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Lesson 4 特別な装い、特別な想い
しおりを挟むそして成人お祝い前日ー
朝の支度を終え、二人はマンションの駐車場へ。
ユウヤがシートベルトをカチリと締め、ハンドルを握る。
窓の外には、港町の空気が混じる景色。
高層ビルの隙間からチラリと海が見えたり、街路樹に覆われた並木道が続いたり。
「……やっぱ、この辺りっていいよな。静かで落ち着いてるのに、ちょっと走れば賑やかな街にも出られる」
ユウヤが何気なく言うと、ハルは嬉しそうに頷いた。
やがて道は開け、ショッピングモールのガラス張りの建物や、港沿いのカフェが並ぶ街並みに入る。
大通りには洒落たブティックやセレクトショップが立ち並び、週末らしく人も多い。
海風に混じって甘い焼き菓子の匂いが漂い、ハルは窓の外に視線を奪われていた。
「わぁ……久しぶりのお出かけ、なんかワクワクするね」
ハルの声に、ユウヤは片手でハンドルを回しながら、隣をチラリと見やる。
「ふっ……お前が楽しそうやと、俺も気分ええわ」
車はゆっくりと目的地へと進んでいった。
港沿いを抜け、車を駐車スペースに停める。
潮の香りを残した風が吹き抜ける中、二人は少し歩き出した。
「ね、どこ行くの?」
隣で不思議そうに見上げるハル。
ユウヤは片手をポケットに入れ、軽い足取りで前を歩く。
「ここやよ。スーツや特別な服は、俺はいつもここって決めてんねん」
指さした先には、重厚なガラス張りのファサード。
大人びた雰囲気を漂わせるブランドショップが静かに佇んでいた。
「……っ」ハルは息を呑む。
ユウヤの世界にまた一歩、足を踏み入れたような気がして、胸の奥が高鳴った。
ドアを開けると、白を基調にした清潔感あふれる店内。
柔らかな間接照明がガラスに反射し、整然と並ぶ服が宝石のように輝いていた。
「御影様、いらっしゃいませ」
深く一礼する店員の声に、ハルは思わず立ち止まる。
「……え?」
ユウヤは慣れた様子で軽く頷き、片手でハルの肩を抱き寄せる。
「今日はこの子に似合う服を探しにきたんや」
「あら、素敵なお連れ様ですね」
店員の目が、驚きと微笑みを混ぜながらハルを捉える。
頬を赤らめたハルは、ユウヤに寄り添うようにして小さく頭を下げた。
白い空間の中、ユウヤは淡いブルーのリネンシャツに白の細身パンツという涼しげな装いだった。
腕まくりから覗く手首の時計が光り、ラフなのに洗練された雰囲気を放っている。
その瞬間、ハルは「本当に自分は特別な場所に連れてこられたんだ」と胸が熱くなるのを感じていた。
ラックに並ぶ服の中から、店員がそっと取り出したのは、上品なグレーのブラウス。
胸元や袖にレースがあしらわれていて、光を受けると柔らかに透ける。
「こちらはいかがでしょう? 白のパンツと合わせると、とても映えますよ」
試着室から現れたハルは、思わず頬を赤くした。
「ど、どうかな……?」
その姿を目にした瞬間、ユウヤの時間が止まった。
シャンデリアの光がハルを包み込み、少年の面影は消え、眩しいほど大人びた姿がそこにあった。
息を呑み、思わず零れる。
「……反則や。ほんま、俺だけのもんにしたいくらいや」
低く掠れた声で囁きながら、視線は一切外れない。
まるで世界に存在する光と影、すべてがハルに吸い寄せられていくようだった。
その眼差しにハルは居心地悪そうに笑うが、心臓は高鳴るばかり。
「とてもお似合いです!素敵ですね」
店員も感嘆の声を上げる。
ユウヤは迷いもなく「これ、買います」と即答した。
ハルが慌てて「えっ、そんなすぐ……」と声をあげるより早く、カードが差し出されていた。
──買い物を終え、二人はみなとみらいの遊歩道へ。
海風を受けながら、自然と指先が絡む。
「ユウヤ、今日ありがとう。……すごく嬉しいよ」
ハルの笑顔に、ユウヤは横顔を見つめ、ふっと笑った。
「ハルは俺のもんや。可愛い格好は、俺にだけ見せろ」
独占欲を隠さない声に、ハルはまた頬を赤くした。
みなとみらいの夜景に光る巨大な観覧車。
「ユウヤ、乗りたい!」
ハルが目を輝かせて指差すと、ユウヤは思わず笑った。
「……しゃあないな。せっかくやし、乗るか」
ゴンドラの扉が閉まり、二人だけの空間。
ゆっくりと上昇していくと、窓の外に広がる港の光が宝石みたいに瞬いていた。
ハルは窓に顔を寄せて「きれい……」と呟く。
その横顔に見惚れながら、ユウヤはそっと額にキスを落とした。
「……ハル、大好きや」
驚いて振り向いたハルを、そのまま抱きしめる。
狭いゴンドラの中、互いの温もりが重なり合い、自然と唇が触れる。
一度触れただけでは足りず、もう一度、今度は深く。
「……っ、ユウヤ……」
ハルの声が震えても、ユウヤは離さない。
「大好きや。何回でも言う。……お前も、俺だけに言え」
「……うん。大好き」
観覧車の頂上で交わしたキスは、夜景よりも眩しく、永遠を約束するように甘かった。
Lesson 4 終わり
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