大人になっても、恋は止まらない。──独占と余裕のあいだで

氷月

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Lesson 28.5 君だけを映す蒼の世界

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首里城の赤い瓦屋根が、陽射しに照らされてきらめいていた。

観光客の声が遠くで響く中、ハルは嬉しそうに立ち止まっては「見て、ここ綺麗だね」って笑う。その横顔を見てるだけで、胸の奥がじんわりあたたかくなる。

(……やっぱり可愛いな)

俺が高校の頃、告白されて付き合ったことはあった。けど――どれだけ一緒にいても、心が動くことはなかった。

本気で「好きや」なんて思えへんかったんや。

けど、ハルに出会った瞬間――何かが変わり始めた。

気づいたら、過去の繋がりは全部切っていた。

……ハルは特別すぎて、もうどうしようもないくらい、俺の中で大きな存在になっていた。

石畳を並んで歩く。ハルの手は小さくて、握ると頼りなくて、それなのに不思議と強く引き寄せたくなる。

無邪気に景色に夢中になってるハルを見て、ふっとため息が漏れた。

(俺、ほんまに……好きで仕方ないわ離したくない)

思わず握った手に力がこもる。ハルが不思議そうにこっちを見上げてくるから、照れ隠しに軽く笑った。

「……お前、ずっと俺の隣で笑っとけよ」

小さく囁くと、ハルは少し赤くなって、でも柔らかく頷いた。その仕草に胸がいっぱいになって、自然と額に口づけを落とす。

首里城の鮮やかな朱色よりも、何よりも大事に思えるのは――ハルの笑顔やった。

首里城をひと通り歩き終え、最後に並ぶお土産屋さんの通りに足を向けた。

赤瓦の屋根の下、色鮮やかなシーサーや紅型の小物が並んでいて、観光客でにぎわっている。

ハルは足を止めて「わぁ、可愛い!」と目を輝かせる。

手に取ったのは小さなシーサーの置物。

「これ、部屋に置いたら守ってくれるかな」

そう言って振り返る笑顔に、悠哉はまた胸がいっぱいになって――

「……守るんは俺やけどな」って、ぼそっと囁く。

ハルは照れて赤くなって、慌てて他のお土産を探し始めるけど、悠哉はその反応すら愛おしそうに目で追っていた。

ハルは小さなシーサーを抱えるように手にして、「これ、やっぱりお揃いで買わない?」って言う。

悠哉は「……俺はお前が隣にいてくれるだけで十分やけどな」って笑いながらも、結局ハルに押されてペアで購入。

ホテルへ戻ったふたり。

南国らしいディナーを済ませたあと、海辺へ足を運んだ。

夜風はやわらかく、潮の匂いと波音が静かに寄せてくる。

砂浜に並んで腰を下ろし、頭上を見上げれば、吸い込まれそうなほどの星空。

悠哉が、不意に口を開いた。

「なぁ、ハル。……聞いたことなかったけど、お前って今まで付き合った人、おったんか?」

僕は一瞬戸惑って、それから小さく息を吐いた。

「……いたよ。周りがみんな恋人作り始めて、焦ってたんだと思う。高校1年時かなー。告白されて、なんとなく付き合ってみた。でも……好きになれなかった。すぐに終わったよ」

そう言うと、悠哉が黙って僕を抱き寄せた。大きな腕に包まれて、胸の奥がぎゅっと熱くなる。

「……そしてね、気付いたら悠哉に落ちてたんだ。いつの間にか、僕の世界が悠哉だけになってて……どうしようもなくなった」

その言葉に、悠哉は小さく笑って僕の髪を撫でた。

「俺もや。お前と出会ってから、全部が変わった。過去なんてどうでもよくなるくらい、お前だけでいっぱいや」

星明かりの下で目が合う。見つめられるだけで胸がいっぱいになって、自然と笑みがこぼれた。

「……あの時、出会えて本当に良かった」

次の瞬間、悠哉の唇が僕の唇を優しく塞いだ。

「俺も。もう二度と離せへん。お前が俺の全部や」

波音と星の瞬きに包まれて交わしたキスは、甘くて、切なくて、永遠みたいに溶けていった。

僕たちは星空の下を並んで歩いた。

波の音に紛れて、互いの過去や心の奥を打ち明けあう。

――「出会えてよかった」その言葉に、胸が熱くなった。

ホテルへ戻った夜。

窓越しに海の気配を感じながら、僕はまた悠哉の腕の中に溶けていく。

甘くて、切ないほどの独占。

今夜も変わらず、悠哉に愛されて――幸せで眠りに落ちた。


Lesson29へ続く
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