大人になっても、恋は止まらない。──独占と余裕のあいだで

氷月

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Lesson18.5 甘やかな支配 ―声を塞いで愛す夜―

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部屋に入るなり、

ベッドに腰を下ろしたハルの頬を、ユウヤの指先がなぞった。

「……お前、ほんまに俺を狂わせよる」

低く落とされた声に、酔いで火照ったハルの瞳が揺れる。

「ちょ、ちょっと……今日は、だめだよ。みんなに……聞こえちゃう、みんないるよ?」

必死に制そうとする声ごと、悠哉は唇で塞いだ。

「……しっ、声、出すな。お前の可愛い声なんか……俺以外に聞かせるか」

熱を帯びた吐息が耳をかすめるたび、心臓が跳ねる。

「ユウヤ……いつもよりも酔ってる?」

震える問いに、ユウヤは笑みを深めた。

「……せやな。けど酒やない。俺は――お前に酔っとるんや」

深く見つめ合った瞬間、ハルは視線を逸らせなくなる。
漆黒の瞳に吸い込まれるようで、抵抗する言葉すら奪われた。

背中を抱き寄せられると、呼吸は浅く、かすかな吐息がもれ出す。

「……可愛い顔で震えるな。余計に欲しなるやろ」

いつもと違う――乱暴ではなく、けれど逃げ場のないほどの独占。
ユウヤの指先が、耳元から首筋から鎖骨とゆっくり辿り、ハルの体を包み込む。

外の廊下から笑い声が響く。
ハルは慌てて口を押さえようとするが、
その手さえ掴まれて頭上に絡め取られる。

「……ダメ。気にすんな。誰もお前の可愛い声に触れられへん。俺だけや」

「ー…ん……」


――その夜、ハルはいつもと違う“ドSなユウヤ”に、ただ翻弄されるしかなかった。


その頃ーレンとカエデ

タバコの火を指でねじ消し、レンは静かに部屋へ戻った。
すでにベッドの片側では、楓が小さな寝息を立てている。

レンはドアを閉めると、壁に背を預けてひとつ長い息を吐いた。

「……はぁ。ガキだと思ってたのに」

視線が自然と吸い寄せられる。
眠りに落ちた横顔――頬にかかる前髪、その隙間から覗く口元の小さなホクロ。
なぜか、それだけでやけに色っぽく見えてしまう。

(……なんで俺、こんなに気になるんだ)
胸の奥で、ふと切なさが疼いた。

伸ばした指先が、そっと楓の頬を撫でる。
柔らかな感触に、思わず息を止める。

「……おまえ可愛いな」

声に出した途端、カエデが薄く目を開けた。

「……レンさん?」
寝ぼけた瞳が、不安そうに揺れる。

レンは慌てて表情を整え、苦笑いを浮かべた。
「……起こしたか。悪ぃ。寝とけ」

軽く頭を撫でてやると、カエデは顔を赤らめて布団に潜り込む。
胸の高鳴りを隠すように、目を閉じる。

レンはその様子を見て、またひとつ深い息をついた。
「……あー、俺、どうすんだよ……」

眠れぬ夜が、静かに更けていった。


その頃ー奏真と飛鳥。

「大丈夫か?」

フラつく奏真の肩を支え、飛鳥はそのままベッドへと連れていった。

「んー……飲みすぎた……」

布団に倒れ込んだ奏真は、子どものように腕を広げる。

「アスカ……一緒寝よ?こっち来い」

半分夢の中でつぶやく声に、飛鳥は一瞬ためらいながらも、そっと頷いた。

奏真の伸ばした腕。その隙間に、静かに身を委ねる。

耳に届く規則正しい寝息に、安心するように目を閉じた。


――真夜中、午前三時。

ふと目を覚ました奏真は、腕の中に飛鳥がいることに気づいた。

(……マコト姉に言われた言葉……)
『ソウマ様を一番大切に思ってる人が近くにいたら、ソウマ様は嬉しいと思う?』

胸の奥で、じわりと何かが熱を帯びる。
小さくため息をついたソウマの目に映ったのは、眼鏡を外したアスカの素顔だった。

(……アスカ綺麗やな)
無防備に眠る横顔に、思わず手が伸びる。柔らかな髪を指先で撫で、そっと微笑む。

(近くにいるって……こういうことなんか)

奏真と飛鳥は、中学からずっと一緒にいた。
クラブ活動も放課後も、当たり前のように隣にいた。

飛鳥は早くから、自分の気持ちに気づいていた。けれど、壊したくなかった。
「親友」という形を失うくらいなら、胸の奥で燃える想いをずっとずっとそう押し殺したほうがいい。そう言い聞かせてきた。

そのまま腕枕を解かずに目を閉じた。
夜の静寂の中、ふたりの呼吸が重なっていく。


Lesson19へ続く




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