じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

文字の大きさ
801 / 860
17章 再開の約束

21―4

しおりを挟む
21―4

「なっ、ま、魔王だって!?」

「そ、そんな馬鹿な!ありえない!」

現場は大混乱となった。そりゃそうだ、いきなり大ボスが急襲してきただって?常識はずれにもほどがある!

「とっ、とにかくそちらへ向かおう!おい、桜下!」

ヘイズが泡を食いながら、俺に手ぶりで行けと言ってくる。しゃあない、場合が場合だ。

「みんな、急ぐぞ!クラーク、お前も来いよな!」

「ああ、分かってるよ!こんな時こそ、勇者の出番だ!」

俺たちとクラークは、兵士に先導されて、隊の後方へと急行する。

「で、でも、なんでいきなり魔王……?」

ウィルがすぐ隣を滑るように飛びながら、困惑した声で言う。

「くそ!いっそ本人に訊いてみたいくらいだ!」

「もう後がないと悟って、向こうから打って出てきたのでしょうか?」

「それぐらい潔いタマか?魔王ってのは」

確かに俺たちの進軍は順調だが、それでもそこまでやけっぱちになるほど、追い詰められてはいないはず。魔王自ら参戦するにしては、時期尚早すぎるだろ。

「いったい、何考えてやがるんだ?」

本気で問いただしてやろうかと考えていると、前方から大きな叫び声と、爆発音が聞こえてきた。

「くそ!攻撃されてる!」

「急げ!」

俺たちは馬になったように疾走した。やがて、逃げまどう兵士たちと、その頭上に浮かぶ、マント姿の人影が見えてきた。

「止まれ!あれが、まさか……」

マントの人物(まだ正確には、人か分からないが)は、空中に立つように静止している。頭にはフードを被り、顔は見えない。魔王の正体は、勇者だと聞いているが……あれが、本当に……?

「うわ。あれが、魔王?」

え?この場に似つかわしくない、ずいぶんと気の抜けた声が、後ろから聞こえてきた。俺とクラークが同時に振り返ると、そこには例の鏡を腕に抱えた尊がいた。

「み、尊!」

「尊さん!?危ないですよ、どうして来たんですか!」

「だって、私だって勇者だよ!それに、この鏡は魔法の鏡なんでしょ?何かの役に立つかと思って……」

だが突然、尊はあっと叫ぶと、前につんのめった。うわ、危ない!鏡を落としたら一大事だぞ!幸い踏みとどまってくれたので、最悪の事態は避けられたが……

「尊、気を付けろよ!寿命が縮むぜ」

「ち、違うの!何かに引っ張られたみたいで……」

「引っ張られた?」

するとまた、尊が前にくんっとつんのめる。二度目となると、さすがに俺も気が付いた。今の、尊がつまづいたんじゃない。鏡だ。鏡が、尊を引っ張っている……?

「おい、あれを!」

アドリアが鋭く叫んだ。俺たちは一斉にその先を目で追う。そこには、片手を突き出し、手招きをしているマント野郎の姿があった。

「まさか……あいつが鏡を引っ張ってるのか!」

「くっ!貴様、何が目的だ!」

クラークが叫ぶと同時に、魔法剣を抜いた。それに対して、マント野郎は、努めて冷静に返してくる。

「我は魔王なり。その鏡は貴様らには不要な代物だ。故に取り返しに来た」

げっ!ほんとに魔王なのか?しかも、鏡を取り返しに来ただって?

「それを渡せ。さあ」

マント姿の魔王が手招きすると、また鏡が引っ張られた。それを抱えている尊も、前に数歩引っ張り出される。

「うわわっ」

「尊、大丈夫か!?頼む、そいつを放さないでくれよ!」

「う、うん!分かってる!」

魔王が取り戻しに来たってことは、こいつはいよいよ本物だ。そんなものを、おいそれと奪われるわけにいくか!

「無駄な抵抗はするな。お前らがどれだけ足掻こうが、我はその全てを無にできる」

「うるせえ!そんなに大事なものなら、きちんと管理しとけってんだ!アルルカ!」

俺の掛け声に合わせて、アルルカが杖を銃のように構えた。

「メギバレット!」

氷の弾丸が、魔王に向かって発射される。魔王はもう片方の手も付き出すと、手の平で弾丸を受け止めた。

「無駄なことを」

魔王がさらに手招きすると、いよいよ尊が引き摺られ始めた。尊は腰を落として踏ん張っているが、それでもずりずりと、鏡と一緒に引っ張られている。ロウランとミカエルが慌てて尊の腰を抱えたが、それでも止まらない。

「クラーク!あいつを追い払わないとダメだ!」

「そのようだね!そっちで隙を作れないか?僕が叩く!」

「よし、分かった!フラン、アルルカ!」

俺が叫ぶや否や、フランが銀色の矢のように飛び出して行く。それに合わせて、アルルカが呪文を唱えた。

「バッカルコーン!」

ズガガガッ!床を砕いて、氷の柱が何本も生えてきた。宙に浮かぶ魔王は、それを難なくかわした。だが、これは攻撃だけが目的じゃない。

「やああ!」

氷の柱を踏み台に、フランが跳躍して、魔王に殴り掛かった!魔王は、フランの渾身の一撃を受け止めた。だが、両手を使ったぞ!

「今だ!やれ、クラーク!」

「コンタクト・ガルネーレ!」

バラララッ!クラークの剣から、紫電が飛び出し、魔王を直撃した。

「はああああ!」

クラークが気合を入れると、魔王が後退し始めた。そのまま雷は魔王を押し返し、ついには壁に叩きつける。ドガーン!

「いいぞ!このまま畳みかけて……」

「まって!様子がおかしい」

え?フランが走って行って、魔王が叩きつけられたあたりで立ち止まった。煙がおさまると、そこには……

「え?いない?」

魔王の姿は、どこにもいなくなっていた。いや、今は姿を消したが、機会を伺っているだけだろう。俺たちは油断なく、警戒を続けた。
……。
…………。

「……おかしい。なにも、起きないぞ」

それから五分、十分と待っても、攻撃が来ることはなかった。

「追い返した、のか?」

「こんなにあっさり?馬鹿な……」

あまりにも手ごたえがないので、クラークも釈然としていない。だけど、待てど暮らせど、魔王は姿を見せない。そしてついには、行軍が再開されることとなった。



つづく
====================

読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

====================

Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。

↓ ↓ ↓

https://twitter.com/ragoradonma
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...