じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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17章 再開の約束

27-4

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27-4

「さて、せっかくだからよ、勇者諸君。なんか訊きたいことでもあるんじゃないの?今ならなんでも答えてやるぜ」

そう言うと、セカンドは親し気に手を広げてみせる。
なんでもだと?それなら、どうやったらお前を心置きなくぶっ飛ばせるか、ぜひご教授いただきたいな。でなきゃ、こいつとおしゃべりに興じる気になんてなれるか。

(しかし……それはそれとしても、調子狂うな)

俺たちはここに、最終決戦に臨む心意気で来た。もちろん今もそれは変わらないが、蓋を開けてみたらどうだ?セカンドはアルアを弄んでたわむれているし、今もこうして無駄口を叩いている。俺たち相手に、真剣になる必要なんてないってことか?ますます腹が立つな……

「お前と話すことなど、何一つない!」

ペトラの急襲の余波で呆けていたクラークは、セカンドの声に我に返ったらしい。顔に険を戻して、おまけに剣に手を添える。セカンドは露骨につまらなそうな顔をした。

「ちっ、お前さっきから、そればっかりな。ユーモアの欠片もねー奴だ。どっかのカタブツ勇者にそっくりだぜ。あーやだやだ」

またアルアが暴れ出したので、肩を押さえているクラークは返事をできなかった。だがまあ、口を開けたとしても、罵詈雑言以外に出て来はしなかっただろうけど。

「それなら、次はお前だ。お前だよ、お前」

セカンドは節くれ立った中指で、俺を指さしてきた。フランが髪の毛を逆立てん勢いで威嚇しているが、いきなり突っ込むのはマズい。残りの腕まで燃やされたら大変だ。俺はフランをそっと制すと、唇を湿らせ、慎重に答える。

「俺に用か」

「そうそう。さっきから全然喋んねーけど、どうなんだ?ていうかお前、どこの国の勇者だ?」

「俺は、二の国に召喚されたもんだ」

「おお、てことはオレの後輩?で、あいつらとは上手くやってんのか?」

「いいや。もう勇者はやめてるからな」

「やめた?なんだそりゃ」

「勇者は面倒だから、やめさせてもらったんだ。だから俺は、今は勇者じゃない」

「はあ?」

セカンドはぽかんとしていたが、すぐに手を叩いて大笑いしだした。

「ぶひゃひゃひゃひゃ!はぁー、なるほどな。勇者をやめた!どっかのバカと違って、こりゃ筋金入りの大バカだぜ!」

セカンドは足でダンダン音を鳴らしながら、下品に笑っている。そのわざとらしすぎる仕草ときたら、怒りよりもうすら寒さを感じる始末だ。

「はぁー。そんじゃ、お前は元勇者くんか?んでも、この場にいるってことは、結局いいように使われてるってことだな。惜しいな、見どころはありそうなのに」

「見どころ?」

「そ。もう少し骨があれば、オレの仲間に入れてやってもよかったのにな」

それなら、骨のなさに感謝しないとな。あいつと一緒なんて、死んでもごめんだ。俺が全くノーリアクションだったことで、セカンドは不満そうな顔をしたが、すぐに笑みを浮かべる。

「まあいい。そこの金髪よりは話ができそうじゃん。そんじゃ、センスのある君に訊こう。君なら、オレに訊きたいことがあるんじゃねーの?」

訊きたいこと、か。そりゃ色々あるが。さっきから、一体何のつもりだろう。やたらと俺たちに質問をさせたがっているようだが……

(これは、あれか?子どもが自分の考えたイタズラを自慢したくて、しきりに言いふらしているみたいじゃないか)

セカンドは、俺たちを見事に出し抜いたと思いあがっている。だから策を披露したくて仕方ないんだ。んなもんに付き合ってやる義理はほとほとないが、一方で奴が自ら手の内を晒してくれるのなら、それはこちらに利があるかもしれない。

(うまいこと情報を引き出したいけど……クラークには無理だろうな)

クラークはアルアへの仕打ちで怒り心頭だし、ペトラもまあ、交渉術に期待はできねえな。仕方ない、俺がやるしかなさそうだ。

「あー、そんじゃあ訊こうか。あんた、ほんとにあのセカンドなのか?死んだはずだろ、あいつは」

「おっ!さっすが、良い質問だねえ。十点!」

何が十点なんだと、ツッコむ気にもならない。

「そうだな、そこから話すのがちょうどいいか。あれだろ、お前たちはオレが、サードと相討ちになって死んだと思ってんだろ?」

「まあ……」

「ところがどっこい、そうじゃあなかったんだな。オレたちはだな、互いに殺し合った演技をしたんだよ。分かるか?サードは、最初からオレの仲間だったのさ」

「なに?」

サードとセカンドが、仲間?俺の反応に気を良くしたのか、セカンドは饒舌に語り出す。

「そうとも。オレとアイツは手を組んで、一芝居打ったのさ。あのバカをぶっ殺した後、サードは追っかけてくるふりをして、そんで一緒に姿をくらました。あの谷はそのために選んだ舞台だったわけ」

アルアがまた身じろぎしたが、セカンドは気にしない。

「で、オレは魔王の城を乗っ取った。ま、後はだいたい分かるだろ?」

「……なら、俺たちと一緒にいたサード。あいつは……」

「そうそう、いいとこ気が付くじゃん。あれ、オレ。本物のサードは、ずーっとオレの代わりに魔王役をしてたんだ」

セカンドはともかく、サードもグルだったなんて!さすがにこれには驚いた。さんざん魔王の正体が勇者だと聞かされていたせいで、勇者“二人”が裏切っているとは考えもしなかった……だけど思い返せば、ヒントはあちこちにあったんだ。

「……お前は、完璧にサードを演じてみせた。本人確認の質問にも百点の回答をしたそうだな」

「おお、そうだとも。それで?」

「でも、そもそもおかしかったんだ。俺だって、自分自身を完璧に理解できているか自信がない。テストの答え合わせじゃねえんだ、模範解答であること・・・・・・・・・を疑うべきだった」

こいつの答えは、完璧すぎた。宿題の答えを移す時、あえて一、二問間違えたほうが、リアリティがあるって言うだろ?どうしてそれを忘れていたんだろう。

「へぇ、なかなかよく気付くじゃん。他には?」

セカンドはワクワクした様子で先を促してくる。こいつを楽しませているのは癪に障るが、我慢だ。

「あるさ、いくらでも。一度魔王が襲ってきたのも、ヴォルフガングがあっさりやられたのも、全部そうだろうが」

「そう、そのとーり!あれもぜーんぶサードが変装してやってたんだなー。あ、ちなみに三幹部なんてのもウソな」

「は?」

「あれ、そこには気付かなかったか?ヴォルフガング、あれもオレだよ。三体も幹部を集められるわけねーじゃん。サードが魔王役やるから、オレが動き回るための役が必要だったんだよ」

ヴォルフガング、いや三幹部までもが、セカンドの創作だった……!?こうなるといよいよ、セカンドは自由自在に姿を変えられるようだ。一人二役どころじゃない。一体何役をこなしていたのか、想像もつかない。

「ヴォルフガングがあんなにあっさりやられたのも、魔法の鏡なんていう都合のいいアイテムがあったのも……もう、あの役は不要になったからか……」

「そうよ。あれは、オレが魔王軍として動くのに必要なキャラだったからな。お前らがなかなかオレのこと信じてくれないから、魔王あたりにイッパツぶっこんでもらえばいいかと思ってよ。結果、大当たり!お前らはすっかりオレをサードだと信じてくれたなぁ。そんなら、もう幹部役は用済みだったってわけ」

「……おい、ならまさか、ドルトヒェンも……?」

「ん、ああ、ドルちゃん?あいつはモノホンだよ。さすがにサードだけじゃ人手が足りねーから。あんま使えるやつじゃなかったけど」

吐き捨てるような言い方にムカッと来たが、まだよかった。彼女まで偽物だと言われたら、俺は今後目に見える全てのものを疑ってしまう。

「なるほどな……こう聞くと、この戦争のほとんどは、あんたと、サードによるものだったわけか。くそ、あんたら一体、何考えてるんだよ。お前たちの目的はなんなんだ?」

「目的ぃ?」

セカンドは目を見開くと、オウム返しに訊ねてくる。どうしてそんなことを訊いてくるんだ?という顔だ。

「おいおい、後輩ちゃん。お前までガッカリさせんなよな。目的なんざ、一つっきゃねーだろーがよ。わかんねーのか、本当に?」

セカンドはそこで言葉を区切る。どうやら、続きは俺に答えさせたいらしい。面倒だと一蹴してもよかったが、俺には何となく、奴が言いたいことが分かる気がした。

「……そうだな。人類を滅ぼすため、ってわけじゃなさそうだ。あんたは魔王を名乗っちゃいるが、本当に魔王にとって代わりたいわけじゃないだろ。なら、あんたの目的は……」

俺は一拍置くと、続きを口にした。



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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