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第五話 容易く触れられるな
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一週間後のレッスンも事務所で行われた。藤野遙は毎回のように話しかけてくるが、話の内容はそこらの主婦と変わらないような世間話だった。
「ていうかさぁ、双葉ちゃんは樋野さんの事好き?」突然の問いかけに双葉は赤面した。
「はっ!?す、好きとかそういうのは全然・・」
「樋野さんのどんなとこが好き?」「ちょっと、勝手に話進めないでください!」
「だって、好きなの丸見えよ?今更聞いたのだってただの確認で。」
双葉は待合室に置かれた飲み物を慌てて口に含む。
「確かに私は樋野さんの事が好きです、だけどそれはファンって意味で・・樋野さんの音楽は誰にもない、唯一無二のハーモニーなんです。あんなに美しい音を奏でられるのは世界で樋野さんしかいません。」
「へぇー、俺音楽詳しくないから何がいいのか分かんないけど、ファンの半分は顔好きでしょ。確かにあそこまでの美形はいない気がするけど。」
「確かに美形ですよね、でもちょっと無愛想ですよ・・笑ってるときの樋野さんの方がいいと思います。」
その時待合室の扉が開いた。
「俺の悪口語り合うとは、随分親しい仲になったもんだな。」
「樋野さん!こんにちは!」「樋野さんお疲れー」
「早く練習場所に来い、前に場所説明しただろ。手間取らせやがって。」良輔は双葉の腕を掴んで待合室を出ようとした。
「俺の忠告が聞けてないようで残念だ藤野。こいつに踏み込もうとしても無駄だ、こんな女が好みなら勝手にすればいいが、レッスンに来た生徒の邪魔をするようなら俺は看過できん。」
「邪魔じゃなくて樋野さん待ってる双葉ちゃんが退屈しないように話してるんじゃん、樋野さんこそ」遙は良輔と双葉を離し、双葉を腕の中に入れる。
「双葉ちゃんがそんなに大事ならちゃんと自分の傍に置いとかないと。それか・・マーキングしちゃうとか?」良輔は一段と眉を顰めると双葉の腕を先程より強く引いた。
「大切だとか、そういう問題ではない。こいつは俺の生徒であり、俺とレッスンをする為にここを訪れている。お前と仲良く話す為にここに来ている訳ではない。
よってお前と話す意味はない。極力俺の会議が終わる直前にこいつを呼んでいる。こいつが暇そうだろうが放っておけ。お前には関係ない、善意でしているならありがた迷惑だ。」双葉を連れて良輔は部屋を出た。
「樋野さん大丈夫・・ですか?少し疲れてるんじゃ・・・。」
「俺の体はこの程度の仕事量で疲れる程弱くできちゃいない。この仕事を始めて何年もこんな状況に陥った事がある、俺の事を心配してる暇があればあいつに引っ掛からない為の対策でも考えておけ。」良輔は練習場に向かい、双葉は後を追った。
レッスン終わりに双葉は良輔の体調を気遣ったが、余計なお世話だと跳ね返された
「俺の体調より回避の方法を考えろと言っただろ。それから事務所での練習は金輪際しない。やむを得ない状況の場合は考えるがほとんどのレッスンは俺の家で出来るようにする。」
「でも家にお邪魔したらお仕事はどうなるんですか?」
「お前は俺の心配ばかりしすぎだ。俺が信じられないとでも言いたいのか。
3時間用事で仕事を休んだくらい、あとの21時間で解決できる問題だ。」
「で、でもっ!」双葉は食い下がったが、何を言っても良輔に返され結局、良輔が提案した自宅でのレッスンをすることになった。
「今度からは絶対事務所に来るな、来る前にまず俺への連絡を入れること。」
双葉は素直に頷きはい、と返事をした。
「俺は仕事が残ってるから事務所を出られそうにない。」双葉は分かってますよ、と言って事務所を出ようとした。
その時 首筋に熱い感触を感じた。
「・・マーキング、しろって言われただろ。二度とあんな男に肩を抱かれるな。」
「えっ・・い、いま・・・何で・・」双葉は混乱して上手く言葉を発せなかった。
「何も言うな、早く・・帰れ。」良輔はドアを開けて双葉の背中を押した。
「ていうかさぁ、双葉ちゃんは樋野さんの事好き?」突然の問いかけに双葉は赤面した。
「はっ!?す、好きとかそういうのは全然・・」
「樋野さんのどんなとこが好き?」「ちょっと、勝手に話進めないでください!」
「だって、好きなの丸見えよ?今更聞いたのだってただの確認で。」
双葉は待合室に置かれた飲み物を慌てて口に含む。
「確かに私は樋野さんの事が好きです、だけどそれはファンって意味で・・樋野さんの音楽は誰にもない、唯一無二のハーモニーなんです。あんなに美しい音を奏でられるのは世界で樋野さんしかいません。」
「へぇー、俺音楽詳しくないから何がいいのか分かんないけど、ファンの半分は顔好きでしょ。確かにあそこまでの美形はいない気がするけど。」
「確かに美形ですよね、でもちょっと無愛想ですよ・・笑ってるときの樋野さんの方がいいと思います。」
その時待合室の扉が開いた。
「俺の悪口語り合うとは、随分親しい仲になったもんだな。」
「樋野さん!こんにちは!」「樋野さんお疲れー」
「早く練習場所に来い、前に場所説明しただろ。手間取らせやがって。」良輔は双葉の腕を掴んで待合室を出ようとした。
「俺の忠告が聞けてないようで残念だ藤野。こいつに踏み込もうとしても無駄だ、こんな女が好みなら勝手にすればいいが、レッスンに来た生徒の邪魔をするようなら俺は看過できん。」
「邪魔じゃなくて樋野さん待ってる双葉ちゃんが退屈しないように話してるんじゃん、樋野さんこそ」遙は良輔と双葉を離し、双葉を腕の中に入れる。
「双葉ちゃんがそんなに大事ならちゃんと自分の傍に置いとかないと。それか・・マーキングしちゃうとか?」良輔は一段と眉を顰めると双葉の腕を先程より強く引いた。
「大切だとか、そういう問題ではない。こいつは俺の生徒であり、俺とレッスンをする為にここを訪れている。お前と仲良く話す為にここに来ている訳ではない。
よってお前と話す意味はない。極力俺の会議が終わる直前にこいつを呼んでいる。こいつが暇そうだろうが放っておけ。お前には関係ない、善意でしているならありがた迷惑だ。」双葉を連れて良輔は部屋を出た。
「樋野さん大丈夫・・ですか?少し疲れてるんじゃ・・・。」
「俺の体はこの程度の仕事量で疲れる程弱くできちゃいない。この仕事を始めて何年もこんな状況に陥った事がある、俺の事を心配してる暇があればあいつに引っ掛からない為の対策でも考えておけ。」良輔は練習場に向かい、双葉は後を追った。
レッスン終わりに双葉は良輔の体調を気遣ったが、余計なお世話だと跳ね返された
「俺の体調より回避の方法を考えろと言っただろ。それから事務所での練習は金輪際しない。やむを得ない状況の場合は考えるがほとんどのレッスンは俺の家で出来るようにする。」
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「で、でもっ!」双葉は食い下がったが、何を言っても良輔に返され結局、良輔が提案した自宅でのレッスンをすることになった。
「今度からは絶対事務所に来るな、来る前にまず俺への連絡を入れること。」
双葉は素直に頷きはい、と返事をした。
「俺は仕事が残ってるから事務所を出られそうにない。」双葉は分かってますよ、と言って事務所を出ようとした。
その時 首筋に熱い感触を感じた。
「・・マーキング、しろって言われただろ。二度とあんな男に肩を抱かれるな。」
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