不思議倶楽部

勝研

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不思議倶楽部_篠原夢見_C1

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それは夢見る卵と呼ばれた。

持っていれば、〈持ち続けていれば〉願いが叶うという奇妙なアクセサリー。

だが。

「あああっ。」

少女の体の全身が赤くなり服が触れた部分ですら激痛が走る。身体中に虫が這い廻るような感覚。

少女は〈成功〉しか考えていなかった。〈失敗〉した時の事を考えない、それは無謀だったのか。それとも軽率な行動だったのか。

人は物事の始め〈最良の結果〉を求め、終わり際には〈最悪の結果〉を考えるものである。少女の呼吸が止まる、それを嘲笑うかのように夢見る卵は只のそこに佇んでいた。 


***********************


少し肌寒いお昼休み、私篠原夢見は屋上で親友の〈ノリ子〉と一緒にベンチに座って食事をしていた。ノリ子は何処にでもいる女子生徒だけど、男子から〈歩くキョウキ?〉と呼ばれて恐れられている。髪の毛は茶色がかった短髪、空手部に所属しているためか肌は日に良く焼けた色黒、鼻にソバカスが残った健康的な肢体が特徴の生徒だ。


「ねぇ夢見、週末暇?」

「えっ?バイトは無いけど、、何処かに遊びに行くの?」

「実はさ、週末にK大学の学生の人と合コンやることになってるんだけどさ、頭数が足りなくて。夢見出てみない?将来有望、彼氏にすれば鼻が高いわよ。」

そう言えばノリ子は今年三人目の彼氏と別れたばかりらしく、彼氏募集中。危ない橋も一度は渡れ、行動派の彼女らしいやり方だった。

合コン?うーんどうだろう、怖いなぁ、良くないイメージあるし。こういう出会いの場は〈真剣に交際したい男女〉が一緒になる会合で、遊び半分で参加してはいけない気がする。

「パパさん、ママさんも心配するし、、それにー。」

「あっそうか、夢見には〈原始人〉がいるか!ゴメンゴメン。」

パパさん、ママさんは私の保護者であって本当の両親ではない。実家である篠原家と私は〈色々あって〉疎遠なので保護者の役割をしてくれているのが立花家のご両親なのだ。ノリ子がいう〈原始人〉とはその立花家の長男で幼なじみの公平の事だ。

それにしても〈原始人〉は酷いと思う。確かに見た目は〈普通〉だけど、時々物凄くカッコイイ時があるもん。、、えっと、でもそれは私が公平が好きと言うわけではなくて、うん。好きじゃない、好きではない、好きなんてない、ないない、ありえないって、でももし告白してきたら、、どど、、どうしよう!

ポワーン。

「、、、うふふ、、。」

「だめだ、コリャ。ねぇ、聞いてる?おーい。」

のり子がヤレヤレと両手を頭の後ろに組むと、足早に私達に近付いてくる生徒が一人。私もそれには流石に気が付いて見上げる。



「いたいたぁ、夢見ちゃん、これだよ。でも良かった。プレゼントだから捨てるの悪いし勿体ないし、部屋に置くのも気味悪くて。」

「??」

そんな私たちに話し掛けてきたのは同級生の女子生徒、本川美津ほんかわみつさん、手にもった奇妙なアクセサリーを渡される。そう言えば私にアクセサリーを渡したいと昨日言っていたっけ。

それは金メッキが施されたペンダントで、双円錐の鳥籠とりかごに似たそのアクセサリーの中にはウズラの卵ほどの白い物体が動かないように固定されていた。それに植物なのか金属なのか分からない紐がくくりつけられている。大きさとしてはあまり大きくはなく重さもないので首から下げるということが前提となっている可能性が高い。

ノリ子がフーンとアクセサリー部分を指でつつく。

「隙間が狭いから中の白いモノ取れないわね?」

「多分外側を後から作って取れないようにしたんじゃない。細やかな装飾といい、かなり手が込んでますね。」

「うん。でもこれ、、曰く付きのものらしくて、〈古物商〉の人の娘さんがこれを持っていて病気になったとか、それで気味悪がって安い値段で売りに出されていたと祖父が。」

「それを本川さんのお爺さんがオマケで貰ったと。」

少し嫌そうに頷く本川さん。

「確か南米のシャーマンが昔儀式で使っていたもので、〈肌身離さず持っていると願いが叶う〉らしいけど。気味が悪くて、もし本当に変な事が起きてからだと、、」

確かに不思議倶楽部の人間ならそういうのも平気だと考えたのかもしれないけど。私も少し怖かった、でもお願いされた以上何かしてあげないと本川さんも可哀想だ。

「処分は夢見ちゃんに任せるから。」

「うっ、、うん。ありがとう。」

他にも用事があるのか本川さんが私達から離れて昇降口の扉に向かう。

私はそれを眺めて手に持ったアクセサリーをもう一眺める。

鼻がムズムズする。

「クチュン。」

「何、夢見風邪?」

「う~んどうだろう。花粉症?風邪かな?言われてみれば少し頭が痛いかも。」

「暦では春が過ぎたっていってもまだ風は肌寒いからね。早めに食べて教室に戻ろう。」

私はアクセサリーをスカートのポケットに、お弁当を手提げ袋に入れると教室に戻った。





私は不思議倶楽部の部室のドアを専用の鍵で開けて部室に入る。部活の活動報告書類は全て提出したので今はかなり暇である。部室には部長の机が正面奥にあり、右隣に遥先輩がいつも座る小さめの椅子が置いてある。中央には大きな長方形の机とソファーがそれを挟むように置かれていた。

薄暗い室内の明かりを付けて、私は鞄を部屋の隅の棚に置くと昼に貰ったアクセサリーをポケットから取り出す。

「、、暇だし、公平が来るまでアクセサリーの事を調べてみようかな。」

テーブルに備え付けてあるライトスタンドの明かりを付けて白い物体に光を当てる。鳥籠の様な外側を良く観察してみる。

「文字らしい文字はないなぁ。マヤ文字とかの象形文字があれば良かったんだけど、、でもあっても外側の鉄部分の検証だけじゃ年代なんて幅がありすぎて、、。違う違う、、問題は全体よりも、実害の方。」

そう問題は中身だった。

机の引き出しからアートナイフを取り出す。

「中は空洞じゃない、、石なの?」

中に納められているウズラの卵?は光沢を持った乳白色。光沢を持っているということは表面に凹凸は少なくビッシリと均一に結晶化しているか、コーティングされているのかもしれない。カリカリカリと、表面を軽く削る。削った感覚としては砂が固まって石になっている感じに近い。

イメージとしてはカレーのルーよりもう少し硬い。水溶性ならば雨の日に持ち歩いただけで、そのまま溶けてなくなる?その為の外側の籠なのだろうか?

私は削り取った白い物質を棚のシャーレに移す。量が一摘まみ程になったとき。

「クチュン。」

フシャァァ。

ああ〈泣〉。空中に散布される物体は暫く漂った後机に落ちる。

「うーん。勿体ないなぁ。成分だけなら、、」

私はシャーレを退けると、手のひらの小指球で粉を集めて机の端を利用して上手くシャーレに戻した。精度の高い解析をするわけではないので問題はない筈だ。

「にしても公平遅いな~。」

気が付くともう18時半を過ぎている。公平の携帯電話にメールを送る。

〈もう着いてるよ~。忙しい?〉

〈ちょっと寂しいな。返事待ってます。〉

〈体調悪いの?〉

、、。待てど、全く返事は来ない。あーもう!

『もしもし、公平どうして返事しないの?面倒、ってあのね。もう私、部室に来てるから早く来て、、えっ?!松橋先生と美術道具の買い出し?意味が分からないよ。だって公平は不思議倶楽部の部員で美術部じゃないでしょ、、手伝い?アイスクリームも出る。そんなの知らない。もう車の中?何で私に先に連絡しないの、不思議倶楽部の部員でしょ。21時には家に帰るって、ちょっと待って!あーもう勝手に切った!!』

公平は電話を勝手に切る、まだ話は終わってなかったのに。もう知らない!勝手にすれば良い。

私は額を机に乗せると怒りを呼吸と共に放出する。

ガチャリ。

「今晩は、夢見。どうしたのかしら、ゴリラ、、あの男に何かされたの?」

「遥先輩、今日は塾では?」

「20分程時間があったから夢見の顔を見たくて、どう紅茶飲む?リラックスするわよ。」

先輩は手慣れた手つきで、少し高級なアールグレイの紅茶を入れてくれた。私の隣に座った先輩は先程まで見ていた〈アクセサリー〉に気が付いたようだ。私は簡単な説明をハルカ先輩に伝えた。

「願いが叶うアクセサリーね。、、、。」

「あり得るかと言えば、微妙ですかね。」

「そうかしら、私は〈世界は奇妙な現象に満ち満ちている〉と思っていて、これもその一旦ではと思うけれど。思い過ごしかしら、ニオイがね、、。」

「、、臭い?」

ハルカ先輩は少し真面目な顔になる。

「夢見はプラシーボ効果とノーシーボ効果という言葉は知っているかしら?」

「プラシーボ効果は思い込みで、病気や怪我が治ったり痛みが軽減する現象とか、、ノーシーボはあまり詳しくは、、。」

「プラシーボは思い込みによって様々な効果が得られる現象、ノーシーボは薬などのあるはずのない副作用の事。私の感覚としてはプラシーボは人にとってのプラス効果。ノーシーボはマイナス効果と考えているけど、、専門家は違うと指摘するかしら。」

遥先輩の事だとこのアクセサリーはその思い込みを強める効果があるという事なのだろうか。

「人の脳は面白いわ。そうした〈思い込み〉現象が体に様々な影響を与える。それに加えて人間の成長や維持に必要な※ホルモン量はこのスプーン程しかないらしいわ。もしかりにこの粉が体に変化をもたらす物質で鼻腔から体内に侵入した場合どんな影響を体にもたらすのか、少し興味があるけれど。」

※女性ホルモン成長~閉経まで。

鼻腔と聞いて鼻がムズムズしてきた。もうダメ。

「ヘクチ。」

「可愛いクシャミね、夢見は風邪?ティッシュがあるわ。はい、チーンしましょうね。」

先輩が色っぽく、私に広げたティシュを向ける。どうやら鼻をかんで欲しいみたいだ。赤ちゃんじゃないんですから。

「大丈夫です一人で出来ます。本当に。」

「あら残念。」

本当に残念そうな顔をした先輩は最後に締めくくった。

「もし、良くない影響があるようなら、直ぐ捨ててしまいなさい。人は生きるために道具を用いる、だけど〈人にとって悪影響しかない〉道具はいずれは無くなる運命なのだから。現在まで残っていたそれは〈どっち〉なのか、それは気になるところだけど。」

「、、思い込みで、、願いが叶うかぁ。」

公平も部活に参加しないという事で、私は遥先輩と一緒に帰ることになった。小学校頃、私は男子が怖かった。虐められていたと言っても良い。グジグジした性格のせいだからだったのか、それとも他に原因が合ったからかわからない。

でも公平は違った、私に優しくしてくれた、苛めから守ってくれた。それから家が近所ということもあり段々と親しくなった。昔は良く一緒に帰った、でも最近はハッキリ言って数えるほどしかない。

私はその事を寂しく思いながら、首から下げた卵形のアクセサリーを握る。願いなど全く無いけど、公平が昔告白した〈グラマーな宮澤遥〉先輩を横目で見ながら。

「Aカップはなぁ、、」

私は無意識にそう呟いた。




「何だよ夢見、ドングリを見付けまくったリスみたいな顔をして、怒ってるのか?。」

「〈不思議倶楽部の立花公平くん〉は何で洗濯物を洗濯機の中に入れないで家中バラバラに散乱させるのかなぁと、少し不満なだけです。洗う人の気持ちになって欲しい。」

「洗濯機さん、有難うございます!乾燥機さん、有難うございます!そして物干し竿さん、有難うございます!おぉ、俺って優しーなー。」

あーもう良いですよー。

現在夕食中、パパさんママさんと公平と私。四人が長方形テーブルで食事をとっている。ちなみに私の隣は公平で、私は公平の為に作った食後のアップルパイを公平の所から私の方へと引き寄せる。

「そんなこと言う人には私の作ったデザートあげませんから。」

「ふざけるな。ったく性格が悪い奴だなお前は、いうこと聞かなくなったらそうやって脅す。それにぃ、間違いなく夜中にアップルパイ二個なんて〈太るぞ〉。」

はぁ、、戻そう。

「こら公平!夢見ちゃんに謝りなさい!」

「そうだぞ。パパはシャツなど問わず、全てを表にして入れている。それが洗濯をしてくれている者への礼儀だ。はははっ。」

ママさん有難うございます、パパさんは、、気を使いすぎです。

「あー、そうですかぁ。わかりましたーみんなおれがわるいですーゆめみさんサーセン。」

、、ムカッ。でも一応謝ったから赦してあげないとハァ。

気持ちが高ぶった時はお風呂でリラックス。私は脱衣場で服を脱ごうとすると少し胸に違和感があった。

「あれ?」

胸が腫っている気がする。

アクセサリーの効果?

うーんまだなんともいえない。

公平との若干のわだかまりと、アクセサリーの効果という二つの問題を抱え日常は過ぎていった。




土曜日。

今日は授業が半日という事、そして〈不機嫌な公平が部活不参加〉である事を知っているために早々に帰宅する。時刻は16時。ママさんは近所の人と町内会の打ち合わせで帰りが夕方過ぎになるそうだった。


そしてアクセサリーの効果で現在私の胸のサイズはAからBになっていた。アクセサリーの効果なら凄いことだ、男性が巨乳だと感じる?E位になったら使用をやめてブラジャーを買いにいこう。

部活の為にとバイトを休んだのは失敗だったと思いながら、私はリビングに掃除機をかける。

チャキン、ガチャガチャ、ウリャアァァ!ウァァ。

公平は寝そべって携帯ゲームをやっている。床にうつ伏せなので掃除機を掛けられない。

「公平、公平。お願い、掃除機掛けたいから自分の部屋でゲームやってくれる?ごめんね。」

『ブッ!』

、、、オナラされた。、私に視線すら向けずに、そのままの姿勢で。いや、、いやいや違う出ちゃったんだ。公平だって人間だもん、話し掛けたときに偶然オナラが出ることだってある。それにちょっと掃除機の騒音で私の声が聞き取り辛かったかもしれない。

私は掃除機のパワーをoffにする。

「公平、お願い。じゃあじゃあ、そっちのソファーに座って直ぐに終わらせるから。2分で終わるから、ね。」

『ブブッ!』

、、、オナラされた、二回も。公平はそのままの姿勢で動く様子もない。絶対聞こえてる、しかもオナラで返事をしてる!!、、駄目ダメ我慢して、公平だってオナラで返事したい時あると思う。公平の気持ちも考えてあげないと。

「公平、じゃあ立って。立ってくれるだけで良いの、そしたら私すごく嬉しいな。ねっねっ立って公平。」

『プゥーー、ブッ!』

、、、オナラでヤーダって言われた。駄目もう限界、こうなったら無理矢理にでも退いてもらいますからね。

「もう私、そのまま掃除機掛けちゃうからゲーム続けたければすれば。退くなら今のうちだよ。」

私は公平に構わず掃除機を掛ける。公平が体に時々当たる掃除機を非難するため私を睨むが気にせずに続ける。

ブィーン、カンカンうりゃ、ブイィーン!

ガタン!

公平がいきなり立ち上がって私に怒声を飛ばす。

「お前の所為でキャラが死んじゃっただろ!責任とれよ!!俺の一時間返せよ。」

「あーそうですか、それはそれは御愁傷様です。」

私はその言葉を聞き流して、掃除機をかける。私だって多少ゲームの事はわかる公平のキャラクターはもともと死にそうだった、失敗した理由を〈掃除機を掛けた私責任にしたい〉それだけなのだ。でもいい、これで掃除機が掛けられるから。

ブィィィィーーー、、プツン!

「?」

あれ?掃除機が動かなくなった、理由はすぐに分かった公平が口をへの字にしてコンセントを持っているからだ。なんてことするの。

「掃除機なんて、後で掛ければ良いじゃないか。何でゲームやっている時に掛けるんだよ。」

「公平がいつまでゲームするのか分からないもん。それにあまり夜遅くに掃除機かけるのは近所に悪いでしょ。公平もリビングでゲームするなら自分の部屋でゲームすれば良かったじゃない。」

「あんな狭い部屋でゲーム出来るかよ!」

「それは公平が自分の部屋を片付けないからじゃない。なら私がいますぐ掃除しようか?」

公平は一瞬怯む、こうなったら完全に軍配は私に上がる。〈エッチな本〉があるのを知られたくないのだ(知っているけど)。武士の情けで言わないでおいてあげる。

「べっ別に自分で掃除するし!にしても大変だよな~。」

「?」

「いやさ、お前と結婚する奴は大変だな。あれしろこれしろって命令ばかり、これじゃ直ぐ離婚だな。」

「命令なんて、、してない、、。」

「してるだろ。気が付いてないのか?地なのか?ますます駄目だなぁ~。あぁ~最低の結婚生活なんだろうなぁ~、旦那さん可哀想だな、いや待てまて結婚出来ないか。だって今まで一人も付き合った奴いないしな。何でか、分かるか?見た目に反して性格が悪いんだよ、滲み出てるもんな性格の悪さ。だから付き合えないんだよ。」

そして公平は自分の体を抱き締めて歌い始める。

「夢見ちゃん~、悲しいぃ~、性格ぅ~悪い~から~ぁ、、?」

公平が歌うのを止める、理由は簡単だった。

「、、、。」

あれ?なんで泣いてるんだろ私。そうだ苛められていた時を思い出したんだ、それに公平の言葉結構刺さっちゃったんだ。我慢しようとするけど意識すればするほど、酷くなる。

「、、うぅ、、クスン、、。」

もうダメ、この場にいられない。私は掃除機をその場において、自分の部屋に逃げ込んだ。枕を公平の顔だと思って叩く。

バフン、バフン。

あぁ、だんだんイライラしていた。

携帯を見るとのり子からLINEが入っていた。学校で前に話していた合コンの話題だった。今日になってまた人数が一人抜けて〈暇な人〉に再度行けるか連絡しているらしい。

そうだ!

私はのり子に参加するという意思を伝えた。後先考えない衝動的な行動。だけどこれで何故か少しスッキリした。

私が出掛ける準備を初めて終わりかけた頃、公平が私の部屋のドアを叩く。

「、、何?」

「いや、、掃除機片付けておいたぞ、、後、俺の部屋ちょっと片付けたんだけど。」

「ありがとう公平くん。私今から出掛けますから、〈今日は帰らないかもしれない〉ので伝えておきますね。」

ドアを閉める時、思い出した風に台詞を言った。

「私、今日大学生と合コンすることにしたから、公平くん言っていたよね。私が彼氏が出来ないって、安心して下さい意外に早く彼氏が出来るかもしれないですよ。では。」

公平はこの世の終わりの様な顔をした。よし!何だか合コンに行きたく無かったけど、顔だけ出してすぐに帰れば問題ないはず。それになんか風邪気味だし。ママさんへの連絡は公平への嫌がらせを含めてギリギリにした方が良い。マスク付けて風邪薬をハンドバッグにしまうと私はとなり街の繁華街へと電車で出掛けたのだった。




「カンパーイ!!」

現在の18時30分、男女4人ずつ計8人でノリ子主催のK大学生との合コンが始まってしまった。途中で帰ることも可能だし、都道府県の風営法によってカラオケボックスでは高校生は22時以降は利用できない、つまり最悪そのときに帰宅すれば立花家の人も心配しないはずだ。

ママさんには、、20時ぐらいにギリギリ連絡を入れれば〈公平〉への嫌がらせとしては十分だと思う。

「じゃあ早速、クジで席を決めたいとおもいま~す!」

パチパチパチ。

ノリ子は目を輝かせて大きく拍手して場を盛り上げる。私を除いた大学生の男性陣、そして女子高の女性人は和気藹々として室内の雰囲気が良い、良く言えば盛り上がっている。

「ちょっとごめんね~、君の隣なんだ。ちょっとだけ、詰めてくれないかな。」

「は、、はい!すいません。」

私は席の中央になりドアから一番遠い席になる、これで途中で帰る事が少し難しくなってしまった。隣に座ったのはワイシャツとチノパンを着た、少し真面目そうな大学生だった。

「君、凄く可愛いね。芸能事務所スカウトとかされたことない?絶対あるよね、名前は何て言うのかな?」

「篠原夢見です。」

反対からも声を掛けられる。軟派そうな人で頭の金髪坊主が特徴的だ。

「レベルタケーよ夢見ちゃん。いやマジで。彼氏いるの?別れたの?だからここに来たんだよね?」

「あははっ、、」

笑ってごまかすしかない。皆のこの良い雰囲気を壊しては駄目だ。来なければ良かった、男性陣の距離が物凄く近いし、香水の匂いがキツイ。

「私、歌っちゃうよー!」

先陣をきるノリ子は立ち上がり、マイクを掲げる!ノリ子の歌唱力は高い。流れるイントロはノリ子が何度もカラオケ採点で100点を採った女性アイドルグループの十八番の歌だ。きっと男性陣もノリ子の歌で、皆ノリ子を放っては置けないハズだ。

ノリ子の軽いマイクパフォーマンスと歌声、周りは盛り上がるが私の隣の二人は違った。軟派な男性が私に耳打ちをする。

「あの娘さ、カラオケに必死じゃねー。チョーウケねー、夢見ちゃん?」

「あははっそうでしょうか。〈例え遊び〉だって、他が見えないぐらい一生懸命な人は格好いいと思いますよ。」

「、、、。」

軟派な男性は押し黙り、それを聞いていたのか反対側の真面目な男性が私に声を掛ける。

「ごめんね、コイツ口悪くてさ。歌ってる彼女凄く素敵だよね。彼女ならきっとイイ人見つかるねー、間違いないよ。」

「ですよね。」

「僕も結構歌上手いんだよね。夢見ちゃんは音楽詳しいの?」

「それなりには。」

当たり障りの無い会話を続けなから、店員の人が注文したの飲み物を持ってくる。ノリ子の得点は満点では無かったけど、席について飲み物に手を伸ばす。

「おあ!っとノリ子ちゃんと夢見ちゃんはオレンジジュースだよね。はいコレ、ノリ子ちゃんの。」

「有難うございます☆」

男性陣の幹事の人がそれぞれの人に飲み物を配る。手慣れていて何度もやっている印象を受けたけど、世話好な人だなと感心した。

「皆ぁ、ここドリンクバー無いけど、飲み物と食べ物は全部俺達の奢りだからジャンジャン食べて飲んでね~!」

〈少し変わった味のオレンジジュース〉を飲んみながら皆がが歌うのを楽しむ。あまり歌うのは好きじゃないけど、皆が楽しんでいる光景を見るのは好きだ。

「夢見ちゃん~、ジャンジャン飲んで!タベテね!」

「は、、はい!」

兎に角、その場を凌ぐために細々食べて飲む。気のせいだと思うけど、舐めるように私を見る少し真面目な大学生は私の付けているアクセサリーに気が付いた。

「変わったアクセサリーだね。それ、どこで売ってたの?」

「友達からの貰い物で南米で売られていたらしいです。なんでも〈願いが叶う〉アクセサリーとか。」

「へー、ちょっと見せてくれない?」

私は頷くとアクセサリーを外して男性に渡す、興味を持っているのかそれをもって間近で見て調べる。

「外側は金属で中に石が入っているのか、軽石よりは密度がありそうだけど。ふーん、匂いは、、」

持っていたものの匂いを嗅がれるのは少し恥ずかしい、三度匂いを嗅ぐと鼻をアクセサリーから離す。

「、、うーん。特に匂いもないね。じゃあ僕も願い事してみようかな?いいかい?」

「えっ、はい。」

大学生は目を閉じて暫く〈何か〉を願っている。そしてお願いが終わったのか、私にアクセサリーを渡す。とても真剣に願っていたので〈何をお願いしたのか〉少し気になった。

「何をお願いしたんですか?」

「両思いになれます様にってさ。どう夢見ちゃん?」

片目を瞑って何故か笑う大学生。この真面目な大学生は好きな女性がいるみたいだ。もしかしたら〈私の様〉に付き合いで参加したのかもしれない。

「へー、両思いになれると良いですね。」

「、、、。」

それを聞くと何故か真面目な大学生も黙ってしまう。軟派な大学生は私に詰め寄る。

「もうー夢見ちゃん!ノリワリーヨ!これジュース飲んじゃて!ジャンジャン!!皆もー!!」

皆も私の乗りが悪いと感じているのか煽る、すいません飲みます。その勢いに押され兎に角〈ジュース〉だけでも大量に飲む事になった。

ジュースを大量な飲んだ所為か胃が物凄く熱い。

変わったジュースだー。

かわっ、、た、、じゅ、、う、、。


ーーーー。

気が付くと部屋の中にはノリ子や友達はいなくなっていて、部屋の外の廊下で真面目な大学生と軟派な大学生が何やら話し合っている。

「あれ、、れ?」

もつれる足をなんとか動かしてドアに張り付く。微かに話し声が聞こえた。

「、、けんな、、おれが、、つ、、」

「今回は、、お、、おま、、ば、、り、、おれ、、楽しませろ。か、、た、、金は、、。」

「、、くそっ、、ん?!」

二人は部屋の中、ドアに張り付いている私に気が付いた。慌てて、軟派な大学生は真面目な大学生が差し出したお金を取ると急いで何処かに行ってしまった。

「ゆ、、夢見ちゃん?」

部屋に入るのだろうか、私はよろめきながら後ろのファーに倒れ込む。ゆっくりドアを開けて入ってくる真面目な大学生は私の顔を覗く。

「だっ、大丈夫?」

「はい~。あの~みんなは~?」

「21時過ぎに別々に帰したよ、遅いからね。」

21時、、21時!!私は慌てて携帯電話の時計をチェックする。22時直前だった。青ざめる私。どうしよう!!連絡もしてないし、私は混乱する。携帯、携帯は??

「ありゃ、けいたい~ない~?」

「携帯?無いの?」

「はい~、ひっく、、ママさんにれんらく~しないと~。」

「分かった。じゃあ会計をして外で〈電話box〉を一緒の探そう。たしか裏道に確かあった気がする。」

「あ~、ありがとう~ございます~。」

この〈真面目な大学生〉は携帯電話を他人に貸したくない人のようだった。確かに私もちょっとだけ抵抗感がある。それに無くしたのは自分の不注意なので仕方がない。

私は会計を終えた、大学生に体を支えられながら真夜中の歓楽街を歩くのだった。
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