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浜町トゥインクルスパークル
浜町トゥインクルスパークル(12)
しおりを挟む広尾駅に到着。
先頭の車両から降りれば改札口はすぐ。
リグナも慣れたもので、スムーズにパスモをタッチ。
「おお~」
「?」
ハルとモジャコは感心する。
リグナは、なんじゃらほい?——と、小首を傾げる。
若干照れているように見えなくはない。
銀座線ほどではないものの、実用一点張りの狭い階段を上っていく。
地上に出たところは、外苑西通りと小さな通りとの交差点。
広尾駅の周辺は各国の大使館が集まるエリアだ。
外国人が行き交う街といえば、都内ならとくだん珍しくもないけれど、広尾の場合、そこにあるのは住んでいる人たちの日常であって、赤ちゃんや小さな子供を連れた家族や、ごく軽装の人たちが普段着のままに歩いていた。
信号が変わるのを待ってハルたちは横断歩道を渡った。
反応があったのは南東、銀行のある角だ。
左手は緑の濃い並木が続いていて、カーブの先なので直接はわからないものの、低い建物の向こうに有栖川宮記念公園の森も見える。
連なるのはオープンカフェやお洒落な雑貨店。
携帯大幣は、巾着から取り出したときにはもう淡い輝きを帯びていた。
高く振り上げれば、きらめく立体が回転しながらゆっくりと昇ってくる。
「おっ、これならなんか見たことあるぞ」
「正二十面体だよ☆ プラトンの立体の1つで正三角形20枚からできてる正多面体ね!」
プラトン云々はともかく、数学の教科書に載っている、メジャー(?)な立体だ。
——と、輝く立体を見つめて、ハルはつぶやいた。
「〈追憶のカケラ〉はきっと全部で9つだ……」
「どういうことだ?」
正二十面体は粒子状に弾け、大気に溶け込んでいく。
そして、小さな白いメモリーカードのようなものが回転しながら降りてきた。
「ぬぬっ!」
ジシェは身を乗り出した。
ハルはメモリーカードを確かめ、リグナに話しかけた。
「リグナちゃん、背中のコンソール貸してくれる?」
「?」
リグナは、なんじゃらほい? と小首を傾げ、向き直って背中を見せた。
「大きさに見覚えがあるの」
背面拡張コンソールを開いてから、ハルはふと手を止めた。
感じていた違和感を解きほぐす何かが、さっと通り過ぎたような気がしたのだ。
——が、それはごく短い間のことで、それ以上ハル自身にも理解できなかった。
思い直し、3枚のカードとは別の挿入口に白いメモリーカードを合わせる。
「やっぱりそうだ」
サイズはぴったりだった。自動で中へ吸い込まれる。
すぐに簡易ディスプレイに情報が表示された。
「これは……3重に暗号化された円環のセキュリティ解除コードの復号キー、そのうちの1つ……」
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