俺、異世界王子と政略結婚します。

あかべこ

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第8話

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サルドビアに一歩降り立った時、俺の知らない風の匂いがした。
石造りの西洋風城郭の広い廊下には数人の侍女・執事が俺と高梁さん、そして挙式の手伝いに来た日本政府関係者を待ってくれており「お待ちしておりました」と声がかかる。
「お荷物お持ち致しますね」
「どうも、ところでアドルフ王子は?」
「殿下は本日終日ご公務でございます」
そう言われてしまえば俺は何も言う気にはならない。
今日は結婚式のリハーサルがあるというのに一日中公務とは、王子も楽な稼業ではないらしい。
荷物を持って行かれて手ぶらになった俺は従者の人たちに連れられ、俺はサルドビア王家が用意した部屋で挙式の日に着る衣類の試着へと放り込まれた。
結婚式の衣装は正絹の黒い紋付袴で、光の具合によって七宝模様の浮かび上がる美しい着物だった。
もちろんサルドビアに紋付袴などなく、サルドビアと日本の繋がりを見せつける為に政府が用意した特別な紋付袴である。
日本から同行してくれた着付け師は「よくお似合いですよ」と褒めてくれ、サルドビア側の関係者は初めて見る異世界の正装に目を見張った。
そして挙式会場となる王室御用達の教会へと連れて行かれると早速リハーサルが行われた。
成人式の記念写真以来に着る紋付袴で動き回るのは中々キツイものがあったが、同じ日に挙式を上げる高梁さんが角隠しと白無垢の重さに息を荒げているのを見ると今更どうこう言うわけに行かない。
(ドレスやタキシードでも着慣れない事には変わらないんだけどな)
いかんせんこの結婚式は政治パフォーマンス的な意味合いがありすぎて、挙式の時こちらの世界にも存在する(厳密には微妙に違うらしいが)タキシードを着ると挙式に参列するサルドビア貴族や近隣諸国に日本がサルドビアに従うような印象を与えかねない……と父に力説されてしまえば逆らう気にはなれない。
日本から史上初の異世界王家と日本人の挙式を中継するために公共放送も入ると言うし、この慣れない紋付袴での挙式は受け入れるほか無かった。
そうして挙式リハーサルは日暮れまで続いた。

******

結婚式当日は、よく晴れた澄んだ青空の中に春の草花の香りが混ざる心地のいい日だった。
式典用の馬車の戸が開くとアドルフ王子に誘導され、ゆっくりと馬車を降りる。
サルドビアとその近隣からお祝いに駆けつけた人々の中をゆっくりと歩いて教会へと入り、その3歩後ろにはアリシア王女と高梁さんが並んで歩く気配がある。
教会の中は七色の光が雨のように降り注ぎ、国内外がら駆けつけた各国要人が所狭しと居並ぶ。
そして10メートルはあろうかという創造神の像の前に俺たちと、アリシア・高梁さんカップルが並び立った。
先に誓いの言葉を述べるのはアリシア王女と高梁さんだ。
「「私達は命尽きるその日まで互いに助け合い、病める夜も貧しき朝もともに寝起きし、とこしえの愛を捧ぐことを創造神の名の下に誓います」」
息ぴったりに誓いの言葉を捧げると神像からアリシア王女と高梁さんに紅白の薔薇の花びらがハラハラと降り注ぎ、会場中から祝福の拍手が降り注ぐ。
これはこの世界の創造神によってこの結婚が認められたという証拠であり、神像の前でこの誓いの言葉を捧ぐと不正(相手への嘘や不倫浮気など)がない限りは必ず薔薇の花びらが降り注ぐのだそうだ。
(聞いてたけどどういう仕組みなんだろうな、これ……)
まあ魔法で異世界人が日本語吹き替えで話す世界なので、どうこう言っても仕方ない。
次は俺とアドルフ王子の番だ。
「わた「私達は、」
声を出すタイミングが微妙にずれてしまったので仕切り直して、無事誓いの言葉を述べると同じく紅白の薔薇が降り注ぐ。
紅白のバラと祝福の拍手が降り注ぐなか、俺たちは結婚のキスを交わした。
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