4 / 14
1つ目 4
しおりを挟む
僕は八幡天翔(やはたあまと)。
親が離婚する前、つまり6年前までは皇天翔(すめらぎあまと)だった。
皇という名はもう捨てたし、八幡と呼ばれるのもあまり好きじゃない。
けど、みんな僕を八幡くんと呼ぶ。
だから僕も他人を名前で呼んだことは無い。
*
車が止まった。
外を見渡すと地下の駐車場のようだった。
「そーいえば、その犬っていつから飼ってんの?」
男は車から降りると僕に聞いた。
「あ、離婚してからです。
確か今年で6歳になります。」
僕も急いで車から降りる。
「あの、ここは?」
僕は不思議そうに辺りを見渡しながら言う。
「俺の家」
男はそう言って歩き出した。
「あ、あの!皇さん!」
僕が男の袖を掴むと、男は少し驚いたように僕を見つめる。
「ご、ごめんなさい…」
僕はそっと手を離した。
男はそんな僕を見て、頭を掻きながら苦笑いで口を開いた。
「あー、その皇さんってのやめようか。
お前の父さんも皇さんだろ?」
男のその言葉に僕は頭を巡らせる。
「じゃあ…うみさん?」
「…」
あたりが静まりかえったかと思うと、男が大きな声を上げて笑い出した。
「ご、ごめんっ。
俺の名前っ、うみじゃないんだっ。」
笑いながらそう言う男に僕は真っ赤になって言い返す。
「じ、じゃあ、なんて読むんですか?」
「『かい』だよ。」
目じりに涙を浮かべて言う男を、睨みながら僕は言う。
「かいさん…!」
「ううん」
僕のその言葉に男は首を振った。
「『うみ』でいいよ。」
そう微笑む顔があまりにも眩しくて僕は目を逸らしてしまう。
またもや、ハルの背中に赤くなった顔を埋めながら僕は小さく呟いた。
「うみさん…」
「ん。じゃあ俺は…」
男は僕の顔を覗き込むとまた輝くような笑顔で言った。
「天翔!」
くすぐったいその呼び方に僕はまた目を逸らしてしまう。
「なんで目逸らすの?ねぇ、天翔?」
「し、知らない…」
僕はハルの背中で必死に顔を隠しながら男から逃げる。
こんな真っ赤な顔を見せる訳にはいかない。
こんな、変な顔は見せられない。
今までにこんな人はいなかった。
こんなに優しくて、こんなにくすぐったい人は…
「まったく、天翔は冷たいね」
男はわかりやすく拗ねる。
僕はその背中に近づきそっと呟いた。
「…ありがと、拾ってくれて…」
その言葉に男、もというみさんはまたあの眩しい笑顔を僕に見せた。
「『天を翔ける龍のように』…」
母のその言葉が浮かび、ふと声に出してしまった。
「なに?名前の由来?」
駐車場ではしゃぎすぎ、そろそろ迷惑になると思った僕は建物の中へ入った。
エレベーターに乗るとうみさんが最上階のボタンを押したことに驚いた。
建物の大きさや綺麗さにも驚きつつ、うみさんとの会話を続ける。
「はい、母が昔言ってました。」
「じゃあ、残念だね。
こんな身長じゃお世辞にもかっこいいなんて言えないね。」
うみさんの失礼な発言に僕は真っ赤になって声を上げる。
「ち、ちびで悪かったですね!」
僕の真っ赤な顔を見てうみさんはまたクスクスと笑う。
「身長いくつ?」
「165…これからもっと伸びる予定です…」
「ぶはっ」
僕の言葉にうみさんはわかりやすく吹き出して笑う。
「くぅ…」
僕はそんなうみさんを睨みつけた。
これからこの人との生活が始まる。
親が離婚する前、つまり6年前までは皇天翔(すめらぎあまと)だった。
皇という名はもう捨てたし、八幡と呼ばれるのもあまり好きじゃない。
けど、みんな僕を八幡くんと呼ぶ。
だから僕も他人を名前で呼んだことは無い。
*
車が止まった。
外を見渡すと地下の駐車場のようだった。
「そーいえば、その犬っていつから飼ってんの?」
男は車から降りると僕に聞いた。
「あ、離婚してからです。
確か今年で6歳になります。」
僕も急いで車から降りる。
「あの、ここは?」
僕は不思議そうに辺りを見渡しながら言う。
「俺の家」
男はそう言って歩き出した。
「あ、あの!皇さん!」
僕が男の袖を掴むと、男は少し驚いたように僕を見つめる。
「ご、ごめんなさい…」
僕はそっと手を離した。
男はそんな僕を見て、頭を掻きながら苦笑いで口を開いた。
「あー、その皇さんってのやめようか。
お前の父さんも皇さんだろ?」
男のその言葉に僕は頭を巡らせる。
「じゃあ…うみさん?」
「…」
あたりが静まりかえったかと思うと、男が大きな声を上げて笑い出した。
「ご、ごめんっ。
俺の名前っ、うみじゃないんだっ。」
笑いながらそう言う男に僕は真っ赤になって言い返す。
「じ、じゃあ、なんて読むんですか?」
「『かい』だよ。」
目じりに涙を浮かべて言う男を、睨みながら僕は言う。
「かいさん…!」
「ううん」
僕のその言葉に男は首を振った。
「『うみ』でいいよ。」
そう微笑む顔があまりにも眩しくて僕は目を逸らしてしまう。
またもや、ハルの背中に赤くなった顔を埋めながら僕は小さく呟いた。
「うみさん…」
「ん。じゃあ俺は…」
男は僕の顔を覗き込むとまた輝くような笑顔で言った。
「天翔!」
くすぐったいその呼び方に僕はまた目を逸らしてしまう。
「なんで目逸らすの?ねぇ、天翔?」
「し、知らない…」
僕はハルの背中で必死に顔を隠しながら男から逃げる。
こんな真っ赤な顔を見せる訳にはいかない。
こんな、変な顔は見せられない。
今までにこんな人はいなかった。
こんなに優しくて、こんなにくすぐったい人は…
「まったく、天翔は冷たいね」
男はわかりやすく拗ねる。
僕はその背中に近づきそっと呟いた。
「…ありがと、拾ってくれて…」
その言葉に男、もというみさんはまたあの眩しい笑顔を僕に見せた。
「『天を翔ける龍のように』…」
母のその言葉が浮かび、ふと声に出してしまった。
「なに?名前の由来?」
駐車場ではしゃぎすぎ、そろそろ迷惑になると思った僕は建物の中へ入った。
エレベーターに乗るとうみさんが最上階のボタンを押したことに驚いた。
建物の大きさや綺麗さにも驚きつつ、うみさんとの会話を続ける。
「はい、母が昔言ってました。」
「じゃあ、残念だね。
こんな身長じゃお世辞にもかっこいいなんて言えないね。」
うみさんの失礼な発言に僕は真っ赤になって声を上げる。
「ち、ちびで悪かったですね!」
僕の真っ赤な顔を見てうみさんはまたクスクスと笑う。
「身長いくつ?」
「165…これからもっと伸びる予定です…」
「ぶはっ」
僕の言葉にうみさんはわかりやすく吹き出して笑う。
「くぅ…」
僕はそんなうみさんを睨みつけた。
これからこの人との生活が始まる。
0
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる