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第四話 俺だけを見ろ
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双葉は翌日からもレッスンに訪れた。仕事の事情でレッスン時間が遅れたりもしたが、良輔はどんなに遅れても3時間レッスンを行った。
「今日はこれくらいで終わりにするか。・・・つーか、甘いもん好きだな・・。」
双葉は良輔の出した和菓子を嬉しそうに食べた。
「樋野さん絶対損してますよ!こんな美味しい和菓子食べないなんて~。ん~美味しい~」
「そんな甘ったるいの食いたくない。それに」良輔は双葉の頬を引っ張った。
「お前みたいに太りたくねぇしな。」「んー、なにするんですかぁ~」双葉は余計頬を膨らませた。良輔は手を離すと、仕事の書類を覗いた。
「おい、早く食って帰れ。お前の母親に捜索願でも出されたらどうする。もし俺の家から出るとこを記者に撮られたらお前も高校にいられなくなるぞ。」
「捜索願なんて出しませんよ小学生じゃあるまいし~。確かに変な人いますよねーここの近く。」
「尚更早く帰れ。どさくさに紛れて大福2個目食ってる場合じゃねぇぞ。」
「う、バレてた。はいはい帰りますよーまた来週お願いします」双葉は大福を口に詰めると頭を下げて家を出た。
一週間後 双葉は良輔の家を訪れたが、良輔は不在だった。家の前で5分程待っていると電話が掛かってきた。
「まだ学校か。」相手は良輔だった。
「え、何で私の番号・・」 「こういう時の為にお前の母親に聞いといたんだよ」
「あぁ、そうなんですか・・・もう学校終わってて今、樋野さんの家の前ですけどどうしたんですか?」
「今日仕事が急に入って終わりそうにないから事務所に来てくれ。」
双葉は住所を聞いて事務所に向かった。
「すみません、樋野良輔さんの知り合いで今日ここに伺うように言われて来たんですけど、取り次いでいただけますか。」
受付嬢は制服姿の双葉を見て怪訝そうな表情を浮かべたが、渋々取り次いだ。
「事務所の入口でお待ちくださいとの事です。現在打ち合わせ中らしく手が離せないようで。」ありがとうございました、と頭を下げて双葉は事務所へ向かった。
「でも仕事ならレッスン延期してくれてよかったんだけどなぁ・・」事務所についても制服姿の双葉は浮いていた。あまり居心地は良くなかったが、双葉はじっと耐えていた。その時後ろから声がかかった。
「君誰かのファン?」振り返った双葉を見て男性は笑顔を見せた。
「え?」 「たまに事務所に押しかけてくるファンの子いるからさ。で、誰のファン?」 「いえ私は・・。」双葉は返答に困って黙り込んだ。
「えーっと、誰かに会いたくて来たファンの子かどうかだけ聞かせて?」
「誰のファンでもないです。今日は知り合いに呼ばれて来ただけで・・」
「へー、ここにいる知り合いってことは芸能人?」双葉は頷いた。
「退屈でしょ、俺と話さない?」 「え、でも・・・」
「いいって、待ち合わせてる人が来るまで。ね?」双葉が戸惑っていると会議室の扉が開いた。
「樋野さんっ!」助けを求めるように駆け寄ると、良輔は目を瞠った。
「おまっ・・!!ちょっと来い!!」良輔が人気のない場所に双葉を連れて行こうとした時、男性が割り込んだ。
「ちぇー、最近樋野さんに来る子ばっかだよねー。知り合いって言ってたけど、ほんと?」良輔はむっとした顔をした。
「こいつは確かに俺の知り合いだ。事務所に押しかけるファンと一緒にするな。
歌手志望だからたまにレッスン付き合ってるだけだ。」
「へーっ、樋野さんでもそんな事するんだねー。あ、俺 藤野遙。一応モデル。」
遙と名乗った男は双葉に自己紹介をした。
「藤野さん、宜しくお願いします!私は三谷双葉です!」
「自己紹介なんて必要ない。行くぞ双葉。」良輔は双葉の手を引いた。
「え!?あ、すみません藤野さん!」双葉は頭を下げて良輔についていった。
咄嗟に良輔から出た「双葉」という言葉に双葉の心臓はうるさかった。
「言い忘れていたが、こんな所で女子高生をナンパしてる暇があったらモデル業に専念したらどうだ。呑気に今ある仕事をこなしていたらいつか仕事がなくなるぞ」
「余計なお気遣いありがとっ、樋野さん。」二人は笑顔を見せて別れた。
「お前は何で制服なんかで来た!!」場所を変えて二人きりになると良輔は怒鳴った。
「だって今すぐ来いって・・・」「普通は俺の立場に考慮して私服で来るだろ!」
「すみませんでしたっ!ていうか事務所なんか来て何するんですか?」
「馬鹿なのか?ここの事務所以上に音響機器の揃った所はない。今日は一部を貸してもらえる事になった。」良輔は頭を掻いて歌唱専門の部屋に移動した。
「今日は1時間だけのレッスンになったから手短に話す。あと・・・俺に会う為に事務所に来たなら俺以外とは話さなくていい。」良輔は一度も目を合わせずに言うとレッスン内容を説明してレッスンを開始した。
「今度からはここでレッスンすることも多くなるかもしれない。事務所でレッスンの場合は俺から連絡する。」双葉は分かりました、と返事をすると事務所を後にした。
「今日はこれくらいで終わりにするか。・・・つーか、甘いもん好きだな・・。」
双葉は良輔の出した和菓子を嬉しそうに食べた。
「樋野さん絶対損してますよ!こんな美味しい和菓子食べないなんて~。ん~美味しい~」
「そんな甘ったるいの食いたくない。それに」良輔は双葉の頬を引っ張った。
「お前みたいに太りたくねぇしな。」「んー、なにするんですかぁ~」双葉は余計頬を膨らませた。良輔は手を離すと、仕事の書類を覗いた。
「おい、早く食って帰れ。お前の母親に捜索願でも出されたらどうする。もし俺の家から出るとこを記者に撮られたらお前も高校にいられなくなるぞ。」
「捜索願なんて出しませんよ小学生じゃあるまいし~。確かに変な人いますよねーここの近く。」
「尚更早く帰れ。どさくさに紛れて大福2個目食ってる場合じゃねぇぞ。」
「う、バレてた。はいはい帰りますよーまた来週お願いします」双葉は大福を口に詰めると頭を下げて家を出た。
一週間後 双葉は良輔の家を訪れたが、良輔は不在だった。家の前で5分程待っていると電話が掛かってきた。
「まだ学校か。」相手は良輔だった。
「え、何で私の番号・・」 「こういう時の為にお前の母親に聞いといたんだよ」
「あぁ、そうなんですか・・・もう学校終わってて今、樋野さんの家の前ですけどどうしたんですか?」
「今日仕事が急に入って終わりそうにないから事務所に来てくれ。」
双葉は住所を聞いて事務所に向かった。
「すみません、樋野良輔さんの知り合いで今日ここに伺うように言われて来たんですけど、取り次いでいただけますか。」
受付嬢は制服姿の双葉を見て怪訝そうな表情を浮かべたが、渋々取り次いだ。
「事務所の入口でお待ちくださいとの事です。現在打ち合わせ中らしく手が離せないようで。」ありがとうございました、と頭を下げて双葉は事務所へ向かった。
「でも仕事ならレッスン延期してくれてよかったんだけどなぁ・・」事務所についても制服姿の双葉は浮いていた。あまり居心地は良くなかったが、双葉はじっと耐えていた。その時後ろから声がかかった。
「君誰かのファン?」振り返った双葉を見て男性は笑顔を見せた。
「え?」 「たまに事務所に押しかけてくるファンの子いるからさ。で、誰のファン?」 「いえ私は・・。」双葉は返答に困って黙り込んだ。
「えーっと、誰かに会いたくて来たファンの子かどうかだけ聞かせて?」
「誰のファンでもないです。今日は知り合いに呼ばれて来ただけで・・」
「へー、ここにいる知り合いってことは芸能人?」双葉は頷いた。
「退屈でしょ、俺と話さない?」 「え、でも・・・」
「いいって、待ち合わせてる人が来るまで。ね?」双葉が戸惑っていると会議室の扉が開いた。
「樋野さんっ!」助けを求めるように駆け寄ると、良輔は目を瞠った。
「おまっ・・!!ちょっと来い!!」良輔が人気のない場所に双葉を連れて行こうとした時、男性が割り込んだ。
「ちぇー、最近樋野さんに来る子ばっかだよねー。知り合いって言ってたけど、ほんと?」良輔はむっとした顔をした。
「こいつは確かに俺の知り合いだ。事務所に押しかけるファンと一緒にするな。
歌手志望だからたまにレッスン付き合ってるだけだ。」
「へーっ、樋野さんでもそんな事するんだねー。あ、俺 藤野遙。一応モデル。」
遙と名乗った男は双葉に自己紹介をした。
「藤野さん、宜しくお願いします!私は三谷双葉です!」
「自己紹介なんて必要ない。行くぞ双葉。」良輔は双葉の手を引いた。
「え!?あ、すみません藤野さん!」双葉は頭を下げて良輔についていった。
咄嗟に良輔から出た「双葉」という言葉に双葉の心臓はうるさかった。
「言い忘れていたが、こんな所で女子高生をナンパしてる暇があったらモデル業に専念したらどうだ。呑気に今ある仕事をこなしていたらいつか仕事がなくなるぞ」
「余計なお気遣いありがとっ、樋野さん。」二人は笑顔を見せて別れた。
「お前は何で制服なんかで来た!!」場所を変えて二人きりになると良輔は怒鳴った。
「だって今すぐ来いって・・・」「普通は俺の立場に考慮して私服で来るだろ!」
「すみませんでしたっ!ていうか事務所なんか来て何するんですか?」
「馬鹿なのか?ここの事務所以上に音響機器の揃った所はない。今日は一部を貸してもらえる事になった。」良輔は頭を掻いて歌唱専門の部屋に移動した。
「今日は1時間だけのレッスンになったから手短に話す。あと・・・俺に会う為に事務所に来たなら俺以外とは話さなくていい。」良輔は一度も目を合わせずに言うとレッスン内容を説明してレッスンを開始した。
「今度からはここでレッスンすることも多くなるかもしれない。事務所でレッスンの場合は俺から連絡する。」双葉は分かりました、と返事をすると事務所を後にした。
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