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11. 暗闇での会話
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「マリアとはそう言う関係ではないんだ。」
アレクサンドルがまず話題にしたのはマリアのことだった。
「マリアはとても優秀で進歩的な考えを持っている。それに人をたらし込むのがうまい。」
「アレクサンドル殿下もたらし込まれたのではございませんの?学園時代、ずっとそのような噂がありましたわ。」
「あぁ、そうだ。確かにそのような噂があったことは知っているよ。それをあえて否定もしなかった。しかし、そこに恋だの愛だのと言う感情はお互いになかった、と思う。俺はあの堅苦しい王宮にクサクサしていたし、マリアの考える進歩的な考えはとても魅力的だった。しかし、ある時から彼女がとても危険だと感じるようになった。」
アレクサンドルはやはり淡々と話をする。
カテリーナは「危険・・・?」と呟いていた。
「マリアは放っておくと王制を崩壊させるきっかけになりかねない。」
カテリーナはヒュッと息を呑んだ。
「それで、考えた結果、彼女を王家に取り込むことにした。そうすれば王家を倒すのではなく中から改革してくれるだろう。それは彼女にも伝えてある。彼女は俺が王になった時、女宰相として活躍してくれる事だろう。」
「それであれば結婚する必要はなかったのでは?」
情報量が多くてカテリーナはあまり深く考えられていない。頭の隅で感じた疑問が口をついて出た。
「今の制度だと女性が王宮で働くのは侍女やメイドが精一杯でどれだけ優秀でも政務には携われないんだ。女性が政務に携わるには地位が必要だ。地位を与えるため、彼女を妃にした。」
アレクサンドルの言っていることはわかる。しかし、二人の間に恋愛感情があったかなかったかということに関してカテリーナにはあまり興味が抱けなかった。正直に言うとどうでもよかった。
しばらく二人の間に沈黙が流れた。
「カテリーナを王宮から追い出した時、俺は君のことを何も知らなかった。」
まぁ、そうだろうな、と思う。アレクサンドルは清々しいほどにカテリーナに興味がなかった。二人で会話することもなければカテリーナと視線を合わせることもなかったのだから。
「だからカテリーナが王都であれほど人気があるだなんて知らなかったんだ。」
その言葉を聞いた時、カテリーナの胸の奥に温かいものが広がった。カテリーナがこれまでしてきた活動を認められたような気がした。
「政務で王都に降りた時に、民が不敬も恐れずに言ってきたんだ、何故あの優しい王太子妃をないがしろにするのかと。」
「民が・・・」
胸に広がった温かいものがさらに広がり涙となって溢れてきた。カテリーナが王宮にあがって9年の間、民の生活について心を砕いてきた。その事を認めてくれるのは王妃だけだったが、民にもちゃんと伝わっていたのだということが嬉しかった。
王宮では王太子と王太子妃の仲が良くないというのは暗黙の了解として誰もが知っていたが、王宮の外には伝わっていなかった。
それが、王太子妃が王宮から追い出された事をきっかけに民も知るところになったのだろう。
「そう言われた時、俺は勿論、マリアの事を言ったさ。でも民は本当にそんな事があったのですか?ちゃんと調べたのですか?勘違いということもあるんじゃないですか?と更に詰め寄ってきた」
そう言ってアレクサンドルはため息をついた。
「俺は何も言えなかった。そりゃそうだ。俺はマリアのいう事を信じるばかりで君の意見を何一つ聞いていなかったのだから。それで・・・」
アレクサンドルは少し言葉を途切れさせた。カテリーナはアレクサンドルの言葉を辛抱強く待った。
「それで・・・俺は君の意見を聞きたいと・・・そう思ったんだ。」
アレクサンドルの言葉はぽつりぽつりと呟かれる。
「どうか、この話を聞いて俺を軽蔑しないでほしい。」
アレクサンドルは何かを覚悟したようにまた流暢に話し始めた。
「俺は君と話をしたくて離宮にあいにいった。でも、覚悟が決まらなくて湖畔を散歩してたんだ。その時、水色のドレスを着た可憐なお嬢さんに出会った。はにかんだ笑顔が可愛いお嬢さんだった。目が悪いのか俺が王太子だとは気付いていなかった。だから俺を平民だと思って接してくるのが新鮮で・・・」
と、そこまで話を聞いてカテリーナは察した。
「アリフレート?」
カテリーナの発した声は思いの外大きく、咎めるような口調となってしまった。
「あぁ、アリフレートは俺だ。君が離宮に住んでいると言うまで俺は君のことがわからなかった。髪形とドレスの雰囲気が違うだけで君だと認識できなかったんだ。君だと知った時にはもう俺は君に惹かれていたんだと思う。君の手に結婚の指輪が嵌まっているのを見てすごくがっかりしていたんだ。でも、夫が自分だと気付いて嬉しさと共に絶望もした。この9年の態度を考えるとカテリーナがアレクサンドル王太子の事をよく思っていないだろうことは容易に想像できた。俺は咄嗟に嘘の名前を名乗っていた。」
カテリーナの心は爆発寸前だった。
カテリーナは確かにアリフレートに惹かれていた。アリフレートに妻があると知ってカテリーナは何度も諦めなくてはいけないと思っていた。
それがまさか自分の夫だったなんて・・・
「出て行って。」
カテリーナは落ち着いて考えたくてそう呟いていた。
「一人にしてちょうだい。」
アレクサンドルはしばらくカテリーナの反応を待ったがカテリーナの反応が変わらないのでそっと腰を上げると部屋から出て行った。
アレクサンドルがまず話題にしたのはマリアのことだった。
「マリアはとても優秀で進歩的な考えを持っている。それに人をたらし込むのがうまい。」
「アレクサンドル殿下もたらし込まれたのではございませんの?学園時代、ずっとそのような噂がありましたわ。」
「あぁ、そうだ。確かにそのような噂があったことは知っているよ。それをあえて否定もしなかった。しかし、そこに恋だの愛だのと言う感情はお互いになかった、と思う。俺はあの堅苦しい王宮にクサクサしていたし、マリアの考える進歩的な考えはとても魅力的だった。しかし、ある時から彼女がとても危険だと感じるようになった。」
アレクサンドルはやはり淡々と話をする。
カテリーナは「危険・・・?」と呟いていた。
「マリアは放っておくと王制を崩壊させるきっかけになりかねない。」
カテリーナはヒュッと息を呑んだ。
「それで、考えた結果、彼女を王家に取り込むことにした。そうすれば王家を倒すのではなく中から改革してくれるだろう。それは彼女にも伝えてある。彼女は俺が王になった時、女宰相として活躍してくれる事だろう。」
「それであれば結婚する必要はなかったのでは?」
情報量が多くてカテリーナはあまり深く考えられていない。頭の隅で感じた疑問が口をついて出た。
「今の制度だと女性が王宮で働くのは侍女やメイドが精一杯でどれだけ優秀でも政務には携われないんだ。女性が政務に携わるには地位が必要だ。地位を与えるため、彼女を妃にした。」
アレクサンドルの言っていることはわかる。しかし、二人の間に恋愛感情があったかなかったかということに関してカテリーナにはあまり興味が抱けなかった。正直に言うとどうでもよかった。
しばらく二人の間に沈黙が流れた。
「カテリーナを王宮から追い出した時、俺は君のことを何も知らなかった。」
まぁ、そうだろうな、と思う。アレクサンドルは清々しいほどにカテリーナに興味がなかった。二人で会話することもなければカテリーナと視線を合わせることもなかったのだから。
「だからカテリーナが王都であれほど人気があるだなんて知らなかったんだ。」
その言葉を聞いた時、カテリーナの胸の奥に温かいものが広がった。カテリーナがこれまでしてきた活動を認められたような気がした。
「政務で王都に降りた時に、民が不敬も恐れずに言ってきたんだ、何故あの優しい王太子妃をないがしろにするのかと。」
「民が・・・」
胸に広がった温かいものがさらに広がり涙となって溢れてきた。カテリーナが王宮にあがって9年の間、民の生活について心を砕いてきた。その事を認めてくれるのは王妃だけだったが、民にもちゃんと伝わっていたのだということが嬉しかった。
王宮では王太子と王太子妃の仲が良くないというのは暗黙の了解として誰もが知っていたが、王宮の外には伝わっていなかった。
それが、王太子妃が王宮から追い出された事をきっかけに民も知るところになったのだろう。
「そう言われた時、俺は勿論、マリアの事を言ったさ。でも民は本当にそんな事があったのですか?ちゃんと調べたのですか?勘違いということもあるんじゃないですか?と更に詰め寄ってきた」
そう言ってアレクサンドルはため息をついた。
「俺は何も言えなかった。そりゃそうだ。俺はマリアのいう事を信じるばかりで君の意見を何一つ聞いていなかったのだから。それで・・・」
アレクサンドルは少し言葉を途切れさせた。カテリーナはアレクサンドルの言葉を辛抱強く待った。
「それで・・・俺は君の意見を聞きたいと・・・そう思ったんだ。」
アレクサンドルの言葉はぽつりぽつりと呟かれる。
「どうか、この話を聞いて俺を軽蔑しないでほしい。」
アレクサンドルは何かを覚悟したようにまた流暢に話し始めた。
「俺は君と話をしたくて離宮にあいにいった。でも、覚悟が決まらなくて湖畔を散歩してたんだ。その時、水色のドレスを着た可憐なお嬢さんに出会った。はにかんだ笑顔が可愛いお嬢さんだった。目が悪いのか俺が王太子だとは気付いていなかった。だから俺を平民だと思って接してくるのが新鮮で・・・」
と、そこまで話を聞いてカテリーナは察した。
「アリフレート?」
カテリーナの発した声は思いの外大きく、咎めるような口調となってしまった。
「あぁ、アリフレートは俺だ。君が離宮に住んでいると言うまで俺は君のことがわからなかった。髪形とドレスの雰囲気が違うだけで君だと認識できなかったんだ。君だと知った時にはもう俺は君に惹かれていたんだと思う。君の手に結婚の指輪が嵌まっているのを見てすごくがっかりしていたんだ。でも、夫が自分だと気付いて嬉しさと共に絶望もした。この9年の態度を考えるとカテリーナがアレクサンドル王太子の事をよく思っていないだろうことは容易に想像できた。俺は咄嗟に嘘の名前を名乗っていた。」
カテリーナの心は爆発寸前だった。
カテリーナは確かにアリフレートに惹かれていた。アリフレートに妻があると知ってカテリーナは何度も諦めなくてはいけないと思っていた。
それがまさか自分の夫だったなんて・・・
「出て行って。」
カテリーナは落ち着いて考えたくてそう呟いていた。
「一人にしてちょうだい。」
アレクサンドルはしばらくカテリーナの反応を待ったがカテリーナの反応が変わらないのでそっと腰を上げると部屋から出て行った。
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