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17章 再開の約束
27-5
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27-5
「あんたの目的は……自由だ」
俺の答えに、セカンドは満足そうに微笑んだ。
「やっぱお前、見どころあるわ。どうよ、今からでも鞍替えするか?」
「へん、ご冗談を」
「あそう。ま、正解だ。ていうか、これくらい分かって然るべきだよな。勇者なら、一度はここに行きつくはずだし」
「まあ……そうかもしれねえが」
するとしばらく抑えていたクラークの怒りが、再び爆発する。
「ふざけるのも大概にしろ!自由だと?お前はただ、いたずらに不幸を振りまいているだけだ!それに、桜下!どうして君が、この男の肩を持つんだよ!?」
怒りの矛先がこっちに向いたぞ。俺は肩をすくめる。
「別に、あいつのやり方がいいとは言ってない」
「当たり前だ!僕たちとこいつが同じだなんて、冗談でも言わせない!」
「いんや、ははは。同じとは言わねーよ」
セカンドはクラークを遮って、笑い交じりに首を振った。
「同じなわけないよな。だって、お前たちはいいように使われて、オレはそれから解放されたんだから」
「うるさい、黙れ!そんなわけあるか!」
「いやあるだろ。だからここにいんだろ?奴隷だよ、テメーらは」
「ふざけるな!そうやって僕らを貶めて、自分を正当化する気か?なんて卑怯な奴!」
「だぁーから、わっかんねーかなあ……!お前らは王の奴隷だっつってんだよ!」
クラークの怒声に釣られて、セカンドもだんだんイラついてきたのか、ボリュームが増してくる。
「王サマに召喚されて、そなたは勇者だっつわれてその気になっちゃったか?カワイ子ちゃんにちやほやされて調子に乗っちゃったか?お前はそうやって仕立て上げられたんだよ!“立派な勇者”にな!」
「違う!勇者の道は、僕が選んだ道だ!僕は望んでここにいる!誰かに指図されたわけじゃない!」
「救いようのないバカだな。そんじゃ仮に、お前がこの戦争に勝ったとしてみろ。その後はどうなる?」
「どうなるだと?決まっている、悪は滅び、世界は平和に……」
「そうだ、平和になるだろうよ。魔王が倒れ、勇者さまはお姫さまとチューしてハッピーエンド!めでたしめでたし!ゲームも漫画も小説も、そこから先が描かれることなんてねーんだよ。なんでか分かるか?」
クラークは戸惑った顔をした。俺も同じだろう。そんなこと、今まで考えたこともない。
「いらねーからだ。その先に、勇者なんてな」
セカンドはクラークの返事も待たずに話し続ける。
「魔王を倒すのが勇者だ。なら魔王が消えれば、勇者も必要なくなるんだよ。平和な世界に、破壊兵器が必要ないのと同じだ」
「そ……そんなことはない!魔王だけが悪じゃない。その悪をくじくために、勇者は必要だ!」
「いらねーなぁ、そんなのじゃ。お前、コバエを退治するのに、十トン爆弾を使うか?」
クラークはみぞおちを殴られたように言葉に詰まった。調子づいたセカンドは、演説でも始めそうな勢いで両手を広げる。
「勇者とは、人類の切り札だ!秘密兵器だ!リーサルウェポンだ!そういったもんは、使った後に後生大事にとっておきはしねーんだよ。なんでか分かるか?危険だからだ」
危険……まさしく危険人物そのものの男が、それを言うのか。
「危険なものは廃棄されんだよ。平和な世の中じゃ特にな。今、そんなことないって思ったか?確かにそうかもしれねえな。なんかあったときのために、奥の手を残しとくかも知れねえ。で、そのなんかってなんだ?決まってる、戦争だ」
「戦、争……」
「他の大陸の魔物をぶっ殺すか、ひょっとすっと人間同士で殺し合うかもな。今は魔王っつう共通の敵がいるからいいが、それが無くなったら今度は三国志だ。お前は一生戦いの道具として使われ続けるだろうよ。そのどこに、お前の言う平和があるんだ?」
「そんな……そんなことは、ない。そんなの、僕は」
「じゃあ、なんでこの戦争に参加した?お前は断れたのか?違うだろ。お前に選択肢は無かったはずだ。お前の意志に関わらず、お前はこの戦争に駆り出された。それを奴隷と呼んで、何が違うんだ?」
クラークは完全に呑まれてしまった。アドリアとミカエルが、立ち尽くす彼の背中を不安そうに見つめている。そろそろ助け船を出してやるか。
「ストップ。クラーク、ちょっといいか」
俺が呼びかけると、クラークはぎこちなくこちらを見る。
「さっき自分で言ったこと、忘れるなよ。お前はここに望んで来たはずだろ。ま、実際のところ択はなかったかもしれないけど、ともかく自発的ではあったはずだ」
「あ、ああ……」
「それはなんでだ?」
「それは……」
クラークの目に力が戻った。
「そうだ。理由なんてどうでもいい。僕は、お前を倒して、大事な人の下に帰るんだ」
それでいい。彼の仲間たちもほっとしている。一方、セカンドはつまらなそうにしていた。
「かわいそうに、もう骨の髄まで洗脳されちまったんだな。救いようがない」
「救いが無いのは、お前の方だ。セカンド。骨の髄まで邪悪に染まったお前に、もう情けも慈悲もないと思え」
「さいで。ならもう一人、お前はどうだ?」
セカンドは俺へと首を向ける。俺は首を押さえて、ぽきっと鳴らした。
「まあ正直、あんたの言い分もわかるよ」
「おっ。だろ?」
クラークが、今度は俺を睨みつけてくる。そんな顔されても、分かるもんは分かるんだ。
「俺だって、勇者をやめた身だ。そういうのが嫌だったからな。戦いとか、ほんとはどうでもいいって思ってる」
「なのに、お前も戦うってのか?」
「そうなるかな。あいにく俺も、自分の意志でここまで来たんだ。そこの金髪とはちょっと動機が違うけど」
「……へーえ。結局お前も、勇者ゴッコが好きなわけ」
「いいや。単純に、あんたのやり方が気に食わないだけさ」
セカンドの言うことには、正しい部分もあると思う。が。
結晶に閉じ込められたロア。
自爆までしようとしたドルトヒェン。
疲れ果て、それでもなお憎しみを忘れられなかった、フランのばあちゃん。
「悪いな。あんたのことは、どうやっても、好きになれそうにねーや」
結局はそこだ。俺は、俺の目の前に立つ、大勢を不幸にしても平然としていられるこの男のことが、心底嫌いなんだ。
「……あーあ、やっぱ残念だ。オレの後輩も、結局はバカの域を出なかったらしい」
セカンドはまいったまいったと、両手を上げてひらひらした。
「これ以上バカと話しても疲れるだけだな。前座の尺も十分稼げたところだし……そろそろ消えろや、お前たち」
セカンドは広げた手の指を順番に曲げて。ゴキゴキと鳴らす。
「勇者は負けて、魔王が勝つ。バッドエンドってのも、ま、たまにはオツなもんだろ?リアリティがあってさ」
セカンドは余裕しゃくしゃくの表情だ。自分の勝利を信じて揺るがないって顔だな。
(くそ、楽しみになるじゃないか)
あいつのその自信満々なツラの皮を、引っぺがしてやれる時がさ……!
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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「やっぱお前、見どころあるわ。どうよ、今からでも鞍替えするか?」
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「まあ……そうかもしれねえが」
するとしばらく抑えていたクラークの怒りが、再び爆発する。
「ふざけるのも大概にしろ!自由だと?お前はただ、いたずらに不幸を振りまいているだけだ!それに、桜下!どうして君が、この男の肩を持つんだよ!?」
怒りの矛先がこっちに向いたぞ。俺は肩をすくめる。
「別に、あいつのやり方がいいとは言ってない」
「当たり前だ!僕たちとこいつが同じだなんて、冗談でも言わせない!」
「いんや、ははは。同じとは言わねーよ」
セカンドはクラークを遮って、笑い交じりに首を振った。
「同じなわけないよな。だって、お前たちはいいように使われて、オレはそれから解放されたんだから」
「うるさい、黙れ!そんなわけあるか!」
「いやあるだろ。だからここにいんだろ?奴隷だよ、テメーらは」
「ふざけるな!そうやって僕らを貶めて、自分を正当化する気か?なんて卑怯な奴!」
「だぁーから、わっかんねーかなあ……!お前らは王の奴隷だっつってんだよ!」
クラークの怒声に釣られて、セカンドもだんだんイラついてきたのか、ボリュームが増してくる。
「王サマに召喚されて、そなたは勇者だっつわれてその気になっちゃったか?カワイ子ちゃんにちやほやされて調子に乗っちゃったか?お前はそうやって仕立て上げられたんだよ!“立派な勇者”にな!」
「違う!勇者の道は、僕が選んだ道だ!僕は望んでここにいる!誰かに指図されたわけじゃない!」
「救いようのないバカだな。そんじゃ仮に、お前がこの戦争に勝ったとしてみろ。その後はどうなる?」
「どうなるだと?決まっている、悪は滅び、世界は平和に……」
「そうだ、平和になるだろうよ。魔王が倒れ、勇者さまはお姫さまとチューしてハッピーエンド!めでたしめでたし!ゲームも漫画も小説も、そこから先が描かれることなんてねーんだよ。なんでか分かるか?」
クラークは戸惑った顔をした。俺も同じだろう。そんなこと、今まで考えたこともない。
「いらねーからだ。その先に、勇者なんてな」
セカンドはクラークの返事も待たずに話し続ける。
「魔王を倒すのが勇者だ。なら魔王が消えれば、勇者も必要なくなるんだよ。平和な世界に、破壊兵器が必要ないのと同じだ」
「そ……そんなことはない!魔王だけが悪じゃない。その悪をくじくために、勇者は必要だ!」
「いらねーなぁ、そんなのじゃ。お前、コバエを退治するのに、十トン爆弾を使うか?」
クラークはみぞおちを殴られたように言葉に詰まった。調子づいたセカンドは、演説でも始めそうな勢いで両手を広げる。
「勇者とは、人類の切り札だ!秘密兵器だ!リーサルウェポンだ!そういったもんは、使った後に後生大事にとっておきはしねーんだよ。なんでか分かるか?危険だからだ」
危険……まさしく危険人物そのものの男が、それを言うのか。
「危険なものは廃棄されんだよ。平和な世の中じゃ特にな。今、そんなことないって思ったか?確かにそうかもしれねえな。なんかあったときのために、奥の手を残しとくかも知れねえ。で、そのなんかってなんだ?決まってる、戦争だ」
「戦、争……」
「他の大陸の魔物をぶっ殺すか、ひょっとすっと人間同士で殺し合うかもな。今は魔王っつう共通の敵がいるからいいが、それが無くなったら今度は三国志だ。お前は一生戦いの道具として使われ続けるだろうよ。そのどこに、お前の言う平和があるんだ?」
「そんな……そんなことは、ない。そんなの、僕は」
「じゃあ、なんでこの戦争に参加した?お前は断れたのか?違うだろ。お前に選択肢は無かったはずだ。お前の意志に関わらず、お前はこの戦争に駆り出された。それを奴隷と呼んで、何が違うんだ?」
クラークは完全に呑まれてしまった。アドリアとミカエルが、立ち尽くす彼の背中を不安そうに見つめている。そろそろ助け船を出してやるか。
「ストップ。クラーク、ちょっといいか」
俺が呼びかけると、クラークはぎこちなくこちらを見る。
「さっき自分で言ったこと、忘れるなよ。お前はここに望んで来たはずだろ。ま、実際のところ択はなかったかもしれないけど、ともかく自発的ではあったはずだ」
「あ、ああ……」
「それはなんでだ?」
「それは……」
クラークの目に力が戻った。
「そうだ。理由なんてどうでもいい。僕は、お前を倒して、大事な人の下に帰るんだ」
それでいい。彼の仲間たちもほっとしている。一方、セカンドはつまらなそうにしていた。
「かわいそうに、もう骨の髄まで洗脳されちまったんだな。救いようがない」
「救いが無いのは、お前の方だ。セカンド。骨の髄まで邪悪に染まったお前に、もう情けも慈悲もないと思え」
「さいで。ならもう一人、お前はどうだ?」
セカンドは俺へと首を向ける。俺は首を押さえて、ぽきっと鳴らした。
「まあ正直、あんたの言い分もわかるよ」
「おっ。だろ?」
クラークが、今度は俺を睨みつけてくる。そんな顔されても、分かるもんは分かるんだ。
「俺だって、勇者をやめた身だ。そういうのが嫌だったからな。戦いとか、ほんとはどうでもいいって思ってる」
「なのに、お前も戦うってのか?」
「そうなるかな。あいにく俺も、自分の意志でここまで来たんだ。そこの金髪とはちょっと動機が違うけど」
「……へーえ。結局お前も、勇者ゴッコが好きなわけ」
「いいや。単純に、あんたのやり方が気に食わないだけさ」
セカンドの言うことには、正しい部分もあると思う。が。
結晶に閉じ込められたロア。
自爆までしようとしたドルトヒェン。
疲れ果て、それでもなお憎しみを忘れられなかった、フランのばあちゃん。
「悪いな。あんたのことは、どうやっても、好きになれそうにねーや」
結局はそこだ。俺は、俺の目の前に立つ、大勢を不幸にしても平然としていられるこの男のことが、心底嫌いなんだ。
「……あーあ、やっぱ残念だ。オレの後輩も、結局はバカの域を出なかったらしい」
セカンドはまいったまいったと、両手を上げてひらひらした。
「これ以上バカと話しても疲れるだけだな。前座の尺も十分稼げたところだし……そろそろ消えろや、お前たち」
セカンドは広げた手の指を順番に曲げて。ゴキゴキと鳴らす。
「勇者は負けて、魔王が勝つ。バッドエンドってのも、ま、たまにはオツなもんだろ?リアリティがあってさ」
セカンドは余裕しゃくしゃくの表情だ。自分の勝利を信じて揺るがないって顔だな。
(くそ、楽しみになるじゃないか)
あいつのその自信満々なツラの皮を、引っぺがしてやれる時がさ……!
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