壊すほどに、俺はお前に囚われている

氷月

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Lesson7 お前だけに見せる弱さと、頬に残る温もり

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「……おじゃましまーす」


タクミはコンビニ袋を片手に靴を脱ぎ、遠慮なく部屋に上がり込んだ。

静かな広い部屋。
ソファには脱ぎっぱなしの服が散らかり、まるで孤独をそのまま映したようだった。

タクミは一瞬眉を寄せたが、すぐにレンの肩を抱き、ベッドへと導く。

「ほら、寝ろ。熱あるときは無理すんな」

「……わかったよ」

声も弱々しくて、布団に押し込まれるレンは観念したように目を閉じた。

タクミは袋から冷えピタと氷枕、スポーツドリンクを取り出す。

「じっとしてろよ」

そう言って額に冷えピタを貼ると、レンの熱が手に伝わり、タクミの胸がきゅっと痛んだ。

「水分取れてるか?とりあえず、飲めるだろ?」

スポーツドリンクを唇に運ぶと、レンの指先がタクミの手に触れた。

わずかな熱が、火花のように走る。
レンはかすかに視線を逸らし、呟いた。

「……ありがと」

タクミの心臓がキュンと跳ねた。

キッチンに立ち、お米を洗いながらタクミは自分の胸を押さえた。

「ったく……何やってんだ、なんでさっきからドキドキしてんだ?俺」

でも手は止まらない。
鍋に卵を落とし、ふわりと香る湯気。
食欲なくても、これなら食えるだろ…

ベッドに戻り、そっと声をかける。

「レン、起きれるか?食べれそうか?」

レンはぼんやりした瞳を向け、「……無理」

タクミはため息をつき、器を持ったまま隣に腰を下ろした。

「しょうがないな、口、開けて?俺が食べさせるから」

「な、やめろ。ガキみたいじゃないか」

「いいから、ほら、開けろ。」

スプーンをふーっと冷まし、レンの唇へ。

レンは驚きと戸惑いで胸を高鳴らせながらも、レンは口を開いた。

熱に浮かされた頬は赤く、滴る汗が襟元に 落ちる

「……あつ……でも、美味い」

「あ、冷めてなかったか、ごめん」苦笑

レンがかすかに笑った瞬間、タクミの胸に何かが突き刺さる。

タクミは放っておけなかった。
この無防備な笑顔だけは。

食べさせてもらったお粥と薬で少し落ち着いたのか、レンは布団に沈みながらタクミを見上げた。

「……悪かったな。……これやるよ」
ふらつく手で財布を探り、数枚の紙幣を差し出す。


乱れた前髪の隙間から覗く瞳は熱に潤み、赤く火照った頬はどこか艶めいて見えた。

タクミは手を払いのけ、声を荒げる。

「は? なんでいきなり金だよ。そんなもん、要らない」

「……世話になったから……俺は、そうやって……」

レンは最後まで言葉を紡げず、視線を逸らした。

その横顔は普段の強気が嘘のようで、無防備なレンが滲んでいた。

「……なぁ、レン、金で繋がるなら、俺は来てない、だから要らないよ」

タクミの低い声が落ちると、レンの睫毛が震え、熱に浮かされたまま意識が遠のいていく。

帰ろうと手を離す瞬間、レンの指が弱々しく握り返した。

「……離すなよ、まだ帰るな」

掠れた寝言に、タクミは思わず動きを止める。

「……ほんと、お前は……」

寂しさを隠すための虚勢も、こうして崩れたら色っぽくてたまらない。
タクミはその手を握り返した。

夜が更ける。

冷えピタを交換しながら、汗で肌に張り付いたTシャツ越しに伝わる熱。
鎖骨にかかる髪を整え、汗をタオルで拭いながら、心の中で呟く。

「……こんな顔、俺以外に見せんなよ」

――朝方。

日差しがカーテンから差し込む
レンの熱は下がり、寝顔が穏やかになっていた。 

タクミは衝動に負け、指先でそっと頬を撫でる。

「……金なんかより、お前の“ありがと”一言のほうが、ずっと重いんだよ」

掠れた声でそう囁き、そっと頬に優しくキスを落とした。

「じゃあな、レンまだ寝とけよ?」

机に栄養ドリンクを置き、ドアを静かに閉める。

――パタン。

音に目を覚ましたレンは、頬に残る熱をゆっくりと指でなぞる。

「……え……なに……」

困惑とドキドキが胸をかき乱す。

指先に残るタクミの温もり。
広い部屋で、ただ一人の名前を口にしてしまった。

「……タクミ……」


Lesson8へー続くー♡
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