指名は君だけー高層の夜に堕ちる

氷月

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Lesson 16 新しい風、マサキ

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店内には明るい風が吹いていた。

マサキが軽く手を上げる。

「おはようや、みのる!」

「おはようございます!」

無邪気に返すみのる。

「なぁ、みのる。お前、あいつらに嫌がらせされてるん?」

赤い吊り目が、ふと鋭さを帯びる。

「うーん……わからない。なんか、ずっと執着っていうか……」

曖昧に笑うみのる。

「そか。気にすんな。この世界はさ、嫉妬がつきもんやで。しゃーない。」

マサキが軽く笑って肩をすくめる。

「うん、ありがとう」

その言葉に少し救われたように、みのるも笑った。

――二人のやり取りを、シュウがじっと見ていた。
(……気になる。俺も仲良くなりたい……)


「なに、マサキばかり見てんだ?」

リュウがからかうように肘でつつく。

「おまえ、まさか……」

「ち、違うって! あの猫みたいな目が気になるんだよ!」

必死に否定するシュウに、リュウは口元を吊り上げる。

「へぇ~」

そこへ低い声が割り込む。

「みのる、こっち来い」

レオだ。

「??」首をかしげるみのるを腕で引き寄せる。

「……お前は俺のだ。可愛い笑顔見せんな」

嫉妬と独占の気配を隠そうともしない。

「……わかった」

みのるは苦笑いで返すが、その頬は赤かった。

その夜の店内は落ち着いた空気。

年齢層の高いセレブ客が多く、上品な笑い声が響いていた。

レオは相変わらずVIP席に呼ばれ、リュウもシュウも指名で飛び回っている。

みのるも新規の客に呼ばれ、忙しく動いていた。

マサキもまた指名が入り、タバコを取りに控え室へ向かう。

そこにいたのはケン。

ソファにふんぞり返り、スマホ片手に姫へ営業メールを打っていた。

マサキはロッカーからタバコを取り出し、そのまま出ようとした時――

ドアが開き、トシが入ってきた。

「しかし、みのるムカつくわ! 俺の客だぞ? あいつ見た瞬間、『この可愛い子がいい、チェンジ!』って言われたんだよ!」

「はぁ? 仕返ししてやっか? 腹たつわな」

ケンが口を歪め、卑屈に笑う。

その瞬間――

ダンッ!!

ロッカーが蹴り飛ばされ、大きな音が響いた。

マサキが足を下ろし、ケンを壁に押しつけていた。

吊り目の瞳が鋭く光り、静かな怒気が漂う。

「……おい、おまえ…どこまで根性腐ってんだ?」

低い声が控え室を震わせる。

ケンが青ざめて、声を裏返す。

「な、なんだよ……」

「ちげぇよ、レオを……!」言い訳を始めたその瞬間――

「おい、女々しいんだよ」
マサキの声が鋭く切った。

「てか、おまえら二人でくっつけば?悪口言いたい同士や……お似合いや」
微笑で冷ややかに笑う。

「い、一緒にするな!」ケンが顔を真っ赤にする。

「はっ。おまえ、鏡で今の惨めな腐った顔見てみろ」

冷酷な言葉にケンは涙目になり、声を失った。

最後に吐き捨てるように言う。

「先輩なら、後輩虐めんな。次虐めたら、俺が許さへんで!」

その一言はヤンキーの怒鳴り声ではなく、心の底からの真剣さだった。

ケンもトシも言い返せず、ただ沈黙するしかなかった。

マサキはタバコを手に、乱れた空気を置き去りにして控え室を出ていった。

廊下でちょうどシュウとすれ違う。

「マサキ!」

「ん?」

「お前……かっこいい!」

思わず口に出てしまった。

マサキは鼻を鳴らす。

「みのる可愛いからな。虐めてるアイツら、頭きただけや」

「……みのるはレオ様のだからな?」

シュウが真顔で釘を刺す。

「わかってる。あんなイケメンから取らねぇよ」

マサキは軽く笑い、肩をすくめる。

(……やばい。この笑顔、反則だろ)

シュウの胸が不意に熱を帯びる。

「今日終わったら、飲みに行かない?」

口をついて出た言葉に、マサキが目を丸くする。

「……いきなり? 初見で? 変なやつやな……まぁ、ええけど」

不思議そうに笑いながら歩き出す。

その背中を、シュウは息を呑んで見送った。

次へ続く
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