大人になっても、恋は止まらない。──独占と余裕のあいだで

氷月

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Lesson 29 空に描く、ふたりの明日

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まだ柔らかな光が差し込む部屋。

ハルは悠哉の腕枕の中で、眠そうに瞬きを繰り返していた。

指先が髪をそっと撫でて、低く甘い声が落ちる。

「……帰りたないな。ずっとこのまま、お前とここにおりたい」

胸がくすぐったくなるほどの独占の響き。

ハルは目を細め、微笑んで囁く。

「また来ようね、悠哉」

その笑顔に、悠哉は息を詰めて――ただ強く抱きしめた。

チェックアウトを終え、那覇空港へ。

南国の空を背にして、ふたりは東京へ帰る。

玄関にキャリーを置いた瞬間、ふたりして同時に「ふぅ……」と息をついた。

ソファに並んで腰を下ろし、ハルは体を伸ばしながらクスッと笑う。

「楽しかったなぁ……沖縄、ほんと幸せだった」

「ふふ、なんか夢みたいだね。海も星も……全部」

悠哉は横顔を見つめて、自然と目尻を下げる。

「お前が隣におったからや。ハルがおらんかったら、ただの出張や」

その言葉にハルは照れて笑いながらも、心臓が跳ねる。

少し間を置いて、悠哉がポンと膝を叩き、唐突に言った。

「よし、次は海外やな。来年のハルの誕生日は――ハワイや!」

「……えっ、ハワイ?!」

ハルは目を丸くして、それから嬉しそうに笑った。

「そんな……ありがとう。僕、幸せすぎる」

悠哉はその笑顔に耐えきれず、ゆっくりと顔を近づける。

ソファの背に追い込むようにして唇を重ね、深く深く溺れるほどのキス。

「……ハル。俺の幸せは、お前や」

「俺から逃げようなんて思うなよ。お前は、ずっと俺のもんやから」

息がかすかに震えるほどの独占の言葉に、ハルは目を潤ませながら頷く。

「……うん。悠哉のものだよ」

そしてまた、互いを確かめるように長いキスに溶けていった。

沖縄旅行から数日後。

夕暮れの都内スタジオ。撮影を終えたレンと悠哉は、控え室のソファで缶コーヒーを手にしていた。

「久しぶりにお前に撮ってもらえたな。やっぱ腕、さすがだな」

レンが笑うと、悠哉は肩を竦めて得意げに返す。

「だろ?専務やらされても腕は落ちへん」

「……専務、決定か?」

「あぁ。本社の勤務が増えてな。肩書きだけは立派やけど、堅苦しくて息詰まるわ」

苦笑する悠哉に、レンはニヤリと片眉を上げた。

「じゃあ発散や。今夜、久々に飲みに行こうぜ」

「ええよ。ハルには連絡しとくわ。《レンと飲んでくる》ってな」

――夜。

二人は都会の隠れ家バーへ足を運んだ。琥珀色のグラスを揺らしながら、レンが切り出す。

「……で?沖縄旅行、どうやった?」

悠哉の目がふっと和らぐ。

「幸せやった。……一生一緒にいたいって、胸が痛いくらい思ったわ。ハルが可愛すぎて、もうどうにもならん」

レンは呆れたように笑いながらも、どこか羨ましげにグラスを傾ける。

「お前……よっぽど溺愛依存やな」

「だな」悠哉も笑うが、その声は甘く深い。

ふと、悠哉が話題を変える。

「そういや楓とはどうなんや?」

レンの口元が緩んだ。

「あれか……仔犬だな」

「仔犬?お前が?」悠哉が吹き出す。

「笑うなよ。本気でヤバいんだ。あいつ、可愛すぎて……お前の気持ち、初めて分かった気がする」

悠哉は目を細め、グラスを持つ指先に力を込めた。

「……やろ?可愛いって罪や。守りたいって気持ち、止まらんやろ」

レンは深く息を吐き、天井を仰ぐ。

「……そうなんだよな。初めてなんだ、こんな気持ち。守りたいなんて、俺には縁がないと思ってたのに」

二人のグラスがカチンと触れ合った。

夜の帳に溶けていく秘密の会話は、誰にも聞かれないように――深く、甘く、静かに続いていった。

Lesson30へ続く
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