新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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面影橋メモリーズ

面影橋メモリーズ(14)

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「こんばんはー」

 遠くで、丸眼鏡の誰かが手を振り返した。
 俊徳ミチル、通称ポジヲ——ハルとモジャコの同級生だ。


「来たよ」
「悪いね、急に」
「別にだいじょうぶだよ」

 ——と答えて、ミチルは遠くを指した。

「それで、あの空中に浮かんでいる3つの鏡はなんなの?」
「……!! 見えるのか!? ていうか、3つ……!?」

 モジャコは、驚いてリグナと顔を見合わせた——というのをやりたかったのだが、リグナはミチルを、じぃっ、と見つめていた。

 誰じゃらほーい?


 同級生のポジヲだよ——と、紹介してあげる。

 それはともかく、モジャコは、あらためて遠く神社の上空をにらみつけ、ようやく鏡が増えていることに気がついた。

「ポジ、スポーツ得意だっけ?」
「走るのも投げるのも蹴るのも絶望的」
「お、それなら——」

 と、リグナを見れば、なんじゃらほい? とモジャコを見つめ返した。

 それをさっきやりたかったんだけどねー。

 モジャコに指で「それそれ」といわれて、リグナはようやく額の髪飾りを分離し、ミチルに手渡した。
 促されるがままに、ミチルは変形したゴーグルを装着してみる。

「あー、なんか不思議な感じがする」というのが感想。

 ——と、リグナの眼の焦点が急激に定まった。

 空の1点に視線を据えたまま、リグナはクロイツェルをスナイパーライフルに変形した。

(見えるようになったのか……)

 モジャコは口許でつぶやいた。

 発射された光弾は鏡の中心を貫いた。
 さらにもう1発も命中させる。

「すご!!」

 モジャコは感心するしかない。
 手で制して指示を投げる。

「3つ目はちょい待ち。で、ノナゴナル・フィールド。ポジはあそこに集中しといて」

 まもなく、残りの鏡がひらめいたかと思えば、電撃の光弾が一直線に向かってきた。

 リグナが展開した透明な多角形の平面が弾き返し、瞬間的にバリバリと空気が震え、視界が真っ白になる。

「どっから飛んでくるのか、見えたか!?」

 ミチルとリグナは同時にうなずいた。

 少し戻った十字路で、ミチルは東の空を指さす。
 低く連なる民家の屋根の上に、遠くスカイツリーが半分ほどその姿を見せていた。

 高さ634メートルの先端まで直線距離で2500メートルほど。


 当然ながら、そこに誰かが立っているといわれても、モジャコにはまったく見えない。

 リグナはクロイツェルをバズーカに変形した。
 肩に担ぎ、トリガーを引く。

 緩い放物線を描き、飛んでいった光弾は、過たず何かに着弾した。

 スパークするが、塔のてっぺんから落下していくのだけは、モジャコにもかろうじて見えた。
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