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「な……何も…………とは一体、どういうことでございましょうか……?私としましては特に心当たりはございませんので……。」
先程までの上機嫌など嘘のように、サ~ッと血の気が引いていくのが感じられる。一体何故、目の前の二人はこれほどまでに怒っているのか。どうして今、自分がこんなにも責められているのか。皆目見当がつかない。ただ確実に分かるのは、どうやら目の前の大切な大切な出資者達をとんでもなく怒らせてしまったようだ、ということ。そして、その原因となっているのが、本来ならばブレイズ伯爵家を助けることになるはずだった自身の息子のようである、ということ。
哀れな程に混乱している男に、少々情けをかけてやろう――とはならなかった。
「ふむ。…………つまり、貴殿は自身の息子の動向をはあくしていない ……と?」
「は、はい、その通りでございます。息子の行動につきましては、本人に一任しておりますゆえ、一体何の事を仰られているのか私には何も……」
「そう。では貴方は私達と交わした筈の『カミーユ公爵令嬢とブレイズ伯爵令息が婚約又は婚姻状態にある問、カミーユ公爵令嬢に精神的、経済的負担を感じさせない』という契約を守る気など最初から無かった、と。そういう事でよろしいかしら?」
唯一見えた希望の光に、わらにもすがる思いで飛びついてみた結果がこのザマである。何を言っても、どんな行動を取っても『結み」であることにブレイズ伯爵は、遅まきながらやっと、気が付いたのであった。
「いいえ、決してそのようなつもりでは……。」
真っ青な顔色をした伯爵が何とか弁明をしようとする。しかし、話せば話すほど墓穴を掘っていくように、どんどん逃げ道を失っていく。更に、今現在までの会話の中で、本題にはまだ触れることが出来ていない。この先の話し合いの行く末も思いやられる。長引きそうな予感に、子供達を大公の元に向かわせておいて正解だったと確認することとなった。こちらの片がついたと同時に婚約破棄を確実なものにすることが目的だった。
な
「では伯爵殿。ご子息が書かれたこれらは、こちらで処理してしまって構わないな?」
「な……何も…………とは一体、どういうことでございましょうか……?私としましては特に心当たりはございませんので……。」
先程までの上機嫌など嘘のように、サ~ッと血の気が引いていくのが感じられる。一体何故、目の前の二人はこれほどまでに怒っているのか。どうして今、自分がこんなにも責められているのか。皆目見当がつかない。ただ確実に分かるのは、どうやら目の前の大切な大切な出資者達をとんでもなく怒らせてしまったようだ、ということ。そして、その原因となっているのが、本来ならばブレイズ伯爵家を助けることになるはずだった自身の息子のようである、ということ。
哀れな程に混乱している男に、少々情けをかけてやろう――とはならなかった。
「ふむ。…………つまり、貴殿は自身の息子の動向をはあくしていない ……と?」
「は、はい、その通りでございます。息子の行動につきましては、本人に一任しておりますゆえ、一体何の事を仰られているのか私には何も……」
「そう。では貴方は私達と交わした筈の『カミーユ公爵令嬢とブレイズ伯爵令息が婚約又は婚姻状態にある問、カミーユ公爵令嬢に精神的、経済的負担を感じさせない』という契約を守る気など最初から無かった、と。そういう事でよろしいかしら?」
唯一見えた希望の光に、わらにもすがる思いで飛びついてみた結果がこのザマである。何を言っても、どんな行動を取っても『結み」であることにブレイズ伯爵は、遅まきながらやっと、気が付いたのであった。
「いいえ、決してそのようなつもりでは……。」
真っ青な顔色をした伯爵が何とか弁明をしようとする。しかし、話せば話すほど墓穴を掘っていくように、どんどん逃げ道を失っていく。更に、今現在までの会話の中で、本題にはまだ触れることが出来ていない。この先の話し合いの行く末も思いやられる。長引きそうな予感に、子供達を大公の元に向かわせておいて正解だったと確認することとなった。こちらの片がついたと同時に婚約破棄を確実なものにすることが目的だった。
な
「では伯爵殿。ご子息が書かれたこれらは、こちらで処理してしまって構わないな?」
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