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3重人格

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「…●●。」
「…はい…なんでしょーか」
「…心当たりは?」
「…えー、一つ。」
「…うん、そうだね。じゃ、説明してもらおうか」
「えっと…かくかくしかじかで…」
「はぁ!?」
私は、思わず叫んでしまった。
「ひゃうっ。」
「あ、ごめん…」
その後、帰りながらゆっくりと話してもらった。
・●●は3重人格である。
もともとは神夜しんやもいたのだが、最近消えてしまったそう。
人格は、「神夜みや」と「●●」と、さっきの強い「護符」だそうだ。
・神夜の神術は「文術」護符の神術は「力術」そして●●の術は…今から見せてくれると言う。
「行くよお」
「う、うん…」
ドキドキ…
「すぅ…」
『華は咲き 夢は覚める 空が動き 日が昇る
木の葉が囁く この星の思い出 我を愛でる星よ 願いを受け入れよ』
「…」
●●の歌のメロディーは、夢のように繊細で、鈴の音のように…いや、こんなにも素晴らしい音色の鈴はきっとこの世に無いだろう。
「ふぅ…わあ!お花咲いた!きれえ~」
「!」
ふと我に返ると、●●の足元には花が咲き乱れ、寂しいコンクリの壁には蔦がいきいきと生え、木は、嬉しそうに若葉をぐんぐん大きくしていった。
「エヘッ!きれいでしょ?私の神術「詩星術」」
「うたぼし??」
「うん!」
詩星術とは、数百年に一度、星が生まれるこの中から愛で子めでごを選び、ある歌を唱えると願いが叶うという能力授けるらしい。そしてその愛で子という物に、●●は選ばれたそう。
「ドヤァ」
口でドヤァって言う人始めてみた…
「じゃ、じゃあ、この術は何か分かる?」
「ん~?」
「行くよー」
「り」
「すぅ…」
❀✿❀✿
「!!!!!!!!」
「ど、どう?」
●●は目を見開き、好奇心旺盛の子供の光を持った瞳で、じっとこっちを見つめる。
「は、はわ…」
「な、何だy」
私が後ろに下がろうとすると、チリンと、何処からか鈴の音が聞こえた。
「な、何だ…え?」
私が状況を理解しようとあたりを見渡すと、たまたま窓に写った自分の姿が目に入った。
「!?」
そこに写っていたのは、大きな狐の耳が生え、下に鈴が付いている…いや、付いていると言うよりかは、そこに居る。と言ったほうが正しいだろう、なぜなら…
「チリン?」
「「う、動いたー!てか、喋ったー!?」」
生き物…いや、妖怪?妖精?お化け?なんでも良いが、とにかく急いでうちに向かった。


「ただいまっ!」
「ただいま!おかーさん!見てみて!」
帰ってくるなりギャーギャー騒ぐ娘たちに呆れた様子の母が、はいはい。と出てきた。
「おかえり。何?帰ってくるなりギャーギャー騒いで…あら、狐耳。出せるようになったの?」
「母さん!あ、うん。それで何だけど、そのときになんかこんなの出てきたんだけど…」
ポケットをガサゴソ漁る私を、なにか心当たりがある様子の母が見つめる。
「ほら、こいつ」
「チリン!」
「!この子…」

「神獣よ。」
「シンジュー?」
「神獣は、神子だけに授けられる、神の領域の…」
「「?」」
「あ、えっとねー…あ、あの、『ホワイトチョコとビターな悪魔』ってマンガあるじゃん?」
「あ、知ってる知ってる。確か●●と一緒に読んだよね。」
「あー!あの、優等生な悪魔『ビター』と、ホワイトチョコでできた、生意気な使い魔の『チホワ』のやつ?」
「そうそう!」
「あれ面白いよねー!特にあのビターのツンデレっぷりとかぁ…」
「分かるぅ!そんなビターに率直な意見を言っちゃって、時にはぐさっとくる言葉を言っちゃうチホワも推す~!」
「…ごほんっ。その『チホワ』みたいな、使い魔ってこと。」
「使い魔!」
私は思わず、目をキラキラさせた。
「良いなー。私も使い魔ほしい~!あ、じゃあ、お願いすれば良いんだ!すぅ…」
『華は咲き 夢は覚める 空が動き 日が昇る
木の葉が囁く この星の思い出 我を愛でる星よ 願いを受け入れよ』
「おぉ?」

「何も…起こらんな。」
「うう~」
その時、空きかけだったドアががじゃん!と思い切り開き、ズボズボと何かつるのようなものが生えてきたかと思うと、桃色の可愛い実がなり、ふわふわとこちらへ飛んできた。
「わぁ!●●の使い魔の卵!?」
「使い魔じゃなくて神じゅ」
「ありがと!地球様!大好きっ!」
すると、恥ずかしくなったのか、つるが若干桃色に変化したかと思うと、内側から引っこ抜かれたかのように、ひゅんっと地面に戻り、土は元通りになるよう穴を埋めた。
「エヘッ!嬉しい!」
ほんと、チート級の能力だな…
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