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17章 再開の約束
24-4
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24-4
「……」
クラークは、自分の名前が何度も出てきたっていうのに、まったく反応を示さない。
「おい、クラーク……クラーク!」
「……」
ダメだ。俺がアドリアの方に顔を向けても、彼女も首を横に振るばかりだ。
「なんだってんだよ……こんな時に、腑抜けてる場合じゃないだろ!」
「よしてやってくれ……それだけ、彼女の死がショックだったんだろう」
くそ……なんなんだよ、ちくしょう!そんなこと、俺だって分かってる。俺だって、ショックに決まってる!けど、それで現実から目を背けたって、どうにもならないだろうが!
「……ちっ。くそ、勝手にしろ。今は、ダメになったやつに構ってる場合じゃないんだ」
俺がぼやくようにつぶやいても、クラークは全くの無表情だった。もう、誰の声も聞こえていないみたいだ……
「それより、これで全員揃ったのか?」
俺はクラークを無視して、アドリアに話しかける。アドリアは首を横に振った。
「いいや……私たちも、正確に把握できたわけではないが。おそらくだが、三の国の勇者と一緒にいた、ブラザーがまだ見つかっていない」
「あ……!デュアンか……」
そうか。彼は尊の仲間だったから、あの場にもたぶんいただろう。正直いきなり奇襲を掛けられて、それどころじゃなかったから、彼がいたかどうかすら定かじゃないが……
「でも、それなら……!」
ウィルがはっとした後、悲痛な声を漏らす。
「デュアンさんは、一人で落ちたってことですか……?」
「それは……アドリア。あんたたちとも、一緒じゃなかったんだよな?」
「ああ。だから私は、そっちと一緒だといいと思っていたんだが……」
俺は一縷の望みにかけて、フランとアルルカを見た。だがフランもまた、目を閉じ、首を横に振る。
「誰とも、一緒じゃなかったのか……」
俺は絶望的に、そうつぶやいた。アドリアが苦しそうに言う。
「……この中で、あそこからの落下に対処できるのは、ここにいる中の数人だけだろう。もしや彼に、非凡な魔術の才能があったりはしないのか?」
「……あってほしいけど、今、そんなこと言っても無意味だよな……」
俺はロウランと、クラークたちはライラと一緒だったから、なんとか死なずに済んだんだ。だが、デュアン一人だったら……
「そんな……デュアンさん……!」
ウィルが嗚咽を漏らす。彼とは色々あったが、それでも幼馴染だ。俺だって辛い。こんな別れ方って……
「デュアン……ちくしょう……!」
「……あー。水を差すようで悪いですが。もうそろそろいいですか?」
え?俺たちは一斉に顔を上げた。そこに、気まずそうな顔で立っていたのは……
「なんだか、申し訳ありませんね。あいにく死にぞこないまして」
「まじかよ……デュアン!」
デュアンが、生きてた!信じられない!俺は体の痛みも忘れて、デュアンに駆け寄った。みんなもわっと後に続く。
「デュアン、本物か!?アンデッドだったりしないよな?」
「僕にも信じられないんですよ。逆に訊きたいくらいです。僕、死んでませんよね?」
俺はデュアンの肩を何度も叩いた。それなりに強く叩いてしまったせいで、デュアンはうっと呻いている。だが、手はすり抜けないし、痛みがあるってことは、確かに生きている証拠だ。
「よかった、デュアンさん……本当によかった!」
「ははは!よかったな、ウィル!」
「えっ。ウィルさん、ひょっとして僕の心配してくれていたんですか?うぅむ、だったらいっそ、幽霊にでもなっていたら、彼女に会えていたでしょうか……そして今度こそ僕に……」
「はぁ?いい加減にしてください、このバカ!呪い殺しますよ!」
「デュアン、ウィルが殺してやるって」
「ええ!?」
なんにせよ、よかった!生存が絶望的だったからこそ、この再会は嬉しい。もっと言えば、これでクラークが正気に戻ってくれればなおよかったんだが……ちっ、ダメだ。そこまではうまくいかないみたいだ。
「でもデュアン、お前、よく無事だったな」
「いやまったく、僕にも不思議で……どうして生きているのか、さっぱりわからないんですよ」
「でも、ここに落ちてきたことは覚えてるんだろ?」
「それが、あの見えない力に押しつぶされた時、頭を強く打ってしまったようでして……気を失ってしまったんです」
え?それなら、気絶したまま落ちて無事だったってことか?ますます奇跡としか言いようがないな……
「あの、ところでなんですが。そう言うわけで、僕はあの後のことを、いまいちよく覚えていないんです。僕たちは、この真っ暗なところに落とされたんですよね?」
「ああ、うん。話すと長くなるけどな……」
「そうでしょうね。けど、みなさんご無事そうでなによりです。ところで、尊さんはどちらに?」
っ。束の間の喜びは、ロウソクの火のように一瞬で吹き飛んだ。俺たちの間に、冷たい風が吹き抜けたようだ。
「……?どうしたんですか?」
首をかしげるデュアン。そうか、気絶していたなら、尊がどうなったのか、デュアンは見ていないんだ……取り繕ってもしかたがないことは分かっているし、デュアンも当事者なんだから、知る権利はあるだろう。けど、なんて言えばいいんだ。尊は死んだ、セカンドの闇の魔法によって、ろくな抵抗もできずに殺されただなんて、とてもじゃないが……
「桜下くん?何があったんですか。尊さんは、今どこに?」
「えっと……」
俺が口ごもったことで、デュアンも何かを察したらしい。顔つきが変わった。うぅ、けどやっぱり……
「死んだよ」
っ!?声を発したのは、今まで一言もしゃべらなかった男。
(クラーク!?)
やつは、以前うつろな表情のまま、ぼうっと闇を見つめている。だが、確かに今、やつがしゃべった。
「死んだ……?勇者様、それはどういう意味ですか!?」
「言葉通りだ。尊さんは死んだ。魔王の手に掛かって、真っ黒に燃え尽きた」
「もっ、燃え尽き……?そんな、馬鹿な!」
デュアンはがっくりと膝をついてしまった。ああくそ、言わんこっちゃない!
「おい、クラーク!てめえ、どういうつもりだ!」
俺はクラークの肩を押さえる。こんな時になってもまだ、クラークは俺をまっすぐ見ようとしない。
「事実を、言ったまでだろ。死んだんだ、彼女は。あっけなく。虫けらみたいに」
「なっ、おい!ふざけんなよてめえ!」
「ふざけてなんていない。だから、これが事実だ。そっちこそ、誤魔化せば嘘になるとでも思っているのか?ガキじゃあるまいし」
こ、こいつ……!俺は怒りに我を忘れて、握り拳をぐっと引いた。だが、それを突き出すよりも早く……
パーン!
「っ……!」
「え……」
クラークがぶっ飛んだ。俺の前に割り込み、肩を激しく上下させているのは……
「み、ミカエル……?」
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
====================
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「……」
クラークは、自分の名前が何度も出てきたっていうのに、まったく反応を示さない。
「おい、クラーク……クラーク!」
「……」
ダメだ。俺がアドリアの方に顔を向けても、彼女も首を横に振るばかりだ。
「なんだってんだよ……こんな時に、腑抜けてる場合じゃないだろ!」
「よしてやってくれ……それだけ、彼女の死がショックだったんだろう」
くそ……なんなんだよ、ちくしょう!そんなこと、俺だって分かってる。俺だって、ショックに決まってる!けど、それで現実から目を背けたって、どうにもならないだろうが!
「……ちっ。くそ、勝手にしろ。今は、ダメになったやつに構ってる場合じゃないんだ」
俺がぼやくようにつぶやいても、クラークは全くの無表情だった。もう、誰の声も聞こえていないみたいだ……
「それより、これで全員揃ったのか?」
俺はクラークを無視して、アドリアに話しかける。アドリアは首を横に振った。
「いいや……私たちも、正確に把握できたわけではないが。おそらくだが、三の国の勇者と一緒にいた、ブラザーがまだ見つかっていない」
「あ……!デュアンか……」
そうか。彼は尊の仲間だったから、あの場にもたぶんいただろう。正直いきなり奇襲を掛けられて、それどころじゃなかったから、彼がいたかどうかすら定かじゃないが……
「でも、それなら……!」
ウィルがはっとした後、悲痛な声を漏らす。
「デュアンさんは、一人で落ちたってことですか……?」
「それは……アドリア。あんたたちとも、一緒じゃなかったんだよな?」
「ああ。だから私は、そっちと一緒だといいと思っていたんだが……」
俺は一縷の望みにかけて、フランとアルルカを見た。だがフランもまた、目を閉じ、首を横に振る。
「誰とも、一緒じゃなかったのか……」
俺は絶望的に、そうつぶやいた。アドリアが苦しそうに言う。
「……この中で、あそこからの落下に対処できるのは、ここにいる中の数人だけだろう。もしや彼に、非凡な魔術の才能があったりはしないのか?」
「……あってほしいけど、今、そんなこと言っても無意味だよな……」
俺はロウランと、クラークたちはライラと一緒だったから、なんとか死なずに済んだんだ。だが、デュアン一人だったら……
「そんな……デュアンさん……!」
ウィルが嗚咽を漏らす。彼とは色々あったが、それでも幼馴染だ。俺だって辛い。こんな別れ方って……
「デュアン……ちくしょう……!」
「……あー。水を差すようで悪いですが。もうそろそろいいですか?」
え?俺たちは一斉に顔を上げた。そこに、気まずそうな顔で立っていたのは……
「なんだか、申し訳ありませんね。あいにく死にぞこないまして」
「まじかよ……デュアン!」
デュアンが、生きてた!信じられない!俺は体の痛みも忘れて、デュアンに駆け寄った。みんなもわっと後に続く。
「デュアン、本物か!?アンデッドだったりしないよな?」
「僕にも信じられないんですよ。逆に訊きたいくらいです。僕、死んでませんよね?」
俺はデュアンの肩を何度も叩いた。それなりに強く叩いてしまったせいで、デュアンはうっと呻いている。だが、手はすり抜けないし、痛みがあるってことは、確かに生きている証拠だ。
「よかった、デュアンさん……本当によかった!」
「ははは!よかったな、ウィル!」
「えっ。ウィルさん、ひょっとして僕の心配してくれていたんですか?うぅむ、だったらいっそ、幽霊にでもなっていたら、彼女に会えていたでしょうか……そして今度こそ僕に……」
「はぁ?いい加減にしてください、このバカ!呪い殺しますよ!」
「デュアン、ウィルが殺してやるって」
「ええ!?」
なんにせよ、よかった!生存が絶望的だったからこそ、この再会は嬉しい。もっと言えば、これでクラークが正気に戻ってくれればなおよかったんだが……ちっ、ダメだ。そこまではうまくいかないみたいだ。
「でもデュアン、お前、よく無事だったな」
「いやまったく、僕にも不思議で……どうして生きているのか、さっぱりわからないんですよ」
「でも、ここに落ちてきたことは覚えてるんだろ?」
「それが、あの見えない力に押しつぶされた時、頭を強く打ってしまったようでして……気を失ってしまったんです」
え?それなら、気絶したまま落ちて無事だったってことか?ますます奇跡としか言いようがないな……
「あの、ところでなんですが。そう言うわけで、僕はあの後のことを、いまいちよく覚えていないんです。僕たちは、この真っ暗なところに落とされたんですよね?」
「ああ、うん。話すと長くなるけどな……」
「そうでしょうね。けど、みなさんご無事そうでなによりです。ところで、尊さんはどちらに?」
っ。束の間の喜びは、ロウソクの火のように一瞬で吹き飛んだ。俺たちの間に、冷たい風が吹き抜けたようだ。
「……?どうしたんですか?」
首をかしげるデュアン。そうか、気絶していたなら、尊がどうなったのか、デュアンは見ていないんだ……取り繕ってもしかたがないことは分かっているし、デュアンも当事者なんだから、知る権利はあるだろう。けど、なんて言えばいいんだ。尊は死んだ、セカンドの闇の魔法によって、ろくな抵抗もできずに殺されただなんて、とてもじゃないが……
「桜下くん?何があったんですか。尊さんは、今どこに?」
「えっと……」
俺が口ごもったことで、デュアンも何かを察したらしい。顔つきが変わった。うぅ、けどやっぱり……
「死んだよ」
っ!?声を発したのは、今まで一言もしゃべらなかった男。
(クラーク!?)
やつは、以前うつろな表情のまま、ぼうっと闇を見つめている。だが、確かに今、やつがしゃべった。
「死んだ……?勇者様、それはどういう意味ですか!?」
「言葉通りだ。尊さんは死んだ。魔王の手に掛かって、真っ黒に燃え尽きた」
「もっ、燃え尽き……?そんな、馬鹿な!」
デュアンはがっくりと膝をついてしまった。ああくそ、言わんこっちゃない!
「おい、クラーク!てめえ、どういうつもりだ!」
俺はクラークの肩を押さえる。こんな時になってもまだ、クラークは俺をまっすぐ見ようとしない。
「事実を、言ったまでだろ。死んだんだ、彼女は。あっけなく。虫けらみたいに」
「なっ、おい!ふざけんなよてめえ!」
「ふざけてなんていない。だから、これが事実だ。そっちこそ、誤魔化せば嘘になるとでも思っているのか?ガキじゃあるまいし」
こ、こいつ……!俺は怒りに我を忘れて、握り拳をぐっと引いた。だが、それを突き出すよりも早く……
パーン!
「っ……!」
「え……」
クラークがぶっ飛んだ。俺の前に割り込み、肩を激しく上下させているのは……
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