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第九話 君に愛を捧ぐ
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「樋野さん・・私に嘘ついてたんですか・・?」
「悪い、俺今日仕事で忙しいんだ。レッスンはしてやれない。」良輔が事務所を出ようとする。
「ちょっと待って下さいっ!10分だけでもお話できませんか?お願いします!」双葉は良輔の関係者らしき男性に頭を下げる。
「樋野さん今日は随分と冷たいんだね?双葉ちゃんに。」
「藤野は黙ってろ。とにかくお前と話してる時間もない程忙しいんだ分かってくれ。」 「・・・じゃあお時間は取りません、だから一つ聞かせてください。理沙子さんとどういう関係だったんですか?私には好きになった人はいないっていいましたよね・・?」
「あいつとは仕事で何度か共演して食事もした仲だ。でも恋人関係じゃない。少なくとも俺に好意はない。」
「じゃあ何で私が樋野さんの顔を見た時目を逸らしたんですか・・?いつも通り堂々としていてくれれば私は何も思わなかった、不自然に目を逸らすような事でもあったんですか?」
「・・めんどくせぇな、じゃあお前は何なんだよ俺の。恋人か?婚約相手か?
俺にとっちゃただの生徒なんだよお前に何も言われる筋合いはない」
「私にはあるんですっ!!私は貴方が好きだから・・少しでも仲の良さそうな女性がいるだけで自分が虚しくなって一線引かれた気持ちになるんです!
仲良さげに話してるだけで不安になって少し会えないと寂しくなって。耐えようとしても気付けば貴方の事考えてて、いつ恋人ができて結婚してもおかしくないんだって思うと不安で不安で仕方ないんです!」
双葉は涙を流した。泣いても泣いても止まらない無数の涙を。
「・・早く俺の事忘れて彼氏作れば?俺には関係ない。視野狭くなっただけじゃねぇの?好きになった奴しか見えなくなってるだけだ。いや、見えないんじゃない、男が周りにいない訳でもない、お前が見ようとしてないだけだ。」
良輔は事務所を出た。遙は泣き崩れた双葉を支えて待合室に入った。
「・・ごめん、俺が余計な奴連れてきたせいで。」
「藤野さんは悪くないんです、私が・・勝手に取り乱して周りに迷惑掛けただけで。事務所の方々にも後で謝ります。」
「・・うん、それにしても樋野さんがあそこまで言うとはなぁ・・。根は優しい人なんだろうって思ってたけど・・。あの、なんか飲む?ちょっと疲れたでしょ。
ココアとかでいいかな?」
「はい・・ありがとうございます。」
遙は温かいマグカップを持って来て双葉に渡した。
「とりあえずさ、元気だそう。樋野さんとは暫く連絡取らないとかして距離置いてみたり。お互い落ち着くまでさ。」
「はい。」「じゃあ俺は仕事あるからごめん、行くね。」
双葉は暫く待合室で一人心を落ち着かせていた。
夜遅くなって双葉は社員に謝罪し羊羹を渡すと帰宅した。
そしてその夜から悪戯電話はなくなった。
良輔と口論になった日から再び自宅練習が続き、事務所へ向かう目的は遙になった
遙は双葉を元気づけようと遊園地や映画館、水族館など色々な所に双葉を連れ出した。次第に双葉の気持ちは晴れ、練習も上手くいった。
高校を卒業後、オーディションも幾つか受け幾つかの事務所から採用された。
高校を卒業した年の秋、遙に呼び出された双葉はカラオケに来ていた。
「よっ!日本一!やっぱ双葉ちゃんの歌は日本一上手い!」
「そんな事ないですよー、素人です。」
「素人が簡単に事務所から採用されると思ってんのー?でさ、3つ採用されたじゃん?双葉ちゃんに選ぶ権利あるんなら、早めに2つ切り捨てた方がよくない?」
「切り捨てるって・・まぁ、最終受けてからにします。本命に受かったらそこに決定だし、もし落ちたら3つの中で一番知名度の高そうな所に。」
「本命あったんだ、で何処?」
「藤野さんの事務所ですよ、やっぱり芸能界では有名な事務所だし・・」
「まじっ!?俺と一緒?よっしゃぁっ!もし同じ事務所になったら絶対仕事一緒にしたい!」
「ふふっ、そうですね。ていうか、今日はどうして呼んだんですか?」
「あぁ・・あのさ、あのぉ・・えっと・・」
「藤野さんらしくないですね、躊躇うなんて。」
「あはは・・それで・・その・・あのっ、好きなんだ!!」
「・・・はい?」
「悪い、俺今日仕事で忙しいんだ。レッスンはしてやれない。」良輔が事務所を出ようとする。
「ちょっと待って下さいっ!10分だけでもお話できませんか?お願いします!」双葉は良輔の関係者らしき男性に頭を下げる。
「樋野さん今日は随分と冷たいんだね?双葉ちゃんに。」
「藤野は黙ってろ。とにかくお前と話してる時間もない程忙しいんだ分かってくれ。」 「・・・じゃあお時間は取りません、だから一つ聞かせてください。理沙子さんとどういう関係だったんですか?私には好きになった人はいないっていいましたよね・・?」
「あいつとは仕事で何度か共演して食事もした仲だ。でも恋人関係じゃない。少なくとも俺に好意はない。」
「じゃあ何で私が樋野さんの顔を見た時目を逸らしたんですか・・?いつも通り堂々としていてくれれば私は何も思わなかった、不自然に目を逸らすような事でもあったんですか?」
「・・めんどくせぇな、じゃあお前は何なんだよ俺の。恋人か?婚約相手か?
俺にとっちゃただの生徒なんだよお前に何も言われる筋合いはない」
「私にはあるんですっ!!私は貴方が好きだから・・少しでも仲の良さそうな女性がいるだけで自分が虚しくなって一線引かれた気持ちになるんです!
仲良さげに話してるだけで不安になって少し会えないと寂しくなって。耐えようとしても気付けば貴方の事考えてて、いつ恋人ができて結婚してもおかしくないんだって思うと不安で不安で仕方ないんです!」
双葉は涙を流した。泣いても泣いても止まらない無数の涙を。
「・・早く俺の事忘れて彼氏作れば?俺には関係ない。視野狭くなっただけじゃねぇの?好きになった奴しか見えなくなってるだけだ。いや、見えないんじゃない、男が周りにいない訳でもない、お前が見ようとしてないだけだ。」
良輔は事務所を出た。遙は泣き崩れた双葉を支えて待合室に入った。
「・・ごめん、俺が余計な奴連れてきたせいで。」
「藤野さんは悪くないんです、私が・・勝手に取り乱して周りに迷惑掛けただけで。事務所の方々にも後で謝ります。」
「・・うん、それにしても樋野さんがあそこまで言うとはなぁ・・。根は優しい人なんだろうって思ってたけど・・。あの、なんか飲む?ちょっと疲れたでしょ。
ココアとかでいいかな?」
「はい・・ありがとうございます。」
遙は温かいマグカップを持って来て双葉に渡した。
「とりあえずさ、元気だそう。樋野さんとは暫く連絡取らないとかして距離置いてみたり。お互い落ち着くまでさ。」
「はい。」「じゃあ俺は仕事あるからごめん、行くね。」
双葉は暫く待合室で一人心を落ち着かせていた。
夜遅くなって双葉は社員に謝罪し羊羹を渡すと帰宅した。
そしてその夜から悪戯電話はなくなった。
良輔と口論になった日から再び自宅練習が続き、事務所へ向かう目的は遙になった
遙は双葉を元気づけようと遊園地や映画館、水族館など色々な所に双葉を連れ出した。次第に双葉の気持ちは晴れ、練習も上手くいった。
高校を卒業後、オーディションも幾つか受け幾つかの事務所から採用された。
高校を卒業した年の秋、遙に呼び出された双葉はカラオケに来ていた。
「よっ!日本一!やっぱ双葉ちゃんの歌は日本一上手い!」
「そんな事ないですよー、素人です。」
「素人が簡単に事務所から採用されると思ってんのー?でさ、3つ採用されたじゃん?双葉ちゃんに選ぶ権利あるんなら、早めに2つ切り捨てた方がよくない?」
「切り捨てるって・・まぁ、最終受けてからにします。本命に受かったらそこに決定だし、もし落ちたら3つの中で一番知名度の高そうな所に。」
「本命あったんだ、で何処?」
「藤野さんの事務所ですよ、やっぱり芸能界では有名な事務所だし・・」
「まじっ!?俺と一緒?よっしゃぁっ!もし同じ事務所になったら絶対仕事一緒にしたい!」
「ふふっ、そうですね。ていうか、今日はどうして呼んだんですか?」
「あぁ・・あのさ、あのぉ・・えっと・・」
「藤野さんらしくないですね、躊躇うなんて。」
「あはは・・それで・・その・・あのっ、好きなんだ!!」
「・・・はい?」
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