【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚

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アイリーンには憧れの人がいた。
王太子・ギルバートだ。
全てにおいて完璧で、常に国民の模範たれとする姿は上に立つ者として相応しい風格であり、決して努力を感じさせず、他人に弱みを見せないそのストイックさは、冷たいと思われてしまうことも多かった。それでも、自身と通ずる何かを感じて、気にならずにはいられなかったのだ。

だが同時に諦めてしまっていた。

スチュアート侯爵家は、爵位こそ立派なものの、その実没落寸前の家門だった。
この国には、爵位に則って納めねばならない税金がある。だが、スチュアート侯爵家は、多額の借金を抱えており、その税金を納めるにも新たな借金によってなんとか支払っている状態だ。家計はいつも火の車だった。だが、腐っても侯爵家。体面を保つ為の出費は凄まじい。
元々学ぶ事が嫌いでは無かったアイリーンはある時気付いてしまったのだ。
爵位に胡座をかいて派手好きで遊んでばかりいる妹。諌めるのが面倒だとそれを放置して、甘やかすばかりの両親。社交能力が残念で、夫人たちのお茶会でもパーティーでも、侯爵家の為になるようなろくな人間関係は築けず、その癖何とかなるさと、よく言えば無駄に楽観的、悪くいえば能天気な母。経営手腕も悪く、そのくせプライドばかり無駄に高くて仕事も余計な選り好みばかりするせいでどれもうまくいかず、借金は雪だるま式に増えていくばかりだ。そのくせ少しでも気に食わないことがあるとすぐに怒鳴りつけて手がつけられなくなる。
アイリーンは、幼いながらに悟ってしまった。
スチュアート侯爵家を救う手立ては自分の結婚しかないことに。
せっかく侯爵家には令嬢が二人いるが、クラリスのあの体たらくでは、侯爵家に有益な結婚を望むのはっほぼ絶望的と見ていいだろう。
その分アイリーンは自分より身分が低いか、もしくはどこかの後妻として嫁ぐことで、莫大な結納金をもらって、借金の返済いと家の再興に充てるしか道はないと思っていた。そのことに気がついてしまってからは前にも増してより一層、あらゆる面で自分を磨き上げるために努力するようになたのだ。自身の価値をあげることでより良い条件を提示してきた相手に嫁ぐ。
それが自身の義務である、と、そう思ったのだ。
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