【完結】殺人兵器は愛情の夢を見るか

劣情祝詞

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ルノーとザカリアス

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ザカリアスの刃が尻餅をつくルノーの首元すんでのところで止まる。ルノーは持っていた剣をカラン、と落とした。本日5戦目、一度もザカリアスには勝てなかった。これまで全てを入れてもルノーの勝率は1割程度だろう。

「はあ、ザックなんでそんな強いの……。」
「ははっ、修行が足りねえよ。まあお前もシュティよりは強いかもな。」

ザカリアスは剣を引いて、近くの石に座り込んで水を一口飲んだ。

「ああもう、どんだけ訓練してもお前に勝てる気がしなくて嫌だ。」
「それは正しい。とは言っても今日お前なんか集中してなかったぜ。」

尻餅をついたままのルノーに水を差し出すザカリアス。ルノーはそれを受け取って一口飲んでから立ち上がった。

「実は、ちょっと悩んでいて。」
「なんだよ、言ってみろよ。」
「……将来に……ついて。」

ぶわははははっとザカリアスは吹き出した。

「わ、笑うなよ!」
「ひーっ、将来についてってなんだよ!ティーンかよ!」
「だって!ずっと将来についてなんか考えたことなかったから……。」

しゅんと拗ねてそっぽを向くルノーの頭を優しく叩いた。

「悪かったよ。なんで急にそんなこと悩んでんだ。」
「テオに『A国の傭兵になるんだろ』って言われて、将来のこととか全然考えてなかったから、僕は何になるんだろうと思って。」
「うーん難しいな。まあ焦って決めることもないと思うけど。楽しいこととか好きなこととか見つかればそれをやればいいんじゃね。」
「楽しいこと……?好きなこと……?」
「まあわかんねえよな。色々経験すればいいんだよ、そしたらきっと見つかる。」
「ザックはなんで傭兵やってるの?」
「俺?は、まあ喧嘩とか割と強かったし、好きだったし、戦うことが好きだったんだよな。」
「なるほどなあ……。僕は何になれるのかな。」
「まあ絵描きとか、スポーツ選手とかは練習しなきゃなれないけど、それこそ傭兵ならお前ほどの実力があればできるし、例えばー、現実的なところいけばテオのやってる仕事を半分受け持つとか、ウーヴェの秘書とか、そのあたりかなあ?テオは一人で何十人分の仕事してるからな、また倒れられちゃ困るし。」
「うーん、よくわかんないなあ。」
「別に職業じゃなくてもいいんだぜ。例えば猫と暮らす、とか、おっきい家に住むとか、将来って仕事だけじゃねえからな。」

ルノーはいまいちピンとこない表情をしていた。

「ザックは将来について考えてるの?」
「俺?俺は……結婚かなぁ。」
「シュティと?」

何気ないルノーの一言にザカリアスは水をぶーーっと吹き出した。図星だと言っているようなものでルノーは少し笑った。

「ゲホッ!ゴホッ!ななな、何言ってんだよ!」
「だってシュティのこと好きでしょ?」
「おいおいおい冗談じゃないぜ、誰から聞いた?テオか?」
「さすがに見てれば気づくよ。なんか好意がダダ漏れだもん。まあこの国は同性婚認められてるからできるよ。」
「そうじゃなくて、見てれば気づくならわかれよ。片想いだろどう考えても。シュティは俺のことライバル視して倒したいと思ってるし、そうでなくても相棒って立場の俺はあいつの眼中にねえ。」
「そうかなあ?」
「当たり前だろ、告白して今の関係崩れるのも嫌だし、絶交なんてことになったらマジで生きていけない。」
「ザックって、結構臆病だね。」

ルノーの心無い一言がザカリアスにグサリと刺さる。

「お前はこんな気持ちになったことないだろうからな!!」
「ウーヴェはいつも僕にたくさんの好意をくれるよ。」
「……お前は返してんの?」
「え。」

想定していなかった質問にルノーは動揺した。

「好意を与え続けて、返してもらえない気持ちを考えたことあるのかよ?」

そんなこと、考えてみたこともなかった。ウーヴェはいつも僕に色々なものを与えてくれて、僕は感謝をするだけ。返そう、なんて思ったことはなかった。そもそも僕には何もない、何か返せるようなものは持っていないんだ。

「もらった分以上を返したい、それが好きってことじゃね?」
「……そっか。」

好き、僕はウーヴェのことが好きなのだろうか。そもそも「好き」がわからない。ザックからシュティへの想いは「好き」で、シュティからザックへの想いをザックは「好き」じゃないと思ってる。僕はそれを「好き」だと思ってたけど。そしてウーヴェから僕への想いは「好き」で。

僕からウーヴェへの想いはなんなのだろうか。また悩みが増えてしまった。
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