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17章 再開の約束
18-2
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「すみません……少し、よろしいでしょうか」
うん?ぞんがい丁寧な声だな。怒られるわけじゃなさそうだぞ。
振り向いた先に立っていたのは、硬い顔をした傭兵の少女、アルアだった。
「なんだ、アルアか……てっきり兵士に見つかったかと思ったよ」
「……見つかったら困るようなことをしていたのですか」
アルアの目が、途端に冷めたものになる。はっ、し、しまった。隣のフランが肘で小突いてくる。ぐぅ、余計なことを言った……
「ええっと、アルア。これはだな……」
「まあ、それはいいんです」
「え?いいのか」
見逃してくれるようだぞ。ずいぶん恩情な、と思ったが、どうやらそうでもないらしい。アルアはひどく思いつめたような顔で、早口に問いかけてきた。
「その……すみません。皆さんが話していたことが聞こえてしまったんです。それで……」
なに?それはつまり、俺たちとレーヴェの会話をってことか。で、その内容と言えば……
「あー……なるほど、分かった。ただ、ここじゃなんだ。場所を変えよう」
「……はい」
ぎこちなくうなずくアルア。先に歩き出そうとしたところで、俺ははたと振り返った。
「アルア。いちおう、これだけは訊いておくけど。つまり、あんたが知りたいのは……」
「ええ……祖母の、夫の名が聞こえました。どういうことか、詳しく教えてくれませんでしょうか」
ひとまず、連合軍の糧秣が積んである荷車のわきへとやって来た。ここは牛と馬ばかりで人気が少ないから、盗み聞きされることもないはずだ。
「さてと……しかし、アルア。いつから話を聞いてたんだ?全然気づかなかったぞ」
「いえ、実は話の内容は、ほとんど聞こえていません」
「え?」
「皆さんの唇の動きを読んでいたんです。ただ正直、確証は持てていませんでした」
「ん?つまり……カマを掛けてたのか!」
「そうなりますね。ごめんなさい」
アルアがしれっとそんなことを言ってきた。こ、こいつ……アルルカが呆れた顔でため息をつく。
「ったく、あんたもまだまだねぇ……だとしても、あんた。小娘のほうよ」
小娘呼ばわりされたアルアは、ムッと顔をしかめる。だが食って掛かって、せっかくの機会をふいにするようなことはしなかった。
「なんでしょう」
「あんた、なんであたしたちの動きを監視してたのよ。それほどまで興味を引くことかしら?」
「……捕虜と親し気に話すことは、かなり注目を集めると思いますが」
「あたしだって馬鹿じゃないわ。もしそれだけの目が向いてたとしたら、先に気付いたはずよ。なにが言いたいかって言うとね、あんた、気配消してたでしょ」
なに?アルアの眉が、わずかにぴくりと動く。
「あんたも傭兵でしょ、気配の殺し方ぐらい知ってるはずだわ」
「おい、アルルカ。さっきから何が言いたいんだよ?」
「つまりこいつ、最初からあたしたちに目を付けてたのよ。あたしたちがファーストの話をしたから注目したんじゃないってこと」
「うん?それじゃあ、前後がぐちゃぐちゃになるじゃないか。アルア、お前もなんか言えよ。全然否定してもらっても……」
「いえ……その方の言うことは、間違っていません」
「なに?」
「初めから、あなたたちに目を付けていました。噂の真偽を、確かめたかったのです」
「うわさ、だって?」
どういう意味だ?一体何の噂があって、俺たちに結びつくって言うんだ。
「実は……魔王の正体が、勇者であるという噂が流れています」
「は、はあ!?」
馬鹿な!それは、俺たちとヘイズたち、ごく一部の人間しか知らないはず!嘘だろ、あれだけ他言無用だって言われてたのに、もう漏れてるのか!?
「いったい、誰から……?」
「はっきりとした出所はわかりません。私も、風の噂を耳にしただけですから。ですが、どうしても気になってしまって……その勇者とは、かつての大戦で戦死した三人、セカンドとサード……そして、ファーストのうちの誰かだというのですから」
そ、そこまで伝わっているのか……信じられないな。一体どこのバカが言いふらした?まさか、尊が何も考えずに誰かに話したんじゃ……さすがにそれはないと思うけど。
「あの、本当なんですか?本当に、魔王の正体が勇者なんですか!?」
「いや、それは、その……」
ど、どうしよう。これは秘密ってことになっているんだが……
「ちょっと、どうするの」
フランがひそひそと耳打ちしてくる。
「……どうしよう?」
「わたしに訊かないでよ。あなたが主でしょ」
く、あくまで俺次第ってわけか。うーん……
「はぁ……わかった。決めたよ」
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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「すみません……少し、よろしいでしょうか」
うん?ぞんがい丁寧な声だな。怒られるわけじゃなさそうだぞ。
振り向いた先に立っていたのは、硬い顔をした傭兵の少女、アルアだった。
「なんだ、アルアか……てっきり兵士に見つかったかと思ったよ」
「……見つかったら困るようなことをしていたのですか」
アルアの目が、途端に冷めたものになる。はっ、し、しまった。隣のフランが肘で小突いてくる。ぐぅ、余計なことを言った……
「ええっと、アルア。これはだな……」
「まあ、それはいいんです」
「え?いいのか」
見逃してくれるようだぞ。ずいぶん恩情な、と思ったが、どうやらそうでもないらしい。アルアはひどく思いつめたような顔で、早口に問いかけてきた。
「その……すみません。皆さんが話していたことが聞こえてしまったんです。それで……」
なに?それはつまり、俺たちとレーヴェの会話をってことか。で、その内容と言えば……
「あー……なるほど、分かった。ただ、ここじゃなんだ。場所を変えよう」
「……はい」
ぎこちなくうなずくアルア。先に歩き出そうとしたところで、俺ははたと振り返った。
「アルア。いちおう、これだけは訊いておくけど。つまり、あんたが知りたいのは……」
「ええ……祖母の、夫の名が聞こえました。どういうことか、詳しく教えてくれませんでしょうか」
ひとまず、連合軍の糧秣が積んである荷車のわきへとやって来た。ここは牛と馬ばかりで人気が少ないから、盗み聞きされることもないはずだ。
「さてと……しかし、アルア。いつから話を聞いてたんだ?全然気づかなかったぞ」
「いえ、実は話の内容は、ほとんど聞こえていません」
「え?」
「皆さんの唇の動きを読んでいたんです。ただ正直、確証は持てていませんでした」
「ん?つまり……カマを掛けてたのか!」
「そうなりますね。ごめんなさい」
アルアがしれっとそんなことを言ってきた。こ、こいつ……アルルカが呆れた顔でため息をつく。
「ったく、あんたもまだまだねぇ……だとしても、あんた。小娘のほうよ」
小娘呼ばわりされたアルアは、ムッと顔をしかめる。だが食って掛かって、せっかくの機会をふいにするようなことはしなかった。
「なんでしょう」
「あんた、なんであたしたちの動きを監視してたのよ。それほどまで興味を引くことかしら?」
「……捕虜と親し気に話すことは、かなり注目を集めると思いますが」
「あたしだって馬鹿じゃないわ。もしそれだけの目が向いてたとしたら、先に気付いたはずよ。なにが言いたいかって言うとね、あんた、気配消してたでしょ」
なに?アルアの眉が、わずかにぴくりと動く。
「あんたも傭兵でしょ、気配の殺し方ぐらい知ってるはずだわ」
「おい、アルルカ。さっきから何が言いたいんだよ?」
「つまりこいつ、最初からあたしたちに目を付けてたのよ。あたしたちがファーストの話をしたから注目したんじゃないってこと」
「うん?それじゃあ、前後がぐちゃぐちゃになるじゃないか。アルア、お前もなんか言えよ。全然否定してもらっても……」
「いえ……その方の言うことは、間違っていません」
「なに?」
「初めから、あなたたちに目を付けていました。噂の真偽を、確かめたかったのです」
「うわさ、だって?」
どういう意味だ?一体何の噂があって、俺たちに結びつくって言うんだ。
「実は……魔王の正体が、勇者であるという噂が流れています」
「は、はあ!?」
馬鹿な!それは、俺たちとヘイズたち、ごく一部の人間しか知らないはず!嘘だろ、あれだけ他言無用だって言われてたのに、もう漏れてるのか!?
「いったい、誰から……?」
「はっきりとした出所はわかりません。私も、風の噂を耳にしただけですから。ですが、どうしても気になってしまって……その勇者とは、かつての大戦で戦死した三人、セカンドとサード……そして、ファーストのうちの誰かだというのですから」
そ、そこまで伝わっているのか……信じられないな。一体どこのバカが言いふらした?まさか、尊が何も考えずに誰かに話したんじゃ……さすがにそれはないと思うけど。
「あの、本当なんですか?本当に、魔王の正体が勇者なんですか!?」
「いや、それは、その……」
ど、どうしよう。これは秘密ってことになっているんだが……
「ちょっと、どうするの」
フランがひそひそと耳打ちしてくる。
「……どうしよう?」
「わたしに訊かないでよ。あなたが主でしょ」
く、あくまで俺次第ってわけか。うーん……
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