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熱かった。
燃えるように、ただただ熱かった。
中にいる皆はきっと、痛かっただろう。
苦しかっただろう。寂しかっただろう。
憎かったろう…。
*
「んで、その傷、なんなの?」
「え…」
僕は左目の上の傷を押さえた。
髪で隠していたつもりだったが、見えてしまったのか?
「ずいぶん新しい傷だから、気になってね」
僕のことを少しも見ずに淡々と告げるその言葉の冷たさに僕は口を開けなくなった。
「実は俺、最近こっち帰ってきたところだからさよく知らないんだよ、何があったか。
お前の親が離婚したことしか知らない。」
男は言う。
僕はまた小さくなった。
「俺の家までさ、もう少しかかるから、
長話してもらっていいよ。」
さっきとは打って変わって優しい声音に、僕は震えながら口を開いた。
「お母さん達が死んだのは、一週間前…
僕の受験が終わってすぐの時でした。」
「うん…」
母と兄と妹だけで車に乗って旅行に行ってしまった。
喧嘩をしていた僕はその日初めて家族を見送らなかった。
そのすぐあとだった、
僕の家はアパートで、少し行ったところに大きな交差点があった。
いつも、危ないから気をつけて渡りなさい、と言われていた。
その辺で大きな音がし、驚いてそこまで走っていった。
その交差点のど真ん中でトラックと車が燃えていた。
声が聞こえた、気がした。
『助けて、あまと…』
って、母の声が聞こえた気がした。
僕は火の中へ飛び込んだ。
周りの人が止めるのも聞かず、救急車や消防車も待たず。
車は既に中まで燃えており、助けようとしたが熱くてどうしようも出来なかった。
その時、上から燃えたトラックの破片が落ちてきた。
それが左目の上に当たり、僕はそこで気を失った。
目が覚めたらそこは病院だった。
事故からまだ1日も経っていないらしい。
ハルはアパートの大家さんが預かってくれていた。
僕は真っ黒になった3人の死体の前で何も出来なかった。
泣くことすらもできなかった。
「僕はみんなを助けられなかった…」
僕が語り終えると、男は右手で僕の頭を撫でた。
「ちょっ、危ないって…」
クシャクシャになるまで頭を撫でると男は小さく笑った。
「よく頑張ったな」
予想外のその言葉は僕の心の奥まで突き刺さった。
『大変だったね』とか『残念だったね』とか
そんな言葉なんかより、ずっと深くまで…。
僕は涙が出そうになるのを抑えながら、ハルのモコモコの背中に顔をうずめた。
そんな僕の頭を男はまた撫でる。
「事故しても知らないよ…」
「安心しろこれは自動運転サポート付きだ。」
僕のぶっきらぼうな言葉に男は笑いながら言う。
ずっと言って欲しかった、単純な言葉。
父と母が離婚してからずっと、言ってもらいたかった言葉。
ねぇ、やっぱり僕…
頑張ってたよね。
燃えるように、ただただ熱かった。
中にいる皆はきっと、痛かっただろう。
苦しかっただろう。寂しかっただろう。
憎かったろう…。
*
「んで、その傷、なんなの?」
「え…」
僕は左目の上の傷を押さえた。
髪で隠していたつもりだったが、見えてしまったのか?
「ずいぶん新しい傷だから、気になってね」
僕のことを少しも見ずに淡々と告げるその言葉の冷たさに僕は口を開けなくなった。
「実は俺、最近こっち帰ってきたところだからさよく知らないんだよ、何があったか。
お前の親が離婚したことしか知らない。」
男は言う。
僕はまた小さくなった。
「俺の家までさ、もう少しかかるから、
長話してもらっていいよ。」
さっきとは打って変わって優しい声音に、僕は震えながら口を開いた。
「お母さん達が死んだのは、一週間前…
僕の受験が終わってすぐの時でした。」
「うん…」
母と兄と妹だけで車に乗って旅行に行ってしまった。
喧嘩をしていた僕はその日初めて家族を見送らなかった。
そのすぐあとだった、
僕の家はアパートで、少し行ったところに大きな交差点があった。
いつも、危ないから気をつけて渡りなさい、と言われていた。
その辺で大きな音がし、驚いてそこまで走っていった。
その交差点のど真ん中でトラックと車が燃えていた。
声が聞こえた、気がした。
『助けて、あまと…』
って、母の声が聞こえた気がした。
僕は火の中へ飛び込んだ。
周りの人が止めるのも聞かず、救急車や消防車も待たず。
車は既に中まで燃えており、助けようとしたが熱くてどうしようも出来なかった。
その時、上から燃えたトラックの破片が落ちてきた。
それが左目の上に当たり、僕はそこで気を失った。
目が覚めたらそこは病院だった。
事故からまだ1日も経っていないらしい。
ハルはアパートの大家さんが預かってくれていた。
僕は真っ黒になった3人の死体の前で何も出来なかった。
泣くことすらもできなかった。
「僕はみんなを助けられなかった…」
僕が語り終えると、男は右手で僕の頭を撫でた。
「ちょっ、危ないって…」
クシャクシャになるまで頭を撫でると男は小さく笑った。
「よく頑張ったな」
予想外のその言葉は僕の心の奥まで突き刺さった。
『大変だったね』とか『残念だったね』とか
そんな言葉なんかより、ずっと深くまで…。
僕は涙が出そうになるのを抑えながら、ハルのモコモコの背中に顔をうずめた。
そんな僕の頭を男はまた撫でる。
「事故しても知らないよ…」
「安心しろこれは自動運転サポート付きだ。」
僕のぶっきらぼうな言葉に男は笑いながら言う。
ずっと言って欲しかった、単純な言葉。
父と母が離婚してからずっと、言ってもらいたかった言葉。
ねぇ、やっぱり僕…
頑張ってたよね。
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