18 / 18
ルノーとザカリアス
しおりを挟む
ザカリアスの刃が尻餅をつくルノーの首元すんでのところで止まる。ルノーは持っていた剣をカラン、と落とした。本日5戦目、一度もザカリアスには勝てなかった。これまで全てを入れてもルノーの勝率は1割程度だろう。
「はあ、ザックなんでそんな強いの……。」
「ははっ、修行が足りねえよ。まあお前もシュティよりは強いかもな。」
ザカリアスは剣を引いて、近くの石に座り込んで水を一口飲んだ。
「ああもう、どんだけ訓練してもお前に勝てる気がしなくて嫌だ。」
「それは正しい。とは言っても今日お前なんか集中してなかったぜ。」
尻餅をついたままのルノーに水を差し出すザカリアス。ルノーはそれを受け取って一口飲んでから立ち上がった。
「実は、ちょっと悩んでいて。」
「なんだよ、言ってみろよ。」
「……将来に……ついて。」
ぶわははははっとザカリアスは吹き出した。
「わ、笑うなよ!」
「ひーっ、将来についてってなんだよ!ティーンかよ!」
「だって!ずっと将来についてなんか考えたことなかったから……。」
しゅんと拗ねてそっぽを向くルノーの頭を優しく叩いた。
「悪かったよ。なんで急にそんなこと悩んでんだ。」
「テオに『A国の傭兵になるんだろ』って言われて、将来のこととか全然考えてなかったから、僕は何になるんだろうと思って。」
「うーん難しいな。まあ焦って決めることもないと思うけど。楽しいこととか好きなこととか見つかればそれをやればいいんじゃね。」
「楽しいこと……?好きなこと……?」
「まあわかんねえよな。色々経験すればいいんだよ、そしたらきっと見つかる。」
「ザックはなんで傭兵やってるの?」
「俺?は、まあ喧嘩とか割と強かったし、好きだったし、戦うことが好きだったんだよな。」
「なるほどなあ……。僕は何になれるのかな。」
「まあ絵描きとか、スポーツ選手とかは練習しなきゃなれないけど、それこそ傭兵ならお前ほどの実力があればできるし、例えばー、現実的なところいけばテオのやってる仕事を半分受け持つとか、ウーヴェの秘書とか、そのあたりかなあ?テオは一人で何十人分の仕事してるからな、また倒れられちゃ困るし。」
「うーん、よくわかんないなあ。」
「別に職業じゃなくてもいいんだぜ。例えば猫と暮らす、とか、おっきい家に住むとか、将来って仕事だけじゃねえからな。」
ルノーはいまいちピンとこない表情をしていた。
「ザックは将来について考えてるの?」
「俺?俺は……結婚かなぁ。」
「シュティと?」
何気ないルノーの一言にザカリアスは水をぶーーっと吹き出した。図星だと言っているようなものでルノーは少し笑った。
「ゲホッ!ゴホッ!ななな、何言ってんだよ!」
「だってシュティのこと好きでしょ?」
「おいおいおい冗談じゃないぜ、誰から聞いた?テオか?」
「さすがに見てれば気づくよ。なんか好意がダダ漏れだもん。まあこの国は同性婚認められてるからできるよ。」
「そうじゃなくて、見てれば気づくならわかれよ。片想いだろどう考えても。シュティは俺のことライバル視して倒したいと思ってるし、そうでなくても相棒って立場の俺はあいつの眼中にねえ。」
「そうかなあ?」
「当たり前だろ、告白して今の関係崩れるのも嫌だし、絶交なんてことになったらマジで生きていけない。」
「ザックって、結構臆病だね。」
ルノーの心無い一言がザカリアスにグサリと刺さる。
「お前はこんな気持ちになったことないだろうからな!!」
「ウーヴェはいつも僕にたくさんの好意をくれるよ。」
「……お前は返してんの?」
「え。」
想定していなかった質問にルノーは動揺した。
「好意を与え続けて、返してもらえない気持ちを考えたことあるのかよ?」
そんなこと、考えてみたこともなかった。ウーヴェはいつも僕に色々なものを与えてくれて、僕は感謝をするだけ。返そう、なんて思ったことはなかった。そもそも僕には何もない、何か返せるようなものは持っていないんだ。
「もらった分以上を返したい、それが好きってことじゃね?」
「……そっか。」
好き、僕はウーヴェのことが好きなのだろうか。そもそも「好き」がわからない。ザックからシュティへの想いは「好き」で、シュティからザックへの想いをザックは「好き」じゃないと思ってる。僕はそれを「好き」だと思ってたけど。そしてウーヴェから僕への想いは「好き」で。
僕からウーヴェへの想いはなんなのだろうか。また悩みが増えてしまった。
「はあ、ザックなんでそんな強いの……。」
「ははっ、修行が足りねえよ。まあお前もシュティよりは強いかもな。」
ザカリアスは剣を引いて、近くの石に座り込んで水を一口飲んだ。
「ああもう、どんだけ訓練してもお前に勝てる気がしなくて嫌だ。」
「それは正しい。とは言っても今日お前なんか集中してなかったぜ。」
尻餅をついたままのルノーに水を差し出すザカリアス。ルノーはそれを受け取って一口飲んでから立ち上がった。
「実は、ちょっと悩んでいて。」
「なんだよ、言ってみろよ。」
「……将来に……ついて。」
ぶわははははっとザカリアスは吹き出した。
「わ、笑うなよ!」
「ひーっ、将来についてってなんだよ!ティーンかよ!」
「だって!ずっと将来についてなんか考えたことなかったから……。」
しゅんと拗ねてそっぽを向くルノーの頭を優しく叩いた。
「悪かったよ。なんで急にそんなこと悩んでんだ。」
「テオに『A国の傭兵になるんだろ』って言われて、将来のこととか全然考えてなかったから、僕は何になるんだろうと思って。」
「うーん難しいな。まあ焦って決めることもないと思うけど。楽しいこととか好きなこととか見つかればそれをやればいいんじゃね。」
「楽しいこと……?好きなこと……?」
「まあわかんねえよな。色々経験すればいいんだよ、そしたらきっと見つかる。」
「ザックはなんで傭兵やってるの?」
「俺?は、まあ喧嘩とか割と強かったし、好きだったし、戦うことが好きだったんだよな。」
「なるほどなあ……。僕は何になれるのかな。」
「まあ絵描きとか、スポーツ選手とかは練習しなきゃなれないけど、それこそ傭兵ならお前ほどの実力があればできるし、例えばー、現実的なところいけばテオのやってる仕事を半分受け持つとか、ウーヴェの秘書とか、そのあたりかなあ?テオは一人で何十人分の仕事してるからな、また倒れられちゃ困るし。」
「うーん、よくわかんないなあ。」
「別に職業じゃなくてもいいんだぜ。例えば猫と暮らす、とか、おっきい家に住むとか、将来って仕事だけじゃねえからな。」
ルノーはいまいちピンとこない表情をしていた。
「ザックは将来について考えてるの?」
「俺?俺は……結婚かなぁ。」
「シュティと?」
何気ないルノーの一言にザカリアスは水をぶーーっと吹き出した。図星だと言っているようなものでルノーは少し笑った。
「ゲホッ!ゴホッ!ななな、何言ってんだよ!」
「だってシュティのこと好きでしょ?」
「おいおいおい冗談じゃないぜ、誰から聞いた?テオか?」
「さすがに見てれば気づくよ。なんか好意がダダ漏れだもん。まあこの国は同性婚認められてるからできるよ。」
「そうじゃなくて、見てれば気づくならわかれよ。片想いだろどう考えても。シュティは俺のことライバル視して倒したいと思ってるし、そうでなくても相棒って立場の俺はあいつの眼中にねえ。」
「そうかなあ?」
「当たり前だろ、告白して今の関係崩れるのも嫌だし、絶交なんてことになったらマジで生きていけない。」
「ザックって、結構臆病だね。」
ルノーの心無い一言がザカリアスにグサリと刺さる。
「お前はこんな気持ちになったことないだろうからな!!」
「ウーヴェはいつも僕にたくさんの好意をくれるよ。」
「……お前は返してんの?」
「え。」
想定していなかった質問にルノーは動揺した。
「好意を与え続けて、返してもらえない気持ちを考えたことあるのかよ?」
そんなこと、考えてみたこともなかった。ウーヴェはいつも僕に色々なものを与えてくれて、僕は感謝をするだけ。返そう、なんて思ったことはなかった。そもそも僕には何もない、何か返せるようなものは持っていないんだ。
「もらった分以上を返したい、それが好きってことじゃね?」
「……そっか。」
好き、僕はウーヴェのことが好きなのだろうか。そもそも「好き」がわからない。ザックからシュティへの想いは「好き」で、シュティからザックへの想いをザックは「好き」じゃないと思ってる。僕はそれを「好き」だと思ってたけど。そしてウーヴェから僕への想いは「好き」で。
僕からウーヴェへの想いはなんなのだろうか。また悩みが増えてしまった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
「好きって言ったら負け!」完璧すぎる生徒会コンビの恋愛頭脳戦は今日も平行線です~恋は勝ち負けじゃないと知るまでの攻防戦
中岡 始
BL
「好きって言ったら負け」
それが、俺たちの間にある、たったひとつのルールだった。
星遥学園の顔、生徒会長・一ノ瀬結翔と副会長・神城凪。
容姿、成績、カリスマ性――すべてが完璧なふたりは、周囲から「最強ペア」と呼ばれている。
けれどその内側では、日々繰り広げられる仁義なき恋愛頭脳戦があった。
・さりげない言葉の応酬
・SNSでの匂わせ合戦
・触れそうで触れない、静かな視線の駆け引き
恋してるなんて認めたくない。
でも、相手からの“告白”を待ち続けてしまう――
そんなふたりの関係が変わったのは、修学旅行での一夜。
「俺、たぶん君に“負けてもいい”って思いかけてる」
その一言が、沈黙を揺るがし、心の距離を塗り替えていく。
勝ち負けなんかじゃない、想いのかたちにたどり着くまで。
これは、美形ふたりの駆け引きまみれなラブコメ戦線、
ついに“終戦”の火蓋が落ちるまでの物語。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる