壊すほどに、俺はお前に囚われている

氷月

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Lesson3 可愛い後輩、現る。甘酸っぱい午後のカフェで

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昼下がりのキャンパス近くのカフェ。

陽射しが大きな窓から差し込み、テーブルにはふわふわのパンケーキが二皿。

タクミはフォークでクリームをすくい、のんびりと口に運んでいる。

「この前の高槻さん? LINEだけだよ」

ふいにタクミが言った。

レンは手を止めて、カップのコーヒーに視線を落とす。

「……なんで急に言うんだよ」

「心配してんのかなーと思って」

タクミが無邪気に笑う。その笑顔が、胸の奥を妙にくすぐった。

その時――

「タクミ先輩~っ!」


店のドアが開き、明るい声が響く。

振り返ると、短めの髪に爽やかな笑顔の少年が駆け寄ってきた。
その子は、勢いよくタクミの腕に飛びつく。

「会いたかった~!」

「お、おいカナタ…!」とタクミが苦笑する横で、
レンは黙ってその様子を見つめていた。

「……誰?」

低く問うレンの声に、タクミは「高校の後輩」と答える。
だがレンの胸には、またあのチクリとした感覚が広がっていた――。

そして――カナタを見た瞬間、レンは思った。

(……可愛い。……女?)

いや、視線を下げると男子校の制服。
一瞬、横顔がハルに重なって見えて――

「俺、目霞んでるのか?」と心の中で舌打ちする。

胸の奥でまた、ざわりとモヤモヤが広がった。

「レンさん、紹介するよ。相沢カナタ。俺の後輩だよ」

タクミは笑顔で続ける。

「女の子に見えた? こいつ、可愛いんだよ」
頬を少し赤くしてデレっと笑うタクミに、レンは視線を逸らした。

たしかに――外見は驚くほど整っている。
大きな瞳、白い肌、柔らかそうな髪。
中性的で、誰もが一度は振り返るだろう美少年。

「じゃあ俺、このあと友達と待ち合わせなんで」
カナタは立ち上がり、軽く手を振る。
「また連絡しますね♡ タクミさん」

店を出ていく後ろ姿を見送りながら、レンはふと息を吐いた。

(……俺、嫉妬してんのか?)
答えのない問いが、胸の奥で何度も反響していた。


あの後ー カナタと別れてからも、レンの胸の中にはモヤモヤが渦巻いていた。

夜の街を歩きながら、ふと足が向いたのは、薄暗いネオンが灯るダーツバー。

バーカウンターの奥からはジャズが流れ、カウンターには数人の客。
レンは一番奥のダーツ台に立ち、ひとり矢を投げながら、グラスを傾ける。

――ピロリン。

スマホを取り出し、連絡先の中から「ユウヤ」をタップする。

『少しダーツしないか?』

すぐに既読がつき、短い返事が返ってきた。『ええよ、今から行くわ』

数分後、背後から声がする。

「どうしたんや、こんな時間に」

振り返ると、ラフなジャケット姿のユウヤが立っていた。

レンは笑ってごまかしながら、ダーツをもう一投。

「…タクミの愚痴でも聞いてくれ」

ユウヤはニヤニヤしながらカウンター席に腰を下ろし、レンの話を聞き始める。

合コンでの出来事やタクミの隣に座った女
子、そしてカナタという可愛い後輩の登場――積もる話。

「最近、ハルとはどうなんだ?」

「毎日家まで送っとるで。… あいつ、笑うと子供みたいで可愛いからな。ナンパされたら困るやろ?」

「そっか。溺愛だな、幸せだな」

(グラスの中で氷がカランと音を立てる)

――ユウヤ・スマホの着信音。

「お、ハルや」♡

声が自然と甘くなる。

「今から? うん、わかった。迎えに行くわ。お酒入ったから歩いて行くわ」

通話を切ったユウヤが、少し照れくさそうに笑う。

「悪いな、これからハル迎え行く。実は、週末は泊まりにくるんや。」

「……。そっか、」

胸の奥に、小さな穴があくような感覚。

ドアの前でユウヤが振り返る。

「なぁ、レン、お前…タクミのこと、好きなんやろ? 顔に書いてあるで、
好きなら認めて素直にならなあかん。」

「ほな、またな。」

残されたレンは、的の中心がぼやけて見えた。

(ユウヤからは見透かされたのかー)


続くー♡


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