過去の未来に足跡を残して・・・

進海 俊心

文字の大きさ
1 / 1

ある生徒との出会い

しおりを挟む
「あむあむあむ・・・」

美奈は、何気ない表情でパンを頬張りながらテレビを見ていた。何もない、ただ茫然とご飯を食べていた。テレビからは、ニュースが流れる。流行、事件、気象、多種多様なニュースが美奈の耳を刺した。

「ごちそうさま。行ってきまーす!」

食べ終えると同時に彼女は、学校へと出発した。美奈は寮で暮らしており、登校は5分とかからない。一度外に出れば、図太くそびえたつ学校が見える。

美奈の通う才羽西高校さいばにしこうこうは、校舎は現代建築をイメージした用法で建てられており、広々とした外観となっている。行事や部活動にも力を入れており、文化祭では毎年一万人以上のお客さんが来場するほどの人気ぶり。部活動ではダンス部が主に有名で過去にはテレビ取材を受けた事もある。その為か、この高校は付近の地域のみならず、遠方からも志望する人が多く、倍率がとにかく高い事でも有名である。

クラスに着いた美奈は、とある会話が耳に入ってきた。

「な、なあ、頼むよー。聞くだけでいいから、な?」
「無理。」
「そこを頼むよー!ここのヒロインだぞ。気にならないのか?」
「ならん。ってかなんで俺に聞くんだよ・・・。」
「いや、だって俺が聞いたら誤解されるだろ?でも、お前は中学からの同級生だし、疑われずに聞けるだろ?だから・・・」

「俊!おはよう!!」

喧噪をかき分け、美奈は挨拶を交わした。

「おう!おはよう!」

彼の名は、桜木俊さくらぎしゅん。美奈と同じD組の生徒で、ミステリー研究会に所属している。無類の本好きで毎日何かしらの本を読んでおり、

「なーに、話してたの?」

「さ、相楽さん・・・それは、その・・・」

俊の前の席の会田総あいだそうは、額から汗をかきながら動揺の表情を見せた。美奈は目を合わせるないなや、総に圧をかける。

「あ!そうだ!」

何かを思い出したように、俊が徐に立ち上がった。

「な、菜乃花・・・宿題の事なんだけど・・・」

「まず、渡す物があるんじゃない?」

「あ、あー・・・はい。」

「約束の物持ってきたわよね?」

彼女は、高圧的な態度を見せ、俊を攻め立てる。

彼女は、杉村菜乃花すぎむらなのか。先ほど、総が言っていたヒロインとは彼女の事だ。小柄な体系に可愛らしい顔で学校中からの人気者である。そんな彼女は俊とは中学からの同級生で家も近い。

「も、持ってきました!」

俊はそういうと、深々と頭を下げてある物を渡した。それは、チーズケーキだった。

「パレオショコラのチーズケーキ・・・じゃあ、はい!」

「ありがとうございます!」

満足の物だったのか、菜乃花は満面の笑みでノートを渡した。それを俊はまた深々と頭を下げながら受け取った。

「ねぇ、なんで菜乃花の事が気になるの?」

美奈は総の肩に手をのせ、尋ねる。

「い、いや、だ、だって、昨日で振られたの10人目だぞ!気になるでしょ!普通にね、普通に!」

変わらず、何かにおびえたように総は言った。

「いまだに、菜乃花の方が立場は上なのね。ふふふ・・・」

「うるせーな。ってかなんで話に混じってんだよ!」

俊は若干怒りの表情を見せながら、言った。

「良いじゃん。別に・・・」

それに対し、美奈は悪魔的な笑みを見せて返した。

「おーい!静かにしろー!ホームルーム始めるぞー!」

ガサガサ・・・

担任の木島壮一きじまそういちの声を聞いたクラスメートは、素早く席へと戻り、着席した。

「ううん・・・えー、今日は皆さんに伝えなければならないことがあります!」

木島は咳払いをし、鋭い眼光でクラスメートを睨みつけた。

「え?なに?」
「怖いんだけど?」
「誰か捕まったのかな?」

クラス中が不安と恐怖に包まれる。ただならぬ空気がD組を包み込む。

「すー・・・」

「転校生が来てます!!」



木島はにやりと笑って、言った。その様子に思わず声が零れ落ちた。

「なんだよー、焦ったー。」
「良かったー。」
「でも、珍しくない?この時期に転校生なんて。」

時は11月。金木犀の香りも廃れてきた頃。そんな時に転校生がやってくる。極めて季節外れの転校生だった。

「入ってきてー。」

木島は、笑顔で廊下の方を見つめる。

ガラガラ・・・

ドアの開く音とともに、静かに転校生はやってきた。足音なくするりと。

皆木玲央みなきれおです。よろしくお願いします!」

彼は、深々と頭を下げクラスメートに挨拶した。小柄で身長は165センチ前後。体重は痩せ型といった所。表情は緊張からか暗く。微かに唇も震えていた。クラス中はまだ騒々しさが残っていた。なぜこの時期にやってきたのか、なぜここにやってきたのか。疑念は膨らむばかりだった。

「へぇー。面白そうじゃん!皆木君よろしくね!」

霧のようにもやっとした空間を払ったのは、美奈だった。彼女の一声で空間を一閃した。

「はは・・・」

玲央にも微かに微笑みが見えた。

パチパチ・・・

まばらな拍手から、少しずつデシベルを上げ新たな仲間を迎えるには最高の拍手となった。

こうして、この学校に新たな風が吹き込んだのだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...