【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚

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そんな中、考えもしなかったことが起こった。
なんと、侯爵が王族との縁談を持ってきたのだ。それも王太子であるギルバートとの。
最初は侯爵が縁談を勝ち取るためにどんな手を使ったのだろうかと恐々としていたのだが、まさかの王家側から持ちかけられた話だという。
侯爵家としては願ったり叶ったりである。
王家の姻戚となれれば、公爵夫妻は楽観視していたものの、アイリーンとしてはほぼ絶望的だと考えていたクラリスの結婚もどうにかなるかもしれない。クラリスが侯爵家を継ぐことへの不安はあるものの、しっかりした人と結婚させることが出来ればなんとかなるだろう。クラリス単体ならばそれは難しい程の悪名高さだが、そこにアイリーン、及びギルバートの義理の弟になれるという付加価値が生まれた。それ程、王族の義弟になれるというメリットは大きいのだから。

それに、アイリーン個人としても、報われた様な気持ちになれた。それもそうだろう。国中の乙女達が夢見る地位につけるのだ。それも、好きな人の伴侶として。

ギルバートは、冷たい人だ、と言われていた。
でも、婚約者として会った実際の彼は、優しくてあたたかい人だったのだ。民を想い、国を想う。ただ彼は、人に弱みを見せないだけ。
それに、彼と未来の話をするのはとても楽しかった。この先のこと、将来の二人のこと、そして国の事。二人が結婚して即位した後に実現しようと約束した政策や、長い年月がかかるものだからと直ぐに取り掛かったもの。逆に身軽な今だからこそ出来る事だって沢山ある。
どこか似ている二人は意気投合して、婚約者同士という枠を越えて、執政者としてもお互いを大切に思っていた。

全てが順風満帆だと思っていた。

それなのに。

やっと報われると思ったのに。

今はもう、全てが絶望に塗りつぶされていた。
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