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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情
1-2.手放された王冠を手にする権利は誰の手に
俺が産まれたシェルクヴィスト王家には、現在8人の国王陛下の実子がいる。内訳は、王子5人に王女3人。シェルクヴィスト王家としては近代稀に見る子沢山の代である。俺はその中で、第七側妃から生まれた第二王子だ。側妃は生家を中心とした後ろ盾や様々な思惑の順に数字が決まるが、王位継承権は基本的に男の産まれた順に与えられる。王女は、王子の次に王位継承権が与えられることになる。これは、王族がハーレムを築きなるべく王族を増やす必要があるため、男児優先なのだ。
運悪く上から二番目に産まれてしまったので、俺は王位継承権第二位という位置に甘んじることになった。
で、その俺の上の王位継承権第一位である異母兄上がやらかしやがった。
遡ること、約2年前。王宮とは別の権威、神殿の巫女が神託を受けたとの一報が王宮にもたらされた。曰く、半年後に神子を下界に送るので迎え入れる準備をしろとのこと。性別は男、年齢は第一王子殿下と同い年であることだけ告げられ、それ以外何も分からないながらに神子を受け入れる用意を進めていくことになった。無論、神託を受けたという報からずっと王宮と神殿は上から下への大騒ぎであった。そして案の定というかなんというか、受け入れるべき先の指定も何もなかったため、どこが受け入れ先になるか揉めに揉めたとか何とか。流石に血を血で洗うほどの騒ぎにはなりきらなかったようだ。
最終的に、神子様に居場所を決めて頂こうと、まずは神託を受けた神殿でVIP待遇での受け入れが決まった。そして、本当に半年後に神子としか言いようがない神秘的な状況下で、神子はこの世界にご降臨なさった。……伝え聞いた話から察するに、たぶん高校の制服であろう紺色のブレザーにスラックス、ネクタイという姿で。神秘的な、天使もかくやという状況下で現れたのが男子高校生……――何のギャグだ。とりあえず、ここに異世界転生を果たした魂を持つ王子がいる訳だが、向こうは異世界転移をした高校生だ。変な化学反応が起きたら困る、ということで特に何も言われないがままに神子とは関わらずに今日まで来た。どうやら、神子は俺や下の異母弟妹にも会いたがったようで、一切姿を見せようとしない俺に興味を持ったのか何なのか俺を呼び出そうとかなりしつこかったらしいが。どうにか避けて今まで来たが、とうとう関わらざるを得ない状態まで来てしまったようだ。
何がどうなったって、雑に言えばハーレムを築かねばならない次期国王である異母兄上が、神子を中心とした逆ハーレムに婿入りすると暴れ始めた。物理的にではない、王位継承権第一位の者としての強権を振りかざし始めたのだ。
他にも、数々の男女を虜にしてきた美貌の公爵家嫡男とか、宰相にまで登り詰める程の秀才を多く輩出する侯爵家の嫡子とか、近衛騎士団入りするほどの実力者ばかり育て上げる伯爵家の嫡男とか、神殿で権威を奮う枢機卿の孫とか。これは、乙女ゲームならぬBLゲームの逆ハーエンド、というヤツでしょうか。別にこの世界が乙女ゲームだのBLゲームだの意識したことはなかったが、ラノベをこよなく愛していた前世を持つ俺としては、それを疑ってしまっても仕方ない状況である。流石に、前世でも男で普通のオタクだったからか、BLゲームは存在しか認識していない。乙女ゲームだって流行りのアニメやWeb小説で見ただけだ。
なお、神子はどうやら同性愛者であったようで、彼らに無理やり言い寄られているとか、そういう可哀そうなことにはなっていない。むしろ、この世の春を謳歌せんばかりに幸せそうだということである。
「――父上、宰相殿。浅学で恥ずべきばかりなのですが、王太子教育や嫡子教育というのは、ハーレムを築く心得を叩きこむのであって、まかり間違ってもハーレム入りするという阿呆をやらかさないように教育するものではなかったのですか?」
「その通りだよ、メシー。そもそもハーレムを築けるような豪傑でない限りは、嫡子は交代させるものだ。そもそも適性を見て嫡子を決めるようになっている」
「王族の方々に関しては、そもそもハーレムを築くのが当たり前という感覚の方が産まれ易いので……。あの第一王子殿下がハーレム入りするという発想に至るとは未だに信じ難く……」
「信じられなくても、現実がそうでないの。そもそもあの神子殿の考え方は封建制度である我が国には毒の考え方よ、残念だけどアーロンは諦めるより他ないわ」
順に、俺、国王陛下、宰相閣下、王妃陛下である。先程から彼らから聞いている話は、アーロン・リル・シェルクヴィスト――俺の異母兄上であり、王妃陛下の実子である。後ろ盾十分な、立太子しても問題ないほど憂いのない次期国王として期待を背負った異母兄だ。何をどう道を踏み外したらこうなるのか。
そもそも、この国の貴族家では俗に言うハーレム・逆ハーレムが当たり前のように築かれている。基本的には長子が家を継ぐが、血を確実に繋げるために家を継ぐ嫡子を頂点としたハーレムを築くのが一般的であるのだ。まあ、他にもいろいろと思惑はあったりするのだが、基本的にはハーレム又は逆ハーレムを築くことが出来る適性のある者が家を継ぎ、確実にその家の血統を継いでいくのだ。つまり、嫡子とはハーレムを築く側の人間であり、まかり間違ってもハーレム入りするなどといったことは有り得ない、はずなのである。
ちなみに。この世界、男と女という言い方以外に、「雄」と「雌」と言い方をする。要は、男女の性別の他に、攻めと受け、タチとネコといった言い回しと同じように雄と雌という言い回しを使うのだ。これは決して蔑みの意味は含まれておらず、ただの性別と同じように自分の立場を示す単語である。
もちろんではあるが男の雌、女の雄という存在は普通に存在するし受け入れられている。まあ、男女の恋愛が多いというか自然な流れなところはあるが、なんせ相性が良くないと子どもが出来ない。よって、かなり性に奔放な世界であると言えると思う。でも、まあ「あなたは異性愛者ですか? 同性愛者ですか?」や「あなたは雄ですか? 雌ですか?」といった質問は、プライベートなことに足を踏み込みすぎているため、失礼な物言いの印象を与える。だが、この質問は王侯貴族にとっては必要な質問でもあるのだ。なんせ、自分の血統の子をつながなければならないのだから。
「それほどまでに神子殿の考え方は、毒となりますか。参考までに、どういった趣旨の話かお聞かせ願えませんか?」
「そうねぇ、色々言っているのだけれど、人類皆平等、とか一夫一妻制のところから来たから夫を共有するのは耐えられません、とか」
「……仮にそれを本気で言っているなら、何故神子殿はひとりに絞らないのですか? 救える貴族家が増えるでしょうに」
「手遅れよ、彼らは既に染まってしまった。既に該当の貴族家は、嫡子の再選定をしているわよ。ねぇ、アガタ?」
「おっしゃる通り、我がラーゲルクランツ侯爵家でも嫡子の再選定を行っております」
「本当に手遅れじゃないですか。彼らはもう神子殿に引き取って頂くに他ないでは?」
「いいのではなくて? あの子たちは神子殿と添い遂げたい、神子殿は選べないとあの子たちを離さない。収まるところに収まるだけよ」
「聞きたくないのですが、王家はどのようにリモを、というか王太子の再選定を? たしか異母兄上が立太子することで議会でまとまっていたと思いましたが」
聞かなければよかった、と心底後悔した。王太子、という単語が出た瞬間からこの部屋に居る皆の顔が恐ろしいことになっていたから。
運悪く上から二番目に産まれてしまったので、俺は王位継承権第二位という位置に甘んじることになった。
で、その俺の上の王位継承権第一位である異母兄上がやらかしやがった。
遡ること、約2年前。王宮とは別の権威、神殿の巫女が神託を受けたとの一報が王宮にもたらされた。曰く、半年後に神子を下界に送るので迎え入れる準備をしろとのこと。性別は男、年齢は第一王子殿下と同い年であることだけ告げられ、それ以外何も分からないながらに神子を受け入れる用意を進めていくことになった。無論、神託を受けたという報からずっと王宮と神殿は上から下への大騒ぎであった。そして案の定というかなんというか、受け入れるべき先の指定も何もなかったため、どこが受け入れ先になるか揉めに揉めたとか何とか。流石に血を血で洗うほどの騒ぎにはなりきらなかったようだ。
最終的に、神子様に居場所を決めて頂こうと、まずは神託を受けた神殿でVIP待遇での受け入れが決まった。そして、本当に半年後に神子としか言いようがない神秘的な状況下で、神子はこの世界にご降臨なさった。……伝え聞いた話から察するに、たぶん高校の制服であろう紺色のブレザーにスラックス、ネクタイという姿で。神秘的な、天使もかくやという状況下で現れたのが男子高校生……――何のギャグだ。とりあえず、ここに異世界転生を果たした魂を持つ王子がいる訳だが、向こうは異世界転移をした高校生だ。変な化学反応が起きたら困る、ということで特に何も言われないがままに神子とは関わらずに今日まで来た。どうやら、神子は俺や下の異母弟妹にも会いたがったようで、一切姿を見せようとしない俺に興味を持ったのか何なのか俺を呼び出そうとかなりしつこかったらしいが。どうにか避けて今まで来たが、とうとう関わらざるを得ない状態まで来てしまったようだ。
何がどうなったって、雑に言えばハーレムを築かねばならない次期国王である異母兄上が、神子を中心とした逆ハーレムに婿入りすると暴れ始めた。物理的にではない、王位継承権第一位の者としての強権を振りかざし始めたのだ。
他にも、数々の男女を虜にしてきた美貌の公爵家嫡男とか、宰相にまで登り詰める程の秀才を多く輩出する侯爵家の嫡子とか、近衛騎士団入りするほどの実力者ばかり育て上げる伯爵家の嫡男とか、神殿で権威を奮う枢機卿の孫とか。これは、乙女ゲームならぬBLゲームの逆ハーエンド、というヤツでしょうか。別にこの世界が乙女ゲームだのBLゲームだの意識したことはなかったが、ラノベをこよなく愛していた前世を持つ俺としては、それを疑ってしまっても仕方ない状況である。流石に、前世でも男で普通のオタクだったからか、BLゲームは存在しか認識していない。乙女ゲームだって流行りのアニメやWeb小説で見ただけだ。
なお、神子はどうやら同性愛者であったようで、彼らに無理やり言い寄られているとか、そういう可哀そうなことにはなっていない。むしろ、この世の春を謳歌せんばかりに幸せそうだということである。
「――父上、宰相殿。浅学で恥ずべきばかりなのですが、王太子教育や嫡子教育というのは、ハーレムを築く心得を叩きこむのであって、まかり間違ってもハーレム入りするという阿呆をやらかさないように教育するものではなかったのですか?」
「その通りだよ、メシー。そもそもハーレムを築けるような豪傑でない限りは、嫡子は交代させるものだ。そもそも適性を見て嫡子を決めるようになっている」
「王族の方々に関しては、そもそもハーレムを築くのが当たり前という感覚の方が産まれ易いので……。あの第一王子殿下がハーレム入りするという発想に至るとは未だに信じ難く……」
「信じられなくても、現実がそうでないの。そもそもあの神子殿の考え方は封建制度である我が国には毒の考え方よ、残念だけどアーロンは諦めるより他ないわ」
順に、俺、国王陛下、宰相閣下、王妃陛下である。先程から彼らから聞いている話は、アーロン・リル・シェルクヴィスト――俺の異母兄上であり、王妃陛下の実子である。後ろ盾十分な、立太子しても問題ないほど憂いのない次期国王として期待を背負った異母兄だ。何をどう道を踏み外したらこうなるのか。
そもそも、この国の貴族家では俗に言うハーレム・逆ハーレムが当たり前のように築かれている。基本的には長子が家を継ぐが、血を確実に繋げるために家を継ぐ嫡子を頂点としたハーレムを築くのが一般的であるのだ。まあ、他にもいろいろと思惑はあったりするのだが、基本的にはハーレム又は逆ハーレムを築くことが出来る適性のある者が家を継ぎ、確実にその家の血統を継いでいくのだ。つまり、嫡子とはハーレムを築く側の人間であり、まかり間違ってもハーレム入りするなどといったことは有り得ない、はずなのである。
ちなみに。この世界、男と女という言い方以外に、「雄」と「雌」と言い方をする。要は、男女の性別の他に、攻めと受け、タチとネコといった言い回しと同じように雄と雌という言い回しを使うのだ。これは決して蔑みの意味は含まれておらず、ただの性別と同じように自分の立場を示す単語である。
もちろんではあるが男の雌、女の雄という存在は普通に存在するし受け入れられている。まあ、男女の恋愛が多いというか自然な流れなところはあるが、なんせ相性が良くないと子どもが出来ない。よって、かなり性に奔放な世界であると言えると思う。でも、まあ「あなたは異性愛者ですか? 同性愛者ですか?」や「あなたは雄ですか? 雌ですか?」といった質問は、プライベートなことに足を踏み込みすぎているため、失礼な物言いの印象を与える。だが、この質問は王侯貴族にとっては必要な質問でもあるのだ。なんせ、自分の血統の子をつながなければならないのだから。
「それほどまでに神子殿の考え方は、毒となりますか。参考までに、どういった趣旨の話かお聞かせ願えませんか?」
「そうねぇ、色々言っているのだけれど、人類皆平等、とか一夫一妻制のところから来たから夫を共有するのは耐えられません、とか」
「……仮にそれを本気で言っているなら、何故神子殿はひとりに絞らないのですか? 救える貴族家が増えるでしょうに」
「手遅れよ、彼らは既に染まってしまった。既に該当の貴族家は、嫡子の再選定をしているわよ。ねぇ、アガタ?」
「おっしゃる通り、我がラーゲルクランツ侯爵家でも嫡子の再選定を行っております」
「本当に手遅れじゃないですか。彼らはもう神子殿に引き取って頂くに他ないでは?」
「いいのではなくて? あの子たちは神子殿と添い遂げたい、神子殿は選べないとあの子たちを離さない。収まるところに収まるだけよ」
「聞きたくないのですが、王家はどのようにリモを、というか王太子の再選定を? たしか異母兄上が立太子することで議会でまとまっていたと思いましたが」
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