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浜町トゥインクルスパークル
浜町トゥインクルスパークル(8)
しおりを挟む「な……」
デッサは唖然と見上げることしかできない。
リグナは高く上げた脚を、躊躇なく振り降ろした。
デッサはコンクリートの地面に激突する。
そこへ、飛翔したまま、リグナは無数の光弾を撃ち込んだ。
それは右脚から分離されたもので、瞬く間にマシンガンへと変形していた。
碧い光が1点に集まる。
「ハンパない……」
モジャコは唸る。
ハルもジシェも呆気にとられて見守るしかない。
リグナが地面に降り立ったとき、ようやく光は収束していった。
デッサは仰向けに天を見つめたまま、ぴくりとも動かなかった。
「ふふっ!」
「!?」
聞き覚えのある声に振り返れば、コルヴェナが立っていた。
「お待たせしたかしら! ちょっと記憶が飛んでますけど、参りましてよ! あと、デッサはそれくらいでは壊れないからご安心を!!」
どうやら人格が戻ったらしい。
(覚えてないのかよ)
(だいじょうぶなんだ……)
モジャコは呆れる。
ちょっとデッサを心配していたので、ハルは安堵する。
「さあ、いざ勝負!!」
ずばびーん、とコルヴェナは指を突きつけた。
ちなみにゴーグルはすでになく、ガントレットはひび割れ、煙を噴き出していた。
(うーん、なんだろ、このポジティブ思考とへこたれなさは……)
モジャコはハルに耳打ちした。
「先に駅へ行っといて」
ハルは頷いてジシェを受け取った。
リグナを促し、浜町駅へ。
「ミコ殿も滅茶苦茶でござる……」
ジシェはへろへろ。
「ごめんね、説明してる余裕がなくて」
それくらいの時間はあったような気も。
リグナのほうは、まるで何事もなかったかのように涼しげな表情だ。
疑ってごめんね——と声をかけようとして、ハルはやめた。
代わりに——。
「ありがと」
無感情な碧い瞳からは何もわからない。
ただ、光の加減かもしれないけれど、頬が少し赤らんでいるようにも見えた。
その後ろには「なんじゃらほ~い(ちょっとうれしい)」の文字。
「(ちょっとうれしい)」は若干控えめ。
モジャコはコルヴェナの相手をしながら木立の中の散策路を駆け抜けた。
首都高の高架も間近な堤防の上に躍り出て、さらに階段を、1段飛ばしで河川敷へ降りていく。
周辺は親水テラスとして整備されているエリアで、隅田川の水面は、低い柵を隔ててすぐそこ。
その柵を背負ってモジャコは向き直った。
「ふふっ、ついに追いつめたわ!」
モジャコは身を反らし、向かってきた相手に軽く力を添えた。
コルヴェナは川面へとすっ飛んでいった。
「え、えええっ!?」
どっぼーん。
「悪いけど、しばらくそこで頭を冷やしててくれ」
モジャコは取って返した。
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