20 / 38
Lesson 16 新しい風、マサキ
しおりを挟む店内には明るい風が吹いていた。
マサキが軽く手を上げる。
「おはようや、みのる!」
「おはようございます!」
無邪気に返すみのる。
「なぁ、みのる。お前、あいつらに嫌がらせされてるん?」
赤い吊り目が、ふと鋭さを帯びる。
「うーん……わからない。なんか、ずっと執着っていうか……」
曖昧に笑うみのる。
「そか。気にすんな。この世界はさ、嫉妬がつきもんやで。しゃーない。」
マサキが軽く笑って肩をすくめる。
「うん、ありがとう」
その言葉に少し救われたように、みのるも笑った。
――二人のやり取りを、シュウがじっと見ていた。
(……気になる。俺も仲良くなりたい……)
「なに、マサキばかり見てんだ?」
リュウがからかうように肘でつつく。
「おまえ、まさか……」
「ち、違うって! あの猫みたいな目が気になるんだよ!」
必死に否定するシュウに、リュウは口元を吊り上げる。
「へぇ~」
そこへ低い声が割り込む。
「みのる、こっち来い」
レオだ。
「??」首をかしげるみのるを腕で引き寄せる。
「……お前は俺のだ。可愛い笑顔見せんな」
嫉妬と独占の気配を隠そうともしない。
「……わかった」
みのるは苦笑いで返すが、その頬は赤かった。
その夜の店内は落ち着いた空気。
年齢層の高いセレブ客が多く、上品な笑い声が響いていた。
レオは相変わらずVIP席に呼ばれ、リュウもシュウも指名で飛び回っている。
みのるも新規の客に呼ばれ、忙しく動いていた。
マサキもまた指名が入り、タバコを取りに控え室へ向かう。
そこにいたのはケン。
ソファにふんぞり返り、スマホ片手に姫へ営業メールを打っていた。
マサキはロッカーからタバコを取り出し、そのまま出ようとした時――
ドアが開き、トシが入ってきた。
「しかし、みのるムカつくわ! 俺の客だぞ? あいつ見た瞬間、『この可愛い子がいい、チェンジ!』って言われたんだよ!」
「はぁ? 仕返ししてやっか? 腹たつわな」
ケンが口を歪め、卑屈に笑う。
その瞬間――
ダンッ!!
ロッカーが蹴り飛ばされ、大きな音が響いた。
マサキが足を下ろし、ケンを壁に押しつけていた。
吊り目の瞳が鋭く光り、静かな怒気が漂う。
「……おい、おまえ…どこまで根性腐ってんだ?」
低い声が控え室を震わせる。
ケンが青ざめて、声を裏返す。
「な、なんだよ……」
「ちげぇよ、レオを……!」言い訳を始めたその瞬間――
「おい、女々しいんだよ」
マサキの声が鋭く切った。
「てか、おまえら二人でくっつけば?悪口言いたい同士や……お似合いや」
微笑で冷ややかに笑う。
「い、一緒にするな!」ケンが顔を真っ赤にする。
「はっ。おまえ、鏡で今の惨めな腐った顔見てみろ」
冷酷な言葉にケンは涙目になり、声を失った。
最後に吐き捨てるように言う。
「先輩なら、後輩虐めんな。次虐めたら、俺が許さへんで!」
その一言はヤンキーの怒鳴り声ではなく、心の底からの真剣さだった。
ケンもトシも言い返せず、ただ沈黙するしかなかった。
マサキはタバコを手に、乱れた空気を置き去りにして控え室を出ていった。
廊下でちょうどシュウとすれ違う。
「マサキ!」
「ん?」
「お前……かっこいい!」
思わず口に出てしまった。
マサキは鼻を鳴らす。
「みのる可愛いからな。虐めてるアイツら、頭きただけや」
「……みのるはレオ様のだからな?」
シュウが真顔で釘を刺す。
「わかってる。あんなイケメンから取らねぇよ」
マサキは軽く笑い、肩をすくめる。
(……やばい。この笑顔、反則だろ)
シュウの胸が不意に熱を帯びる。
「今日終わったら、飲みに行かない?」
口をついて出た言葉に、マサキが目を丸くする。
「……いきなり? 初見で? 変なやつやな……まぁ、ええけど」
不思議そうに笑いながら歩き出す。
その背中を、シュウは息を呑んで見送った。
次へ続く
0
あなたにおすすめの小説
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!
なつか
BL
≪登場人物≫
七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。
佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。
田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。
≪あらすじ≫
α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。
そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。
運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。
二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる