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Lesson 16 高原の風に包まれて
しおりを挟む軽井沢の澄んだ空気の中、緑に囲まれた別荘地。
悠哉の愛車のレクサスがゆっくりと石畳の駐車場に入ると、助手席のハルは窓を開けて思わず声をあげた。
「わぁ……すごーい!素敵すぎる~!」
その無邪気な声に、ユウヤはたまらず片手でハルの頭をわしゃわしゃ撫でた。
「可愛すぎやろ。テンション上がりすぎや、俺の子猫」
「猫?!」
車を降りると、ちょうど田中と楓がステーションワゴンで到着。
ハルが小さく頭を下げた。
「ユウヤがお世話になっています。ハルです。はじめまして」
その仕草はどこか奥さんじみていて、ユウヤは横でキラキラと目を細めていた。
次々に車が滑り込む。
奏真と飛鳥のミニクーパー、まこと姉のスポーツカーがマフラー音を轟かせて現れると、場の空気は一気に華やぐ。
そして最後にSUVから降り立ったレン。
「ひゃっ……」
楓が思わず両手で顔を隠し、瞳をキラキラさせながら小声で叫んだ。
「……やばい、本物だ……」
そんな楓とハルが並ぶ姿は、まるで子猫と仔犬。
田中がぽつりと呟く。
「……絵になるな。子猫と仔犬って感じだ」
ユウヤはニヤリと笑い、腕を組んで堂々と立つ。
「せやろ?けど俺だけのハルは、誰が見ても一番可愛いんや」
その独占丸出しの言葉に、ハルは顔を真っ赤にする。
レンはそんなふたりを横目に見ながら、目の前の楓に視線を止めた。
「……なんだ、この生き物は」
仔犬みたいにきょとんと見上げる楓に、ほんの一瞬、尻尾が見えた気がした。
一方のまこと姉は腕を広げて歓声をあげる。
「イケメンに囲まれて、なにここパラダイス? あ、田中さんは違ったわ」
田中が慌てて胸を張る。
「お、俺は中身がイケメンだからな!」
奏真と飛鳥は並んで立ち、凛々しいシルエットを描いていた。
奏真が横に立つ飛鳥へちらりと目をやり、口元を緩めた。
「……楽しくなりそうやな、飛鳥」
低く落ち着いた声に、飛鳥は眼鏡の奥で小さく笑みを返す。
「……ああ。たまにはこういうのも悪くない」
そのやりとりを遠目に見ていたマコト姉が、にやりと笑った。
「あら~、なんて素敵なペアなの。まるで雑誌の表紙みたいじゃない」
二人は気恥ずかしそうに視線を逸らしたが、並ぶ姿はやっぱり絵になっていた。
ハルは玄関を入った瞬間、声を弾ませた。
「わぁ……広い~!素敵!綺麗!」
悠哉は嬉しそうに目を細め、手をポケットに突っ込みながら答える。
「月イチでお手伝いさんが掃除してくれてんねん。シーツも新しいのに替えといたで」
リビングの奥、窓から緑がのぞく別荘は開放感たっぷり。
「部屋はみんな好きに決めてええよ。俺とハルは……こっちの部屋やな」
当然のように宣言し、ハルの肩を抱き寄せる。
奏真はさりげなく視線を飛鳥に向け、少し笑ってみせた。
「俺らは……角部屋でええか?」
「……う、うん」
飛鳥は一瞬ドキッとし、眼鏡の奥で耳まで赤くなる。
レンは無言のまま壁にもたれ、目だけが楓と合う。
……沈黙。
楓もなぜか無言で返す。気まずい空気が流れた。
「……で、俺は誰となんだ?」
田中が首を傾げて見回すと、マコト姉がニヤリと笑う。
「決まってるでしょ? あたしと! 広い部屋で朝まで飲み明かすのよ!」
「お、おう……まあいいか。肝臓が心配やけどな!」
そんな中、楓が小さな声で切り出す。
「……あの……僕はレンさんとでいいですか?」
顔を真っ赤にして、指先をいじりながら。
レンはわずかに目を瞬かせ、耳の奥が熱くなるのを誤魔化すように咳払いした。
「……あ、おぅ」
どこかユーモラスで、どこか胸がざわつく部屋割りが決まっていった。
部屋を決め終えて、みんながリビングに集まった頃。
そこへタイミングを計ったように執事のジイヤが現れる。
「悠哉様、奏真様。こちらはお父上からの差し入れでございます」
運び込まれた木箱には、見事な霜降り肉が並んでいた。
「わぁ……すごい……!」
ハルが感嘆の声を上げると、周囲からも思わず拍手が起きる。
悠哉はハルの肩を抱き寄せながら、にやりと笑った。
「せや、野菜は俺とハルで買い足してくるわ」
そのやりとりを横で聞いていた田中が、ぽつりと呟く。
「……ハルちゃん、玉の輿やな」
「待って。まだユウヤ様だけじゃないわよ?」
マコト姉がちゃっかり口を挟む。
「ソウマ様だっているんだから!」
奏真は咳払いをしてグラスの水を口に運び、わざとらしく視線を逸らした。
一方その頃。
レンは火起こしの炭を軽やかに並べている。
白いシャツの袖をまくり上げた姿は、モデルらしい涼しい顔立ちと無駄のない動作で、周囲の視線をさらっていた。
隣で手伝っていた楓は、思わず手を止めて見惚れる。
心臓の音が大きく響いて、両手で顔を隠しながら小さくつぶやいた。
「……カッコよすぎる……」
レンは気づいてないふりをして、唇の端をわずかに上げる。
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