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3つ目 【海 目線】
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子どもを拾った。
まだ高校生にもなっていない子どもだ。
なんとためにと聞かれたら、あの人のためと答える以外ない。
まだ未練がましくあの人のことを忘れられないでいるのだ。
女々しいと言いたければ言ってくれ。
あの人が結婚すると聞いた時は絶望したし、
あの人が夫からDVを受けていると聞いた時は助けたいとも思った。
助けようとしたが、激しく拒絶された時は海外にまで逃げた。
みんなは俺を完璧と言うが、そうでも無い。
恋愛ひとつこなせない俺は、完璧とは言えない。
あの人のことを忘れられず、他の人とも一切恋愛などしてこなかった。
そんな俺が1人の子どもを拾い、額の傷にイライラし、ただのカレーで子どもみたいに喜んでしまったのは、間違いだったと信じたい。
だけど
独り、ベッドの上で泣きながら眠る子どもにここまで胸を痛めているあたりずいぶんこの子どもに入れ込んでしまっているようだ。
あいつの記憶が無いくらい昔に一度会ったくらいの関係だ。
あいつ自身、俺と会ったのは初めてだと思っているだろう。
なのになぜ、こいつにここまで入れ込むのだろう…
*
「んっ」
カーテンの隙間から光が差し込み、俺の顔を照らした。
その眩さに少しずつ瞼を上げる。
今日は日曜日だ。
仕事も休みでゆっくり休めるはずだ。
昨日は帰ってきて仕事をするや否や、天翔が引き取り手を探していることを知り、急いで向かったのだ。
ここ3日ほど寝ていなかったため、今日は日が高くなるまで寝てしまった。
枕元にあるデジタルの目覚まし時計を見ると、10時を過ぎていた。
ゆっくり体を起こし、耳をすました。
(何の音もしない、あいつも寝ているのか?)
そんなことを思いながら立ち上がり、顔を洗いに洗面台へ向かった。
目が冴え、リビングに向かうとテーブルの上に置き手紙がしてあった。
『今日一日出かけます
すぐに帰ります
天翔 』
きれいな字でそう書いてあった。
(出かけているのか…)
俺が天翔の行動を縛る理由もないので、追いかけようとも思わなかった。
「もう16の男だしな…」
静かな部屋にそう漏らすと、やけにきれいな字の置き手紙を机に置いた。
「…ん?」
机の上にある、ラップをされたお皿に目をとめる。
中には焼き魚と卵焼き、ほうれん草のおひたしが入っていた。
コンロの方を見ると味噌汁もあった。
「食えってか…」
俺は苦笑いをしながら、天翔の真面目さを再確認した。
(あいつは真面目でいい子だと聞いていたが、その通りだ。)
やらなければいけないことがあったことを思い出し、食器を片付ける。
腹が満たされたおかげで頭もさえてきた。
その後、約7時間近く部屋にこもっていた。
ピリリリリリッ
携帯電話が音を立て、驚きつつも電話をとった。
「もしもし…」
窓の外はもう日も暮れ始めている。
俺は軽く伸びをした。
『副会長、急ぎの要件です』
慌てた秘書の声に背筋が伸び、もう一度頭を仕事モードに切り替える。
「なんだ?」
『副会長が引き取った天翔さんが、昔の自身の家で火遊びをしていて危ないと、近所の方から連絡が入りました』
「?…はい?」
『急ぎ迎えに来いとのことです
では…』
秘書がそう言い残すと、電話は切られ無機質なブザー音に切り替わった。
(前の家で、あいつ何してんだ?)
天翔の住んでいた家は別の人が住むことになり、天翔自身もあの家の荷物を少しずつ片付けていたところだった。
「あ、まさか…」
俺は上着を手に取り、家を出た。
もう日も落ちかけた、5時半のことだ。
まだ高校生にもなっていない子どもだ。
なんとためにと聞かれたら、あの人のためと答える以外ない。
まだ未練がましくあの人のことを忘れられないでいるのだ。
女々しいと言いたければ言ってくれ。
あの人が結婚すると聞いた時は絶望したし、
あの人が夫からDVを受けていると聞いた時は助けたいとも思った。
助けようとしたが、激しく拒絶された時は海外にまで逃げた。
みんなは俺を完璧と言うが、そうでも無い。
恋愛ひとつこなせない俺は、完璧とは言えない。
あの人のことを忘れられず、他の人とも一切恋愛などしてこなかった。
そんな俺が1人の子どもを拾い、額の傷にイライラし、ただのカレーで子どもみたいに喜んでしまったのは、間違いだったと信じたい。
だけど
独り、ベッドの上で泣きながら眠る子どもにここまで胸を痛めているあたりずいぶんこの子どもに入れ込んでしまっているようだ。
あいつの記憶が無いくらい昔に一度会ったくらいの関係だ。
あいつ自身、俺と会ったのは初めてだと思っているだろう。
なのになぜ、こいつにここまで入れ込むのだろう…
*
「んっ」
カーテンの隙間から光が差し込み、俺の顔を照らした。
その眩さに少しずつ瞼を上げる。
今日は日曜日だ。
仕事も休みでゆっくり休めるはずだ。
昨日は帰ってきて仕事をするや否や、天翔が引き取り手を探していることを知り、急いで向かったのだ。
ここ3日ほど寝ていなかったため、今日は日が高くなるまで寝てしまった。
枕元にあるデジタルの目覚まし時計を見ると、10時を過ぎていた。
ゆっくり体を起こし、耳をすました。
(何の音もしない、あいつも寝ているのか?)
そんなことを思いながら立ち上がり、顔を洗いに洗面台へ向かった。
目が冴え、リビングに向かうとテーブルの上に置き手紙がしてあった。
『今日一日出かけます
すぐに帰ります
天翔 』
きれいな字でそう書いてあった。
(出かけているのか…)
俺が天翔の行動を縛る理由もないので、追いかけようとも思わなかった。
「もう16の男だしな…」
静かな部屋にそう漏らすと、やけにきれいな字の置き手紙を机に置いた。
「…ん?」
机の上にある、ラップをされたお皿に目をとめる。
中には焼き魚と卵焼き、ほうれん草のおひたしが入っていた。
コンロの方を見ると味噌汁もあった。
「食えってか…」
俺は苦笑いをしながら、天翔の真面目さを再確認した。
(あいつは真面目でいい子だと聞いていたが、その通りだ。)
やらなければいけないことがあったことを思い出し、食器を片付ける。
腹が満たされたおかげで頭もさえてきた。
その後、約7時間近く部屋にこもっていた。
ピリリリリリッ
携帯電話が音を立て、驚きつつも電話をとった。
「もしもし…」
窓の外はもう日も暮れ始めている。
俺は軽く伸びをした。
『副会長、急ぎの要件です』
慌てた秘書の声に背筋が伸び、もう一度頭を仕事モードに切り替える。
「なんだ?」
『副会長が引き取った天翔さんが、昔の自身の家で火遊びをしていて危ないと、近所の方から連絡が入りました』
「?…はい?」
『急ぎ迎えに来いとのことです
では…』
秘書がそう言い残すと、電話は切られ無機質なブザー音に切り替わった。
(前の家で、あいつ何してんだ?)
天翔の住んでいた家は別の人が住むことになり、天翔自身もあの家の荷物を少しずつ片付けていたところだった。
「あ、まさか…」
俺は上着を手に取り、家を出た。
もう日も落ちかけた、5時半のことだ。
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