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Lesson 26 僕だけの贈り物
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夏休みが終わり、またいつもの大学生活が戻ってきた。
キャンパスのベンチやカフェテリアでは、進路を巡って悩む学生たちの声がちらほら聞こえてくる。
「ハルちゃん、迎えにきたよん。ランチ行きましょ!」
マコトが手を振りながら駆け寄ってくる。
「うん、今日は何食べる?」
「あたしはカツ丼よ!」
「おぉ。僕はナポリタンかな」
「もっと食べなさいよ!」
「あはは、普通でいいんだ」
トレイを並べて席に着き、2人はいつものように笑いながら食べ始める。
「ねぇ、ハルちゃん。バーベキューのときに確信したのよ!」
「え、なにを?」
「飛鳥くんっていたでしょ? あの子、奏真様が好きよ」
フォークを持つ手が一瞬止まる。
「……なんでわかったの?」
「わかるわよ、女の勘。恋してる顔してた。でもね、なんか寂しそうでもあった」
「じゃあ……奏くんは?」
「うーん、あれは“好き”っていうより、ただ一緒にいるだけって感じかしら」
「ふーーん……」ハルの胸の奥がざわつく。
マコトは少し笑って、声を潜める。
「だって奏真様には、もう好きな人いるんだもの」
「……誰?」
「ふふ、秘密。自分で考えなさいよ」
ハルは曖昧に笑うしかなかった。
ナポリタンの赤いソースを見つめながら、胸の中に小さな棘が刺さったように感じる。
「ね、進路どうするか決めた?」マコトが話題を変える。
「うーん……美術館で働くとか、キュレーターとか……秘書って道もあるし。まだ迷ってる」
「いいじゃない。私はアパレル業界に行くわよ」
「似合いそうだね」
笑い合う昼休み。けれど――奏真の名が出た瞬間に止まった鼓動の余韻は、まだ胸の奥に残っていた。
講義が終わり、ハルは人混みの駅へと歩いた。
スマホを開き、短い文章を打ち込む。
「少し帰り遅くなるかも。サークルが長引きそうです」
ほんの小さな嘘。
理由はただひとつ――悠哉の誕生日プレゼントを選ぶため。
電車に揺られながら胸の奥がじんわり熱くなる。
(喜んでくれるかな……似合うものを見つけたい)
銀座へ。
煌めく街並みの中、ブランドショップの扉を開けると、柔らかな香りと落ち着いた照明に包まれた。
「いらっしゃいませ」
声をかけてきた店員は、優しい笑顔でハルを迎える。
「大切な人へのプレゼントを探していて……」
少し照れながらも、まっすぐに伝えるハル。
店員も自然と微笑みを返した。
「でしたら、ベルトやネクタイなどはいかがでしょう?とても人気なんですよ」
「……ベルト、素敵ですよね。いいですね」
差し出された数点の中から、黒の上質な革ベルトを手に取る。
金具がシンプルで洗練されていて、ハルは思わず小さく笑った。
「これ……悠哉に、すごく似合いそうです」
ぽつりとこぼれた言葉に、店員は「きっと素敵になさいますよ」と頷く。
恥ずかしさで頬を赤らめながらも、堂々と顔を上げ、
「これにします。お願いします」
その笑顔に、店員は「素敵な贈り物ですね」と優しく声をかけた。
上品な包装紙で包まれた袋を受け取ったハルの胸は、期待と高鳴りでいっぱいだった。
「ありがとうございます」
ハルは小さく息を吐いた。
(誕生日に渡したら、どんな顔するんだろう……)
期待と緊張が入り混じり、鼓動は速まるばかりだった。
プレゼントを大事そうにバッグの中にしまい、銀座の街を歩きながらLINEを開く。
「……誕生日、どこか行きたいとこある?」
返ってきた悠哉のメッセージは短い。
『お前が決めろ。俺はどこでもええ。お前と一緒ならな』
(……ほんと、ずるいな。そんなこと言われたら)
画面を見つめながら、ハルは小さく笑った。
ふと頭に浮かんだのは、透き通る海と南国の青い空。
白い砂浜を二人で歩き、リゾートホテルのバルコニーから水平線を眺める光景を想像すると、胸がじんわり熱くなる。
「沖縄……行ってみたいな」
小さく呟き、ハルは迷いなく画面に指を走らせた。
Lesson 27へ続く
キャンパスのベンチやカフェテリアでは、進路を巡って悩む学生たちの声がちらほら聞こえてくる。
「ハルちゃん、迎えにきたよん。ランチ行きましょ!」
マコトが手を振りながら駆け寄ってくる。
「うん、今日は何食べる?」
「あたしはカツ丼よ!」
「おぉ。僕はナポリタンかな」
「もっと食べなさいよ!」
「あはは、普通でいいんだ」
トレイを並べて席に着き、2人はいつものように笑いながら食べ始める。
「ねぇ、ハルちゃん。バーベキューのときに確信したのよ!」
「え、なにを?」
「飛鳥くんっていたでしょ? あの子、奏真様が好きよ」
フォークを持つ手が一瞬止まる。
「……なんでわかったの?」
「わかるわよ、女の勘。恋してる顔してた。でもね、なんか寂しそうでもあった」
「じゃあ……奏くんは?」
「うーん、あれは“好き”っていうより、ただ一緒にいるだけって感じかしら」
「ふーーん……」ハルの胸の奥がざわつく。
マコトは少し笑って、声を潜める。
「だって奏真様には、もう好きな人いるんだもの」
「……誰?」
「ふふ、秘密。自分で考えなさいよ」
ハルは曖昧に笑うしかなかった。
ナポリタンの赤いソースを見つめながら、胸の中に小さな棘が刺さったように感じる。
「ね、進路どうするか決めた?」マコトが話題を変える。
「うーん……美術館で働くとか、キュレーターとか……秘書って道もあるし。まだ迷ってる」
「いいじゃない。私はアパレル業界に行くわよ」
「似合いそうだね」
笑い合う昼休み。けれど――奏真の名が出た瞬間に止まった鼓動の余韻は、まだ胸の奥に残っていた。
講義が終わり、ハルは人混みの駅へと歩いた。
スマホを開き、短い文章を打ち込む。
「少し帰り遅くなるかも。サークルが長引きそうです」
ほんの小さな嘘。
理由はただひとつ――悠哉の誕生日プレゼントを選ぶため。
電車に揺られながら胸の奥がじんわり熱くなる。
(喜んでくれるかな……似合うものを見つけたい)
銀座へ。
煌めく街並みの中、ブランドショップの扉を開けると、柔らかな香りと落ち着いた照明に包まれた。
「いらっしゃいませ」
声をかけてきた店員は、優しい笑顔でハルを迎える。
「大切な人へのプレゼントを探していて……」
少し照れながらも、まっすぐに伝えるハル。
店員も自然と微笑みを返した。
「でしたら、ベルトやネクタイなどはいかがでしょう?とても人気なんですよ」
「……ベルト、素敵ですよね。いいですね」
差し出された数点の中から、黒の上質な革ベルトを手に取る。
金具がシンプルで洗練されていて、ハルは思わず小さく笑った。
「これ……悠哉に、すごく似合いそうです」
ぽつりとこぼれた言葉に、店員は「きっと素敵になさいますよ」と頷く。
恥ずかしさで頬を赤らめながらも、堂々と顔を上げ、
「これにします。お願いします」
その笑顔に、店員は「素敵な贈り物ですね」と優しく声をかけた。
上品な包装紙で包まれた袋を受け取ったハルの胸は、期待と高鳴りでいっぱいだった。
「ありがとうございます」
ハルは小さく息を吐いた。
(誕生日に渡したら、どんな顔するんだろう……)
期待と緊張が入り混じり、鼓動は速まるばかりだった。
プレゼントを大事そうにバッグの中にしまい、銀座の街を歩きながらLINEを開く。
「……誕生日、どこか行きたいとこある?」
返ってきた悠哉のメッセージは短い。
『お前が決めろ。俺はどこでもええ。お前と一緒ならな』
(……ほんと、ずるいな。そんなこと言われたら)
画面を見つめながら、ハルは小さく笑った。
ふと頭に浮かんだのは、透き通る海と南国の青い空。
白い砂浜を二人で歩き、リゾートホテルのバルコニーから水平線を眺める光景を想像すると、胸がじんわり熱くなる。
「沖縄……行ってみたいな」
小さく呟き、ハルは迷いなく画面に指を走らせた。
Lesson 27へ続く
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