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17章 再開の約束
32-2
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32-2
「ククク……クハーハッハッハ!」
手の甲を額に当て、セカンドはわざとらしい高笑いを上げた。
「オレを討つだと?ザコが一匹から二匹になっただけで、本当にそんなことができると思ってんのか?ああ!?」
セカンドは後ろに手を伸ばすと、見えない何かを投げつけるように腕を振りかぶった。途端、猛烈な風がこちらに吹き付ける。
「ぐうっ……!」
さすがに風は避けられん。某とフランは、風に煽られもんどりうった。
「馬鹿が!ゼロはいくつ集めてもゼロなんだよ!」
そのまま二人ごと刺し貫こうと、セカンドが風に乗って、槍と共に飛んでくる。
(桜下殿!)
耳元でエラゼムの声が響く。ここで共倒れするわけには行くまい!
某はフランの肩に手を置くと、彼女を空高くへかち上げた。骨だけの体は軽く、造作もないことだ。即座に剣を構えると、剣の腹に手を添えて迎え撃つ。
ガキィン!ギャリギャリギャリ!激しいつばぜり合い。剣からは紅色の火花が散る。
「どうしたどうしたぁ!仲間が増えて強くなったんじゃないのかよ!」
セカンドは突進の全エネルギーを槍に掛けてくる。これは……少しでも力を抜くと、獲られるのはこちらの方だ。いなしや受け流しといった小技でごまかそうとすれば、その瞬間心臓を穿たれる。
「おらぁ……!まずはテメェから殺してやる……!どうだ、怖いか?えぇ!」
セカンドは狂気を顔に張り付けて、ギラギラと目を光らせる。自分の勝ちを疑っていない、絶対的な強者の発言。しかし……今の某には、分かる。
「違うな……」
「なに……?」
「恐れているのはそちらだろう。セカンド」
セカンドの顔から一瞬、表情が消えた。
「は……ハハハハァ!苦し紛れに、何を言い出すかと思えば!くだらねえな!」
「いいや。貴様は、恐れていたはずだ。勇者の力を。某たちの力を、な」
「チッ、この……!」
今だ。上空に飛び上がっていたフランが、セカンドの真上へ落下してきた。フランは重力の加速も利用して、鉤爪を断頭台のごとく振り下ろす。ギィン!
「ぐあっ……!」
その一撃は、セカンドの鎧を砕くまでは行かなかったものの、数瞬だけよろけさせることには成功した。その隙に槍をはじき飛ばし、さらにきゃつに一太刀を浴びせる。
「くそっ……!うっぜぇなぁ!何度やっても無駄だろうが!テメェの剣じゃ、傷一つ付かねーんだよ!」
まさしくその通りで、セカンドは怪我一つ負っていない。そのまま槍を振り回して、こちらに襲い掛かろうとする。だが、そろそろ効いてくるはずだ……
がくんっ。
「なっ……!?」
来た!
セカンドが、つまずいた。今まで息切れ一つ起こさなかったセカンドが、急に力が抜けたかのように、かくっとふらついたのだ。
(逃さぬよう!)
「おぉ!破あぁ!」
すかさず二の太刀を浴びせかける。だが、それ以上の追撃は入れさせてはくれなかった。素早く後ろに下がって距離を取られる。
(惜しい。常人であれば、あそこでもう二発は入れられていたでしょう)
「敵も尋常ならざると言うわけだ。しかし……ようやく効果が出てきたようだな」
某の剣の、本当の効果が。セカンドは何が起こったのか分からないという顔で、自分の足を見つめている。
「何が起きた……?いや、なにもされちゃいねえ。どこも切られていない……だったら、なんでだ!」
「どうした。さっきまでの余裕はどこに行った?」
某が紅色の刀をびゅっと振ると、セカンドの目が細くなった。
「……そうか。テメェの剣、なんかカラクリがあるな。傷も付けられねえ攻撃を、無駄に繰り返すわけがねえ」
なかなかいい勘だ。どのみち、ここらが潮時だろう。これ以上隠す必要もない。
「その通り。某の剣は、肉を絶たず。代わりに魂を斬るのみ」
「魂だと……?まさか、テメェ……オレの魔力を!」
ご明察。某の剣は、魂の力……魔力を斬る。これが、エラゼムの魂と融合して得た、新たな力だ。
「そうか、そういうことか……分かったぞ!だから、オレの槍も折れんだな。要は、さっきと同じだ。オレの魔法を、一時的に消すことができる。そしてオレを直接斬れば、魔力を削る……こんなとろか」
きゃつは一人で納得して、ぶつぶつとしきりに呟いている。
「だったら、もう同じ手は食らわなけりゃいいだけだ……チッ!結局姿が変わっても、やってることは同じじゃねえか。一つしか芸の無いクズがよ!」
「そうとも。某にできることはこれのみ。そして貴様は、これまで四度斬られた。あと何度斬れば、貴様の魔力は底となろうな?」
魔力が底を尽きれば……当然、きゃつの鎧は消えてなくなる。あの鎧はあくまで、きゃつの魔法によって生み出されたもの。
「何度でも斬ってやろう。貴様が力尽きるその時まで!」
つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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「ククク……クハーハッハッハ!」
手の甲を額に当て、セカンドはわざとらしい高笑いを上げた。
「オレを討つだと?ザコが一匹から二匹になっただけで、本当にそんなことができると思ってんのか?ああ!?」
セカンドは後ろに手を伸ばすと、見えない何かを投げつけるように腕を振りかぶった。途端、猛烈な風がこちらに吹き付ける。
「ぐうっ……!」
さすがに風は避けられん。某とフランは、風に煽られもんどりうった。
「馬鹿が!ゼロはいくつ集めてもゼロなんだよ!」
そのまま二人ごと刺し貫こうと、セカンドが風に乗って、槍と共に飛んでくる。
(桜下殿!)
耳元でエラゼムの声が響く。ここで共倒れするわけには行くまい!
某はフランの肩に手を置くと、彼女を空高くへかち上げた。骨だけの体は軽く、造作もないことだ。即座に剣を構えると、剣の腹に手を添えて迎え撃つ。
ガキィン!ギャリギャリギャリ!激しいつばぜり合い。剣からは紅色の火花が散る。
「どうしたどうしたぁ!仲間が増えて強くなったんじゃないのかよ!」
セカンドは突進の全エネルギーを槍に掛けてくる。これは……少しでも力を抜くと、獲られるのはこちらの方だ。いなしや受け流しといった小技でごまかそうとすれば、その瞬間心臓を穿たれる。
「おらぁ……!まずはテメェから殺してやる……!どうだ、怖いか?えぇ!」
セカンドは狂気を顔に張り付けて、ギラギラと目を光らせる。自分の勝ちを疑っていない、絶対的な強者の発言。しかし……今の某には、分かる。
「違うな……」
「なに……?」
「恐れているのはそちらだろう。セカンド」
セカンドの顔から一瞬、表情が消えた。
「は……ハハハハァ!苦し紛れに、何を言い出すかと思えば!くだらねえな!」
「いいや。貴様は、恐れていたはずだ。勇者の力を。某たちの力を、な」
「チッ、この……!」
今だ。上空に飛び上がっていたフランが、セカンドの真上へ落下してきた。フランは重力の加速も利用して、鉤爪を断頭台のごとく振り下ろす。ギィン!
「ぐあっ……!」
その一撃は、セカンドの鎧を砕くまでは行かなかったものの、数瞬だけよろけさせることには成功した。その隙に槍をはじき飛ばし、さらにきゃつに一太刀を浴びせる。
「くそっ……!うっぜぇなぁ!何度やっても無駄だろうが!テメェの剣じゃ、傷一つ付かねーんだよ!」
まさしくその通りで、セカンドは怪我一つ負っていない。そのまま槍を振り回して、こちらに襲い掛かろうとする。だが、そろそろ効いてくるはずだ……
がくんっ。
「なっ……!?」
来た!
セカンドが、つまずいた。今まで息切れ一つ起こさなかったセカンドが、急に力が抜けたかのように、かくっとふらついたのだ。
(逃さぬよう!)
「おぉ!破あぁ!」
すかさず二の太刀を浴びせかける。だが、それ以上の追撃は入れさせてはくれなかった。素早く後ろに下がって距離を取られる。
(惜しい。常人であれば、あそこでもう二発は入れられていたでしょう)
「敵も尋常ならざると言うわけだ。しかし……ようやく効果が出てきたようだな」
某の剣の、本当の効果が。セカンドは何が起こったのか分からないという顔で、自分の足を見つめている。
「何が起きた……?いや、なにもされちゃいねえ。どこも切られていない……だったら、なんでだ!」
「どうした。さっきまでの余裕はどこに行った?」
某が紅色の刀をびゅっと振ると、セカンドの目が細くなった。
「……そうか。テメェの剣、なんかカラクリがあるな。傷も付けられねえ攻撃を、無駄に繰り返すわけがねえ」
なかなかいい勘だ。どのみち、ここらが潮時だろう。これ以上隠す必要もない。
「その通り。某の剣は、肉を絶たず。代わりに魂を斬るのみ」
「魂だと……?まさか、テメェ……オレの魔力を!」
ご明察。某の剣は、魂の力……魔力を斬る。これが、エラゼムの魂と融合して得た、新たな力だ。
「そうか、そういうことか……分かったぞ!だから、オレの槍も折れんだな。要は、さっきと同じだ。オレの魔法を、一時的に消すことができる。そしてオレを直接斬れば、魔力を削る……こんなとろか」
きゃつは一人で納得して、ぶつぶつとしきりに呟いている。
「だったら、もう同じ手は食らわなけりゃいいだけだ……チッ!結局姿が変わっても、やってることは同じじゃねえか。一つしか芸の無いクズがよ!」
「そうとも。某にできることはこれのみ。そして貴様は、これまで四度斬られた。あと何度斬れば、貴様の魔力は底となろうな?」
魔力が底を尽きれば……当然、きゃつの鎧は消えてなくなる。あの鎧はあくまで、きゃつの魔法によって生み出されたもの。
「何度でも斬ってやろう。貴様が力尽きるその時まで!」
つづく
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