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きっかけは、些細な喧嘩。
僕は家族が大切だった。
親は僕が小学生の時に離婚し、兄と僕と妹は母に引き取られた。
母の親族と父の親族は仲が悪く離婚してからさらに対立した。
そのうえ、母と母の親族も対立し、母は自分の家族と縁を切っていた。
孤立無援の母は女手一つで僕達3人を育ててくれた。
そんな母の力になりたくて僕は家事全般を受け持った。
今では兄は大学生で、勉強に精を出しているせいか、僕らにあまり構ってくれずひとり部屋にこもっている。
妹はまだ小学二年生で、寂しいだろうことを子供ながらに隠している。
僕は中学三年生。
小さい頃からの積み重ねで家事スキルは高くなった…はずだ。
僕の受験が終わった2月の末、家族で旅行に行こうという話になった。
お出かけはいつもみんなで、それがこの家のルールなのでペットのハルも連れていこうとしていた時だった。
兄と母がハルはおいていくと言った。
僕は怒り、それなら僕も家にいる、と言った。
それが最後だった。
僕は二度と母や兄や妹の声を聞くことは無かった。
*
寂しげな瞳で見つめるハルを僕は強く抱きしめる。
目の前には燃えて骨だけになった死体が3つ、写真と共に置いてある。
僕の後ろには、黒い服を着た人達がずらりと並び僕とハルを見つめる。
今日は僕の家族のお葬式。
微かに痛む左目の上の火傷の跡を、僕はそっと撫でた。
どうしてだろう。
涙は出なかった。
ただ、顔を上げることが出来なかった。
「天翔くん、」
その声に僕は身構える。
「本当に残念だったわね。
けど、大丈夫よ。うちに来なさい。
お母さんが残してくれたお金も、私がしっかり預かるから。」
そう言って女は僕に手を伸ばした。
この女がどこの誰だかも忘れた。
だが、さっきからこういう奴がひっきりなしに来る。
母が今まで稼いだお金と、母の生命保険とでとてつもない額のお金が僕の手元に入った。
そのせいで、離婚して離れていったはずの父や母の親族がこんな葬式を開き、ぼくを引き取ろうとする。
僕は伸ばしてきた手を払い、思いっきり女をにらみつけた。
「おばさん、触んないで」
僕のその言葉に女は真っ赤な顔をして離れていった。
「さっきからずっとあの調子よね」
「まったく、せっかく葬式を開いてやったというのに…」
「あの性格はやっぱりお母さん似かしら」
耳に入ってくる陰口に聞こえないふりをする。
いつもと変わらない。
「天翔、久しぶりだな」
聞き覚えのある声が聞こえ僕は振り向いた。
手を振りながら近づいてきたのは僕の父だった。
「ずいぶん大変だったな。ほらうちにおいで。
前みたいに一緒に暮らそう。」
そう言って父は僕の前に立った。
座り込んでいる僕を上から見下ろすようにして立っている。
僕は、ハルをぎゅっと抱きしめると部屋中に響きわたる声で言った。
「金はあげません!」
僕のその声に部屋は静まりかえった。
その部屋にいた全員が僕の方を見つめる。
「迷惑はかけません。学費も生活費も自分で払います。家事もします。
ただし金はあげません。ハルも僕と一緒にいます。
それでも僕を引き取ってくれる人がいるなら名乗り出てください。」
僕がそう言うと、みんな僕から目を逸らし始める。
期待はしていなかった。
引き取ってくれるだなんて思ってもいなかった。
僕はハルを抱き立ち上がった。
その時、
「俺が引き取ろう。」
僕の耳にそう聞こえた。
僕は家族が大切だった。
親は僕が小学生の時に離婚し、兄と僕と妹は母に引き取られた。
母の親族と父の親族は仲が悪く離婚してからさらに対立した。
そのうえ、母と母の親族も対立し、母は自分の家族と縁を切っていた。
孤立無援の母は女手一つで僕達3人を育ててくれた。
そんな母の力になりたくて僕は家事全般を受け持った。
今では兄は大学生で、勉強に精を出しているせいか、僕らにあまり構ってくれずひとり部屋にこもっている。
妹はまだ小学二年生で、寂しいだろうことを子供ながらに隠している。
僕は中学三年生。
小さい頃からの積み重ねで家事スキルは高くなった…はずだ。
僕の受験が終わった2月の末、家族で旅行に行こうという話になった。
お出かけはいつもみんなで、それがこの家のルールなのでペットのハルも連れていこうとしていた時だった。
兄と母がハルはおいていくと言った。
僕は怒り、それなら僕も家にいる、と言った。
それが最後だった。
僕は二度と母や兄や妹の声を聞くことは無かった。
*
寂しげな瞳で見つめるハルを僕は強く抱きしめる。
目の前には燃えて骨だけになった死体が3つ、写真と共に置いてある。
僕の後ろには、黒い服を着た人達がずらりと並び僕とハルを見つめる。
今日は僕の家族のお葬式。
微かに痛む左目の上の火傷の跡を、僕はそっと撫でた。
どうしてだろう。
涙は出なかった。
ただ、顔を上げることが出来なかった。
「天翔くん、」
その声に僕は身構える。
「本当に残念だったわね。
けど、大丈夫よ。うちに来なさい。
お母さんが残してくれたお金も、私がしっかり預かるから。」
そう言って女は僕に手を伸ばした。
この女がどこの誰だかも忘れた。
だが、さっきからこういう奴がひっきりなしに来る。
母が今まで稼いだお金と、母の生命保険とでとてつもない額のお金が僕の手元に入った。
そのせいで、離婚して離れていったはずの父や母の親族がこんな葬式を開き、ぼくを引き取ろうとする。
僕は伸ばしてきた手を払い、思いっきり女をにらみつけた。
「おばさん、触んないで」
僕のその言葉に女は真っ赤な顔をして離れていった。
「さっきからずっとあの調子よね」
「まったく、せっかく葬式を開いてやったというのに…」
「あの性格はやっぱりお母さん似かしら」
耳に入ってくる陰口に聞こえないふりをする。
いつもと変わらない。
「天翔、久しぶりだな」
聞き覚えのある声が聞こえ僕は振り向いた。
手を振りながら近づいてきたのは僕の父だった。
「ずいぶん大変だったな。ほらうちにおいで。
前みたいに一緒に暮らそう。」
そう言って父は僕の前に立った。
座り込んでいる僕を上から見下ろすようにして立っている。
僕は、ハルをぎゅっと抱きしめると部屋中に響きわたる声で言った。
「金はあげません!」
僕のその声に部屋は静まりかえった。
その部屋にいた全員が僕の方を見つめる。
「迷惑はかけません。学費も生活費も自分で払います。家事もします。
ただし金はあげません。ハルも僕と一緒にいます。
それでも僕を引き取ってくれる人がいるなら名乗り出てください。」
僕がそう言うと、みんな僕から目を逸らし始める。
期待はしていなかった。
引き取ってくれるだなんて思ってもいなかった。
僕はハルを抱き立ち上がった。
その時、
「俺が引き取ろう。」
僕の耳にそう聞こえた。
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