプ地に戻ってきたってわけか」

すると、ロウランがにこにこしながら言う。

「ダーリン、すっごい話題なんだよ!あの戦いを乗り切れたのは、ダーリンが単身敵に斬り込んでいったからだって、みんな言ってるの」

「はあ?いや、だいたい単身じゃないし……フランと一緒だったんだから」

「その辺はほら、ゴソーゾーにお任せしますってやつなの」

ロウランは自分のことのように喜んでくれている。俺だって、仲間が褒められればうれしい。ちょっと複雑だが、まぁ、水は差さないでおくか。

「ところで、ダーリンたちが叩いたのは、あのゴーレムたちの親玉だったってこと?そいつをやっつけたから、みんな止まったのかな」

「ああ、ううんと……実は、そんなんじゃなかったって言うか……」

俺の顔が暗くなると、ロウランは不思議そうに首をかしげた。正直話すことすら気が引けるが、あれを黙っておくことはできない。

「みんなにも、話しておいていいか。俺とフランが、何を見たのか。あんまり、気持ちのいい話じゃないんだけどな……」



つづく
====================

読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

====================

Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。

↓ ↓ ↓

https://twitter.com/ragoradonma
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

処理中です...