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第三話 お前なら出来る
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「お邪魔しまーす・・・」偶然家の扉が開いていたのでそっと中に入ると、良輔はいかにも高そうなソファで仮眠を取っていた。
「樋野さん?おーい・・一応今日レッスンの日なんですけどー・・」ソファの前に座り、小声で起こそうと試みる。
「やっぱり顔綺麗だなー・・性格があんなにドSだとは思ってもみなかったけど」
寝顔をじっと見つめているとあまりに綺麗な寝顔に吸い込まれそうだった。
「・・いかん。起こさなければ。」ソファを背に、鞄から携帯を出そうとした。
「・・・痴女が不法侵入してきたって通報してやろうか。」突然後ろから良輔の声がしてビクッとする双葉。
「なっ、なななななな何で起きてるんですか!!!」思わず後ずさる。
「じゃあ聞くけど何でお前は人んちに勝手に上がり込んでんの?」
「そ、それは・・。」恥ずかしさと緊張が混ざり合って耐えられず双葉は俯く。
「つーか、俺最初からずっと起きてたし。」
「じゃあ何で目開けてくれないんですか!」
「なんかずっと言ってるし俺の顔覗き込んでるし面白かったし。てか、日夜問わず仕事こなしてる俺がたった一時間の仮眠で人来てんのに起きないと思うか普通?」
「・・・・あーもうどうだっていいです!レッスン始めてください!」
「めんどくせ、珈琲淹れてくれたら考える。」
「珈琲くらい自分で淹れられるでしょ!?」
「へぇ、俺に歯向かうんだ?」良輔は双葉をじっと見ると無言の威圧感を放った。
「分かりましたよ!やりますよ!だからレッスンちゃんとしてください!」
数分後 ソファの前にある机に珈琲と皿を出す。
「なんだよこれ。」 「適当にあったお茶請けです。勝手にすいません!だけどあった方が珈琲がすすむかと・・」良輔はキッチンに置いてそのままにしていた数々の貰い物を思い出した。良輔は頻繁に甘いものを食すタイプではないので、貰い物はたまに訪れる仕事仲間にあげたりしていた。
「へぇ、お前でも女子っぽい事するんだな。」良輔は四枚あったクッキーを取り、一枚双葉に差し出した。
「女子っぽいもなにも私は立派な女子です!!・・あ、いいんですか?ありがとうございます!ん、美味しいじゃないですか!こんなのいっぱい貰って食べないなんて勿体無いじゃないですか、今度から私にも少しくださいね。」
「そんなスカートの下からズボン見え隠れしてんのに立派な女子って・・笑わせんなよ。つーか、そんな太りたいのかお前。」
慌てて指摘されたズボンを隠す。
「ちょ、どこ見てるんですか!へ、変態!太りたくないですけどちょっとくらいくれてもいいじゃないですか!」
「変態とかお前に言われる義理はない。じゃあレッスンで成果出たら一枚やる。」
「成果出たらってことは今日成果出たらくれるんですか!?」
「あぁ。俺が納得したらな。」
早速歌唱専門の部屋に移動し、歌を入れる。音楽が流れて双葉はそっと目を閉じた
(大丈夫、私はできる。この二週間この日の為に特訓を重ねた。きっと歌える)
双葉は大きく息を吸った。
「ん、まぁ悪くない。」
「ホントですか!?やった!!!」双葉が嬉しさのあまり飛び跳ねると、良輔はだが、と付け足した。
「前より少し上達しただけだ。はっきり言ってお前に才能があるとは思えない。歌手の道を目指すならこの程度で上手いとは言えない。」
「・・そうですよね。」厳しい指摘を受けて双葉はしゅんとした。
「じゃあ今日のレッスンは終わりだ。」
「えっ、たったこれだけですか?だってまだ30分も・・・」
「そんなしょげた心情でどうやってレッスンをこなす?今のお前にこれ以上のレッスンは到底不可能だ。俺の歌の基礎も満足に唄えなくて歌手を目指す為のレッスンを受けたいなんて言うな。俺が指導するのは俺の歌を満足に歌える秀逸な者だけだ。」より落ち込んだ様子で下を向く双葉。そんな双葉を見て、再びだが、と付け加える良輔。
「お前に才能はないと言った。それは確かだ。だが俺は才能がないから歌手になれないとは言ってない。才能がなくても努力をすれば歌手になれる奴はごまんといる」付け加えた後、良輔は軽く双葉の頭に手を置いた。
「お前はやれる。努力できる人間だ。」双葉は顔を上げると良輔を見た。
「明日からは俺の歌の基礎を全力で叩き込む、今日俺に言われて落ち込んだなら明日から来なくてもいい。だが、上手くなりたいと心から思うなら答えは別だ。」
言い終わると良輔は黙って部屋を後にした。そして数秒後部屋に戻ってくると
「今度から好きなだけ持っていけ。太りたければな。」
そう言ってクッキーを一枚投げた。
「樋野さん?おーい・・一応今日レッスンの日なんですけどー・・」ソファの前に座り、小声で起こそうと試みる。
「やっぱり顔綺麗だなー・・性格があんなにドSだとは思ってもみなかったけど」
寝顔をじっと見つめているとあまりに綺麗な寝顔に吸い込まれそうだった。
「・・いかん。起こさなければ。」ソファを背に、鞄から携帯を出そうとした。
「・・・痴女が不法侵入してきたって通報してやろうか。」突然後ろから良輔の声がしてビクッとする双葉。
「なっ、なななななな何で起きてるんですか!!!」思わず後ずさる。
「じゃあ聞くけど何でお前は人んちに勝手に上がり込んでんの?」
「そ、それは・・。」恥ずかしさと緊張が混ざり合って耐えられず双葉は俯く。
「つーか、俺最初からずっと起きてたし。」
「じゃあ何で目開けてくれないんですか!」
「なんかずっと言ってるし俺の顔覗き込んでるし面白かったし。てか、日夜問わず仕事こなしてる俺がたった一時間の仮眠で人来てんのに起きないと思うか普通?」
「・・・・あーもうどうだっていいです!レッスン始めてください!」
「めんどくせ、珈琲淹れてくれたら考える。」
「珈琲くらい自分で淹れられるでしょ!?」
「へぇ、俺に歯向かうんだ?」良輔は双葉をじっと見ると無言の威圧感を放った。
「分かりましたよ!やりますよ!だからレッスンちゃんとしてください!」
数分後 ソファの前にある机に珈琲と皿を出す。
「なんだよこれ。」 「適当にあったお茶請けです。勝手にすいません!だけどあった方が珈琲がすすむかと・・」良輔はキッチンに置いてそのままにしていた数々の貰い物を思い出した。良輔は頻繁に甘いものを食すタイプではないので、貰い物はたまに訪れる仕事仲間にあげたりしていた。
「へぇ、お前でも女子っぽい事するんだな。」良輔は四枚あったクッキーを取り、一枚双葉に差し出した。
「女子っぽいもなにも私は立派な女子です!!・・あ、いいんですか?ありがとうございます!ん、美味しいじゃないですか!こんなのいっぱい貰って食べないなんて勿体無いじゃないですか、今度から私にも少しくださいね。」
「そんなスカートの下からズボン見え隠れしてんのに立派な女子って・・笑わせんなよ。つーか、そんな太りたいのかお前。」
慌てて指摘されたズボンを隠す。
「ちょ、どこ見てるんですか!へ、変態!太りたくないですけどちょっとくらいくれてもいいじゃないですか!」
「変態とかお前に言われる義理はない。じゃあレッスンで成果出たら一枚やる。」
「成果出たらってことは今日成果出たらくれるんですか!?」
「あぁ。俺が納得したらな。」
早速歌唱専門の部屋に移動し、歌を入れる。音楽が流れて双葉はそっと目を閉じた
(大丈夫、私はできる。この二週間この日の為に特訓を重ねた。きっと歌える)
双葉は大きく息を吸った。
「ん、まぁ悪くない。」
「ホントですか!?やった!!!」双葉が嬉しさのあまり飛び跳ねると、良輔はだが、と付け足した。
「前より少し上達しただけだ。はっきり言ってお前に才能があるとは思えない。歌手の道を目指すならこの程度で上手いとは言えない。」
「・・そうですよね。」厳しい指摘を受けて双葉はしゅんとした。
「じゃあ今日のレッスンは終わりだ。」
「えっ、たったこれだけですか?だってまだ30分も・・・」
「そんなしょげた心情でどうやってレッスンをこなす?今のお前にこれ以上のレッスンは到底不可能だ。俺の歌の基礎も満足に唄えなくて歌手を目指す為のレッスンを受けたいなんて言うな。俺が指導するのは俺の歌を満足に歌える秀逸な者だけだ。」より落ち込んだ様子で下を向く双葉。そんな双葉を見て、再びだが、と付け加える良輔。
「お前に才能はないと言った。それは確かだ。だが俺は才能がないから歌手になれないとは言ってない。才能がなくても努力をすれば歌手になれる奴はごまんといる」付け加えた後、良輔は軽く双葉の頭に手を置いた。
「お前はやれる。努力できる人間だ。」双葉は顔を上げると良輔を見た。
「明日からは俺の歌の基礎を全力で叩き込む、今日俺に言われて落ち込んだなら明日から来なくてもいい。だが、上手くなりたいと心から思うなら答えは別だ。」
言い終わると良輔は黙って部屋を後にした。そして数秒後部屋に戻ってくると
「今度から好きなだけ持っていけ。太りたければな。」
そう言ってクッキーを一枚投げた。
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