69 / 116
面影橋メモリーズ
面影橋メモリーズ(8)
しおりを挟むモジャコは身を低くして一気に加速した。
向かってくるボーデをあしらうようによけていく。
そしてその中の1つを流れのままに右脚でいなし、地面に勢いよく叩きつけた——が、ボーデはバウンドして跳ね返った。
「なんだ……!?」
「ボーデには打撃は効かないでござる!」
「それを早くいえっ!」
「むう」
いちおう説明しようとはしていたんですよ。
高架線の上に跳び上がったリグナは、右脚からクロイツェルを分離し、ハンドガンに変形した。
ボーデを狙う——が、ボーデは壁や別の個体にぶつかって跳ね回るものだから、簡単にはいかない。
モジャコのポケットの中で携帯電話が震えた。
ボーデを躱しながら、背面のサブディスプレイを確認する。
ハルからメール着信だ。
ああそういうことか——と、モジャコはようやく合点がいく。
が、スクロールするメッセージは、ごく簡潔にこう伝えていた——。
渡しても構わない。
(???)
ハテナマーク再びどっさり。
ともかく、モジャコは、ニットキャップにしがみついたモモンガもどきを、尻尾を引っつかんでぶん投げた。
「いったん、こっちへ!」
「みょーん」
もうどうにでもなれってね。
滑空してリグナの背中にひっつく。
伝言を聞いて、リグナはモジャコの横に降り立った。
「無理に奪還しなくてもいいことになった。怪しまれない程度に追いかけて戻る」
眠そうな双眸で、なんじゃらほい? とリグナは小首を傾げた。
わかったのかどうかはまるでわからないが、リグナは、高架線を足がかりにマンションの屋上に躍り出た。
クロイツェルをバズーカに変形して肩に担ぐ。
線状の光が、周囲から砲口に収束する。
トリガーを引き絞れば、後ろから勢いよく白い光が噴き出した。
同時に放たれた碧い光弾は、一直線に飛んでいってデッサの背中を直撃。
激しい電撃に包まれながらデッサは地面に落下した。
「ハンパねーな……」
モジャコは呆れる。
手加減がまったくない。
リグナは右脚にクロイツェルを戻し、涼しい顔(といってもいつもそうだけれども)で降り立った。
「デバイスとメディアがどうなったのかは知らない」
あ、そう——と、モジャコは意図を理解した。
取り戻す必要がないのなら、遠慮も忖度もいらないということ。
気の毒なのはジシェで、リグナの背中にへばりついたまま目を回していた。
ハルはもとの場所で待っていて、「おかえり」と手を振って迎えた。
合流して日比谷線の三ノ輪駅へ歩いていく。
「電車の中でリグナちゃんを調整していたとき、こんな1文があったの」
ハルはスマホの画面をモジャコとジシェに見せた。
(ん……んん!?)
何か猛烈な違和感を感じたが、モジャコはとりあえず話を聞くことにした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる


