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前ぶれ
安直なのはどっちなんだか
しおりを挟む「徒だ。彼奴は、跡形も無く消し飛んだ!」
「……」
瞳をたぎらせ、ルクフェネは、指先で素早く紋様を描いた。
古代の大剣を実体化する。
「ふははは……、怒りの随に我を斬るか!?」
声はほくそ笑んだ。
(——此奴、日頃、感情を顕に為ない丈に、頭に血が昇り易い。安直に挑発に乗るとは、全く以て芸が無い。返り討ちに為て呉れよう——)
ジェレンは、間合いを取って浮かび上がった。
それを、急速に接近した何かが弾き飛ばした。
リバだ。
吹っ飛ばされたジェレンは建物の壁面に激突する。
四方に亀裂が広がる。
(——ふん)
声は鼻で笑い、ジェレンはすぐに起き上がる——が。
そこには——リバとともに、圭が立っていた。
「何だと……!!」
「安直なのはどっちなんだか?」
「!!」
いつの間にか、ルクフェネが背後に回っていた。
薙ぎ払う。
(斯く成れば、此奴等諸共……なっ!?)
ルクフェネに思い切り蹴り上げられ、視界はすでに上空だった。
(くっ!! 全く何処迄も!!)
ジェレンは大爆発した。
(我が足下に屈せよ——ヨディーレの……)
指先でユクルユフェーアを紡ごうとして、ルクフェネはやめた。
四散したジェレンの残片が、いくつかパラパラと降ってくる。
と、圭は、その場にへたり込んでしまった。
「ケ、ケイ!?」
「圭!?」
リバとルクフェネはほとんど同時に声を上げる。
「だいじょうぶ、ちょっと力が抜けただけ」
あのとき、圭は、とっさにユクルユフェーアを紡いでいた。
(風のように隼のように)
瞬間的にスピードをアップさせるユーグネアだ。
ただ、自分のスピードを上げたところで、たかが知れている。
だから、圭は、とっさに、ユーグネアの力の行き先をリバに振り向けたのだ。
加速したリバは、ジェレンがもろとも地面に激突する直前に、圭をかっさらった。
勢いがつきすぎて、戻ってくるのに、ずいぶん時間がかかってしまったけれども。
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