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Lesson3 煌めく夜に奪われた唇
しおりを挟むシャンデリアが眩しく輝き、店内はシャンパンの泡と香水の匂いが入り混じって、夜の魔法に包まれていた。
賑やかな店内には耳をつんざくようなホストの声が響き渡る。
「狙いうち!入りまーす!」
レオさんのVIP席からは、150万のシャンパンが一瞬で開けられていた。
隣のリュウさんの席でも、100万のボトルで並んでいる。
凄い………。
煌びやかな照明の下、二人は笑みを浮かべて乾杯していた。
女社長の隣のリュウさんは落ち着いた笑顔でグラスを傾ける。
「あなたのためなら、いつでも」――甘く低い声に女性は酔いしれている。
一方のレオさんは、風俗嬢のテーブルで豪快に笑いながら肩を抱き、シャンパンを掲げていた。
「やっぱすごいな。マリンちゃんがいると派手で最高に楽しいよ。愛してる」
その王様みたいな存在感に、フロア全体が飲み込まれていく。
(……すごい。あれがNo.1とNo.2の席……)
遠目で見ているだけで、眩しさに胸がいっぱいになる。
そんな時――。
「はい、みのるくんにシャンパンね!」
美奈子さんが笑顔でボトルを差し出した。
「え、えっ……! 嬉しい!美奈子さんありがとうございます!」
15万円のシャンパン。入ったばかり新人にとっては信じられない額だ。
「よ、みのる! やるじゃん!」
周りのホストたちに背中を叩かれ、思わず「はいっ!」と声を張る。
その後、キャバ嬢二人組が来た。
みのるは挨拶にいくー
化粧の濃いキャバ嬢のひとりが、いきなりみのるの腕に手を回してきた。
「ねぇ、可愛い~!ほんと子犬みたい!」
もう一人は顔を近づけてきて、酒で潤んだ瞳でにやりと笑う。
「めちゃくちゃタイプ。ね、キスしていい?」
「えっ……ちょ、待って!」
言い切る前に、唇に柔らかい感触が押し付けられた。チュー。
一瞬、頭が真っ白になる。
(……うそ……だろ……)
一瞬青ざめた……
キャバ嬢たちは「やっぱ可愛い!」と楽しげに笑っている。
必死に笑顔を貼り付けるみのるだったが、手が震え、グラスを一気飲み。
その時――。
「おーい、みのる。3番テーブル呼んでるぞ」
通りがかったリツが、空気を察したように声をかける。
「ごめんね、ちょっと行ってくるね」
みのるは立ち上がり、逃げるように席を離れた。
フロアを離れ、バックヤードへ駆け込んだ。
「……マジ最悪だ……なんで、いきなり……」
蛇口をひねり、水で口をすすぐ。
冷たい水で冷やしても、焼けつくような嫌悪感は消えない。
その時ー
バックヤード。
レオは替えのiQOSを取りに来ただけ……なのに
ふと視線が吸い寄せられた。
蛇口の水音が聞こえた。
みのるが唇を真っ赤にして何度も洗っている。
(……どうしたんだ、あいつ)
鏡越しで見えた姿は、濡れた頬、潤んだ瞳、小さく噛み締めた唇。
その無防備な姿を見た瞬間、心臓を鷲掴みにされた。
(……なんだよこれ。……は?可愛すぎんだろ)
気づけば足が勝手に近づいていた。
「おい、どうした?洗いすぎだろ」
声が掠れ、誤魔化すように口角を上げる。
「……レオさん、お客さんに、いきなりキスされちゃって……」
震える声で告げるみのるは、唇を手で覆ったまま俯いている。
俺はその手を掴み、そっと引き剥がした。
濡れた唇に指先が触れる。
ひやりとした感触に、自分の呼吸が止まった。
(……やば。俺、なにしてんだ)
それでも、唇から目が離せない。
「……フッ、仕方ねぇな」
余裕の笑みを浮かべ、低く囁きながら顔を寄せる。
「俺が塗り替えてやる」
次の瞬間、唇を奪った。
みのる「……っ!」
驚いた瞳が大きく開かれ、すぐにぎゅっと閉じられる。
(遊びだ……遊びなんだから……そうだろ?)
一瞬で終わらせるつもりが、離れられなかった。
また重ねる。また奪う。
深く、さらに深く――。
唇を離した時、みのるの頬は熱に染まり、潤んだ瞳が自分だけを映していた。
「……これで上書き完了だ。もう気にするな」
苦笑しながら囁き、くしゃっと頭を撫でる。
「それと……今のこと、誰にも言うなよ」
低く甘い声で釘を刺し、余裕の笑みを浮かべて踵を返す。
けれど背を向けた瞬間、胸の奥がざわついた。
(……ヤバい。なんだ。俺おかしいぞ……俺……)
煌めく喧騒が響くフロアへ戻る足取りは、やけに重く感じられた。
――残されたみのる。
去っていく背中を、呆然と見つめる。
(え……え!? なに今の……)
頬に残る熱。唇に残る感触。
思わず自分の口元に指を当てる。
(やばい……なに?… かっこよすぎて……)
胸がどくどくと波打ち、顔が赤くなっていく。
鏡に映った自分の表情に、みのるは驚いた。
(……僕……完全に撃ち抜かれてる……)
なのに――。
(でも、レオさんはNo.1。きっと遊びなんだ……)
そう思おうとするほど、胸の奥が苦しくなる。
唇を押さえた指先が震えていた。
(遊びでも……もう、止められない……)
Lesson4へ続く
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