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始まりの夜
無垢な令嬢は月の輝く夜に甘く乱される~駆け落ちから始まった結婚の結末は私にもわかりませんでした。
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始まりの夜
月がいつになく明るかった。これほどまでに神々しく輝く月をかつて見たことはない。月(ムーン)長石(ストーン)を思わせる丸い月は、どこか気取った両班(ヤンバン)の奥方のようだ。綺麗だけれど、つんと取り澄まして、とりつく島もない。
しかし、この美しさは、どこか奇妙な感情を呼び起こした。言葉ではなかなか言い表せないけれど、しきりに胸の奥がざわめいているような。仮にこの世に存在するあらゆる言葉の中でたとえるとするならば、胸騒ぎとでもいえようか。
とにかく、不吉なほどに美しい月であった。
沙纓(サヨン)は唇をキュッと噛みしめながら、その明るすぎるほど明るい月を眺めていた。
ふいに感情が一挙にこみ上げてきて、サヨンは滲んできた涙をまたたきで散らす。
やはり、もう諦めるしかないのか。
この縁談が正式に両家の間で取り決められてからというもの、サヨンは幾度となく自問自答を繰り返してきた。
サヨンの父高(コ)永歳(ヨンセ)は都漢(ハ)陽(ニヤン)でも名を轟かせている豪商である。商いの才覚には長けている一方で、自らの利を得るためには人の道にもとることも平然と手を下す冷酷な一面もあった。
サヨンには優しい父であったが、ヨンセについて、けして良く言う人ばかり―、というよりむしろ悪く言う人の方が圧倒的に多いのも知っている。
コ氏と李氏(イし)との間でこの縁組みが持ち上がったのが、かれこれ半年ばかりも前になる。
李(イ)舜(スン)天(チヨン)は、父と肩を並べるほどの商人である。いや、現況ではスンチョンの方が羽振りは良いと言っていいだろう。
スンチョンは一介の塩売りから身を起こし、一代で今の身代を築いた男だ。李商団(サンダン)の大行(テヘン)首(ス)として他の大勢の商人たちから一目置かれ、畏怖されるようになるまでには相当阿漕な真似もしたと噂されている。
ヨンセは確かに商売上の取引で情に流されるようなことはなかったが、流石に李スンチョンほど非道ではない。これはあくまでも噂にすぎないけれど、スンチョンは商いのためには殺人ですら平気で行ってきたと囁かれている。
スンチョンのただ一つの弱点は、出自の低いことにあった。大体、商人は良民(ヤンミン)といって、特権階級である両班の下位に甘んじている。実情では名ばかりの下級両班よりはコ氏や李氏のほうがはるかに両班らしい裕福な生活を送っているのに、ただ身分が下だというだけで頭を下げねばならないのだった。
スンチョンは、かねてから名家の娘との婚姻を望んでいた。むろん、既に四十を回った自分ではなく、長男のトクパルの嫁に欲しいと仲介人を通じて申し込んできたのだ。
李氏に比べれば、コ氏は名門である。良民であることに変わりはないが、何しろ数代以上遡れば、その利発さを見込まれて両班家の養子として迎えられた者さえいたというほどなのだ。その家の当主は現在、礼(イエ)曹(ジヨ)判(パン)書(ソ)を務めており、血縁的にはコ氏とその家は繋がりがあるということになる。
同じ大行首という立場にありながら、ヨンセとスンチョンでは格が違った。家格というものは、ただ商才と財力があるだけで補えるものではない。
ゆえに、スンチョンはこれまで敵対し続けてきた商売敵に堂々と縁談を申し込んできたのだ。つまり、名家の出である嫁を迎え、〝なり上がり者〟と陰で悪し様にいわれている李氏に箔をつけようと目論んでいるのだ。スンチョンには十数人の側妾との間にそれこそ二十人近い子女をもうけているという。その中でトクパルだけは早くに亡くなった正妻の子であった。
正妻はスンチョンには似合わないほどの清楚で儚げな佳人であったそうだ。この妻も取引相手の商人の娘であり、相手の屋敷を訪れた際に見初め、半ば攫うようにして連れ帰ったといわれている。
トクパルは亡くなった生母よりは父に似たらしく、ひき蛙のようにぎょろりとした眼とぬめった分厚い口が気持ち悪い。誰が見ても、醜男としか言いようがなかった。
女好きのスンチョンとしては出来の悪い息子よりは、いっそ我が身の継室に貰い受けたかったようだが、流石に外聞をはばかったというのが真相らしかった。
と、これは侍女の美瑛(ミヨン)がこっそりと教えてくれた。
相手がスンチョンであろうと、息子の方であろうと、たいした変わりはない。あんなひき蛙に嫁ぐのかと想像しだたけで、身体中の膚が粟立つような気さえする。
李氏からの申し込みに最初は全く取り合おうとしなかった父ではあったが、そうなると、狡猾なスンチョンは戦法を変えてきた。長年、ヨンセとの間で奪い合っていた取引先や商売上の利権などを気前よく父に譲り渡そうと約束したのである。
それはむろん、李氏からの申し込みを父が承諾すればの話だ。
結局、父はスンチョンの意を入れ、娘を李氏に嫁がせることで話は纏まった。以後はとんとん拍子に話は進んで、ついに明日は結納というところまで来てしまった。
明日になれば、サヨンは綺麗に着飾り、李氏からの膨大な結納品を受け取る儀式に臨むことになるだろう。このままいけば、サヨンは、否応なく李氏に嫁がされてしまう。
では、もし、このままいかなかったら?
突如として、サヨンの脳裏にそんな考えが浮かんだ。
が、直後、ふっと自嘲めいた笑みを零す。
結納前夜に許嫁となる娘が逃げたとあれば、李氏にとっては決定的な恥であり、屈辱だ。父が商売上の利権を得られないばかりでなく、執念深いスンチョンがどのような報復を仕向けてくるか判らない。
それでも、サヨンは厭だった。ひき蛙のようなトクパルの妻となるよりは、道端を歩いている貧しい若者の方がまだマシにすら思える。
トクパルと二人きりになる機会は数えるほどしかなかったけれど、いつも隙を見ては手を握ってくる。その手がまた冬だというのに、じっとりと汗ばんでいて気持ち悪いのだ。サヨンが焦って手を引き抜こうとすると、ますます力を強めてくる。
根は父親であるスンチョンのように性悪ではなく、むしろ愚鈍といえるほど木訥な気性らしい。もしかしたら、外見だけでスンチョンの中身を判断してはいけないのかもしれないと思うときもあったが、サヨンもやはり若い娘のこと、やはり醜男よりは美男の方が好ましく思えてしまうのは致し方ない。
「お嬢さま(アガツシ)、どうかなさったのですか?」
突然、背後から呼ばれ、サヨンは飛び上がった。
「敦(トン)周(ジユ)なのね」
サヨンは小さな息を吐き、声の主に向き直った。
「―泣いていたのですか?」
トンジュは月明かりに冴え冴えときらめく涙の滴(しずく)にめざとく気づいたようだ。
「気にしないで」
サヨンは微笑み、小さく首を振る。
「何がお嬢さまをそこまで哀しませるのでしょう?」
トンジュは控えめな口調で訊く。
サヨンは彼が子どもだった頃を思い出していた。奴隷商人に連れられやってきたトンジュは、いつも怯えたような眼で人を見つめていた。この屋敷に下男として仕えるようになって十一年の歳月は彼を変えた。
もう、見知らぬ人間に身をすくませていた小さな子どもはどこにもいない。あのときはサヨンよりも背の低かったトンジュはいつしかサヨンの背丈を抜き、頭二つ分ほど高くなっていた。
黒いくっきりとした双眸には理知の光が宿り、その挙措には家僕として控えめでいながらも、人としての自信に裏付けられ堂々としている。
トンジュがコ氏に仕える侍女たちからも熱い視線を集めているのを知らぬわけではない。サヨンの身の回りの世話をするミヨンですら、口を開けば、トンジュの名前が出てくる有様なのだから。
もし、李氏の跡取り息子がトクパルではなくソンジュだったら―。
そんな想いが突如として湧き起こり、サヨンは狼狽(うろた)えた。
―私ったら、何を馬鹿なことを。
奴婢であるトンジュは隷民であり、けして良民との婚姻は許されない。この(朝)国(鮮)の根幹をなしているのは徹底した身分制度なのだ。隷民は仕える屋敷の主人の持ち物と見なされ、売買の対象となる。けして〝人〟として扱っては貰えない。
「あなたには関係ないことよ」
わざと素っ気ない口調で応えたのは何もトンジュを軽蔑しているからではなく、むしろ逆であった。
明日、結納を取り交わす将来の良人がトンジュであったなら―と、たとえ一瞬たりとも考えてしまった自分を恥じもしたし、その気持ちをごまかすためでもあった。
「本当に関係ないとおっしゃるのですか?」
放たれた問いに、サヨンはまたたきで応えた。トンジュの言葉の意味を、何より、このような場でそのような問いを投げかけてくる男の意図を計りかねた。
「あなた―、何が言いたいの?」
やや詰問口調になったのは、この場合、やむを得なかった。
そう言いながらも、サヨンは視線をトンジュから逸らせない。ほどよく引き締まった身体には男性らしい筋肉がつき、日々の力仕事で陽に焼けた面は整っていて、精悍さも備わっている。
月がいつになく明るかった。これほどまでに神々しく輝く月をかつて見たことはない。月(ムーン)長石(ストーン)を思わせる丸い月は、どこか気取った両班(ヤンバン)の奥方のようだ。綺麗だけれど、つんと取り澄まして、とりつく島もない。
しかし、この美しさは、どこか奇妙な感情を呼び起こした。言葉ではなかなか言い表せないけれど、しきりに胸の奥がざわめいているような。仮にこの世に存在するあらゆる言葉の中でたとえるとするならば、胸騒ぎとでもいえようか。
とにかく、不吉なほどに美しい月であった。
沙纓(サヨン)は唇をキュッと噛みしめながら、その明るすぎるほど明るい月を眺めていた。
ふいに感情が一挙にこみ上げてきて、サヨンは滲んできた涙をまたたきで散らす。
やはり、もう諦めるしかないのか。
この縁談が正式に両家の間で取り決められてからというもの、サヨンは幾度となく自問自答を繰り返してきた。
サヨンの父高(コ)永歳(ヨンセ)は都漢(ハ)陽(ニヤン)でも名を轟かせている豪商である。商いの才覚には長けている一方で、自らの利を得るためには人の道にもとることも平然と手を下す冷酷な一面もあった。
サヨンには優しい父であったが、ヨンセについて、けして良く言う人ばかり―、というよりむしろ悪く言う人の方が圧倒的に多いのも知っている。
コ氏と李氏(イし)との間でこの縁組みが持ち上がったのが、かれこれ半年ばかりも前になる。
李(イ)舜(スン)天(チヨン)は、父と肩を並べるほどの商人である。いや、現況ではスンチョンの方が羽振りは良いと言っていいだろう。
スンチョンは一介の塩売りから身を起こし、一代で今の身代を築いた男だ。李商団(サンダン)の大行(テヘン)首(ス)として他の大勢の商人たちから一目置かれ、畏怖されるようになるまでには相当阿漕な真似もしたと噂されている。
ヨンセは確かに商売上の取引で情に流されるようなことはなかったが、流石に李スンチョンほど非道ではない。これはあくまでも噂にすぎないけれど、スンチョンは商いのためには殺人ですら平気で行ってきたと囁かれている。
スンチョンのただ一つの弱点は、出自の低いことにあった。大体、商人は良民(ヤンミン)といって、特権階級である両班の下位に甘んじている。実情では名ばかりの下級両班よりはコ氏や李氏のほうがはるかに両班らしい裕福な生活を送っているのに、ただ身分が下だというだけで頭を下げねばならないのだった。
スンチョンは、かねてから名家の娘との婚姻を望んでいた。むろん、既に四十を回った自分ではなく、長男のトクパルの嫁に欲しいと仲介人を通じて申し込んできたのだ。
李氏に比べれば、コ氏は名門である。良民であることに変わりはないが、何しろ数代以上遡れば、その利発さを見込まれて両班家の養子として迎えられた者さえいたというほどなのだ。その家の当主は現在、礼(イエ)曹(ジヨ)判(パン)書(ソ)を務めており、血縁的にはコ氏とその家は繋がりがあるということになる。
同じ大行首という立場にありながら、ヨンセとスンチョンでは格が違った。家格というものは、ただ商才と財力があるだけで補えるものではない。
ゆえに、スンチョンはこれまで敵対し続けてきた商売敵に堂々と縁談を申し込んできたのだ。つまり、名家の出である嫁を迎え、〝なり上がり者〟と陰で悪し様にいわれている李氏に箔をつけようと目論んでいるのだ。スンチョンには十数人の側妾との間にそれこそ二十人近い子女をもうけているという。その中でトクパルだけは早くに亡くなった正妻の子であった。
正妻はスンチョンには似合わないほどの清楚で儚げな佳人であったそうだ。この妻も取引相手の商人の娘であり、相手の屋敷を訪れた際に見初め、半ば攫うようにして連れ帰ったといわれている。
トクパルは亡くなった生母よりは父に似たらしく、ひき蛙のようにぎょろりとした眼とぬめった分厚い口が気持ち悪い。誰が見ても、醜男としか言いようがなかった。
女好きのスンチョンとしては出来の悪い息子よりは、いっそ我が身の継室に貰い受けたかったようだが、流石に外聞をはばかったというのが真相らしかった。
と、これは侍女の美瑛(ミヨン)がこっそりと教えてくれた。
相手がスンチョンであろうと、息子の方であろうと、たいした変わりはない。あんなひき蛙に嫁ぐのかと想像しだたけで、身体中の膚が粟立つような気さえする。
李氏からの申し込みに最初は全く取り合おうとしなかった父ではあったが、そうなると、狡猾なスンチョンは戦法を変えてきた。長年、ヨンセとの間で奪い合っていた取引先や商売上の利権などを気前よく父に譲り渡そうと約束したのである。
それはむろん、李氏からの申し込みを父が承諾すればの話だ。
結局、父はスンチョンの意を入れ、娘を李氏に嫁がせることで話は纏まった。以後はとんとん拍子に話は進んで、ついに明日は結納というところまで来てしまった。
明日になれば、サヨンは綺麗に着飾り、李氏からの膨大な結納品を受け取る儀式に臨むことになるだろう。このままいけば、サヨンは、否応なく李氏に嫁がされてしまう。
では、もし、このままいかなかったら?
突如として、サヨンの脳裏にそんな考えが浮かんだ。
が、直後、ふっと自嘲めいた笑みを零す。
結納前夜に許嫁となる娘が逃げたとあれば、李氏にとっては決定的な恥であり、屈辱だ。父が商売上の利権を得られないばかりでなく、執念深いスンチョンがどのような報復を仕向けてくるか判らない。
それでも、サヨンは厭だった。ひき蛙のようなトクパルの妻となるよりは、道端を歩いている貧しい若者の方がまだマシにすら思える。
トクパルと二人きりになる機会は数えるほどしかなかったけれど、いつも隙を見ては手を握ってくる。その手がまた冬だというのに、じっとりと汗ばんでいて気持ち悪いのだ。サヨンが焦って手を引き抜こうとすると、ますます力を強めてくる。
根は父親であるスンチョンのように性悪ではなく、むしろ愚鈍といえるほど木訥な気性らしい。もしかしたら、外見だけでスンチョンの中身を判断してはいけないのかもしれないと思うときもあったが、サヨンもやはり若い娘のこと、やはり醜男よりは美男の方が好ましく思えてしまうのは致し方ない。
「お嬢さま(アガツシ)、どうかなさったのですか?」
突然、背後から呼ばれ、サヨンは飛び上がった。
「敦(トン)周(ジユ)なのね」
サヨンは小さな息を吐き、声の主に向き直った。
「―泣いていたのですか?」
トンジュは月明かりに冴え冴えときらめく涙の滴(しずく)にめざとく気づいたようだ。
「気にしないで」
サヨンは微笑み、小さく首を振る。
「何がお嬢さまをそこまで哀しませるのでしょう?」
トンジュは控えめな口調で訊く。
サヨンは彼が子どもだった頃を思い出していた。奴隷商人に連れられやってきたトンジュは、いつも怯えたような眼で人を見つめていた。この屋敷に下男として仕えるようになって十一年の歳月は彼を変えた。
もう、見知らぬ人間に身をすくませていた小さな子どもはどこにもいない。あのときはサヨンよりも背の低かったトンジュはいつしかサヨンの背丈を抜き、頭二つ分ほど高くなっていた。
黒いくっきりとした双眸には理知の光が宿り、その挙措には家僕として控えめでいながらも、人としての自信に裏付けられ堂々としている。
トンジュがコ氏に仕える侍女たちからも熱い視線を集めているのを知らぬわけではない。サヨンの身の回りの世話をするミヨンですら、口を開けば、トンジュの名前が出てくる有様なのだから。
もし、李氏の跡取り息子がトクパルではなくソンジュだったら―。
そんな想いが突如として湧き起こり、サヨンは狼狽(うろた)えた。
―私ったら、何を馬鹿なことを。
奴婢であるトンジュは隷民であり、けして良民との婚姻は許されない。この(朝)国(鮮)の根幹をなしているのは徹底した身分制度なのだ。隷民は仕える屋敷の主人の持ち物と見なされ、売買の対象となる。けして〝人〟として扱っては貰えない。
「あなたには関係ないことよ」
わざと素っ気ない口調で応えたのは何もトンジュを軽蔑しているからではなく、むしろ逆であった。
明日、結納を取り交わす将来の良人がトンジュであったなら―と、たとえ一瞬たりとも考えてしまった自分を恥じもしたし、その気持ちをごまかすためでもあった。
「本当に関係ないとおっしゃるのですか?」
放たれた問いに、サヨンはまたたきで応えた。トンジュの言葉の意味を、何より、このような場でそのような問いを投げかけてくる男の意図を計りかねた。
「あなた―、何が言いたいの?」
やや詰問口調になったのは、この場合、やむを得なかった。
そう言いながらも、サヨンは視線をトンジュから逸らせない。ほどよく引き締まった身体には男性らしい筋肉がつき、日々の力仕事で陽に焼けた面は整っていて、精悍さも備わっている。
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