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第五話 雑種犬と妹
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今日は、タレ目で胸の大きい香菜というご主人の妹と一緒に散歩をしていた。
すると、後ろから何人もの人が走っては通り過ぎていった。
「なんだろ?」
香菜はその内の一人に
「あのーすみません」
「何?」
「先程から走って行く人を見かけるんですが、何かあったんですか?」
「実はね、この先で児湯町隆が旅ロケで訪れてるんだって」
「嘘!?」
「じゃあ、私はこれで」
と言って立ち去った。
「ション!あたし達も行くわよ」
香菜はリードを引っ張った。
俺は嫌な予感がした。しかし、とりあえず一緒に向かうことにした。
そして、約数十分後──
撮影とやらが終わったようだ。
「じゃあ、帰ろっか」
「!?」
やはり、そうきたか・・・・・・。
「ん?」
俺は動かなかった。
「・・・・・・どうしたの?ション?」
俺は覚えている・・・・・・前に香菜の友達に会って長い時間立ち話をして、話が終わるとそのまま帰宅した。
散歩途中でコンビニ寄って、長い時間待たされて、戻ってきて散歩の続きかと思えばそのまま帰宅した。
そんなことが今までに三十回もあった。そして、そのどれもがいつも歩いてる距離の半分以下なのだ。
俺にとって、散歩はご飯を食べるのと同じくらい楽しみで好きなのだ。それをこいつの都合で減らされてはかなわない!
「ション!行くよ!」
嫌だ!このまま行ったら散歩が終わってしまう!
しかし、このまま黙っていては駄目だ。人間に俺達の言葉は通じなくても声に出せば、分かってくれるかもしれない。
「ワオン!ワワワンワオオン!ワオオン!ワワワワオン!(嫌だ!まだ十分に歩いていない!帰宅せず、このまま散歩を続けろ!)」
「こんな所に止まってたら、人の迷惑になるでしょ!?」
それもそうだ。
俺は数歩斜めに歩いた。そして・・・・・・道の端で止まった。そのせいで前にいた香菜が引っ張られ、
「!?」
後ろに転びそうになる。
「まさか、端に寄る為だけに歩いたわけ?」
俺は頷いた。
「どうして、止まるの!?」
「ワオン、ワワワンワオオン!(だから、散歩の続きをしたいんだよ!)」
「何言ってるかわからないわ」
「くっ」
「そこをどうしても動かないっていうんなら・・・・・・」
香菜が俺に近づく。
「!」
まさか・・・・・・俺を捕まえて抱っこするつもりか!?
「ワオオン!?ワワワンワオオン!ワオオン!(ふざけんな!?誰が抱っこさせるか!そんなの犬の散歩じゃねえ!)」
「何言ってるかわからないけど、まあいいわ。さあ、観念しなさい」
観念できねえよ!・・・・・・あ!
俺はその時、香菜が俺に近づいてリードが緩んでいることに気づいた。
そうだ、このまま家と反対方向に逃げれば散歩を続けられるんじゃないか?
俺は家と反対方向に歩き始めた。
よし!これで散歩を──
「ワフッ!」
俺はつながってるリードに引っ張られた。
「ちょっとどこ行くの!?」
って、上手くいかないか・・・・・・。
そして、香菜はリードを手繰り寄せながら、俺に近づいてきた。
「ワフッ!」
このままじゃ捕まるのも時間の問題だ・・・・・・こうなったら──。
「!」
俺は素早く左右に動いた。
リードも左右に動く。
「ちょっと大人しくしなさいよ!」
「ワオオン!(断る!)」
こんなことしたからと言って、捕まらなくなるわけじゃない・・・・・・だが、俺もそう簡単に捕まって散歩を終わらせる気はない!しかし──。
「捕まえた」
「くっ!」
やっぱり捕まっちまった。
「さあ、帰るわよ」
ちくしょう!
俺はジタバタと妹の腕の中で足掻いた。
「ワオン!ワワンワオオン(クソー!このまま帰りたくねえよ!)」
「ちょっと大人しくしなさい!」
「ん・・・・・・香菜?」
この声はまさか──。
「お兄ちゃん!?どうしてここに?今日は日雇いのバイトで遅くなるって・・・・・・」
「それが思ったより早くに終わってね。それより、どうしたんだ?ションを抱えて・・・・・・」
「ションが急に動かなくなって、だから・・・・・・」
「ションが動かなくなった?・・・・・・さては香菜!半分も歩いてないのに帰ろうとしたろ!?」
「え・・・・・・あ!そういえば確かに」
さすがご主人!
「ごめんね。あたしったら長い時間、外にいたから散歩した気になってた。今から散歩の続きするから」
「ワオン!」
お前の感覚はどうなっているんだ!と言いたいが・・・・・・散歩の続きさえしてくれりゃあいいさ。
「じゃあ、俺は家に帰るから」
「うん。分かった」
ご主人はそのまま帰っていった。
「じゃあ、今回はいつもより長く歩こうか」
「ワオオン!(うっしゃああ!)」
ご主人のおかげで俺と香菜はいつもより長い距離、散歩をすることになった。
すると、後ろから何人もの人が走っては通り過ぎていった。
「なんだろ?」
香菜はその内の一人に
「あのーすみません」
「何?」
「先程から走って行く人を見かけるんですが、何かあったんですか?」
「実はね、この先で児湯町隆が旅ロケで訪れてるんだって」
「嘘!?」
「じゃあ、私はこれで」
と言って立ち去った。
「ション!あたし達も行くわよ」
香菜はリードを引っ張った。
俺は嫌な予感がした。しかし、とりあえず一緒に向かうことにした。
そして、約数十分後──
撮影とやらが終わったようだ。
「じゃあ、帰ろっか」
「!?」
やはり、そうきたか・・・・・・。
「ん?」
俺は動かなかった。
「・・・・・・どうしたの?ション?」
俺は覚えている・・・・・・前に香菜の友達に会って長い時間立ち話をして、話が終わるとそのまま帰宅した。
散歩途中でコンビニ寄って、長い時間待たされて、戻ってきて散歩の続きかと思えばそのまま帰宅した。
そんなことが今までに三十回もあった。そして、そのどれもがいつも歩いてる距離の半分以下なのだ。
俺にとって、散歩はご飯を食べるのと同じくらい楽しみで好きなのだ。それをこいつの都合で減らされてはかなわない!
「ション!行くよ!」
嫌だ!このまま行ったら散歩が終わってしまう!
しかし、このまま黙っていては駄目だ。人間に俺達の言葉は通じなくても声に出せば、分かってくれるかもしれない。
「ワオン!ワワワンワオオン!ワオオン!ワワワワオン!(嫌だ!まだ十分に歩いていない!帰宅せず、このまま散歩を続けろ!)」
「こんな所に止まってたら、人の迷惑になるでしょ!?」
それもそうだ。
俺は数歩斜めに歩いた。そして・・・・・・道の端で止まった。そのせいで前にいた香菜が引っ張られ、
「!?」
後ろに転びそうになる。
「まさか、端に寄る為だけに歩いたわけ?」
俺は頷いた。
「どうして、止まるの!?」
「ワオン、ワワワンワオオン!(だから、散歩の続きをしたいんだよ!)」
「何言ってるかわからないわ」
「くっ」
「そこをどうしても動かないっていうんなら・・・・・・」
香菜が俺に近づく。
「!」
まさか・・・・・・俺を捕まえて抱っこするつもりか!?
「ワオオン!?ワワワンワオオン!ワオオン!(ふざけんな!?誰が抱っこさせるか!そんなの犬の散歩じゃねえ!)」
「何言ってるかわからないけど、まあいいわ。さあ、観念しなさい」
観念できねえよ!・・・・・・あ!
俺はその時、香菜が俺に近づいてリードが緩んでいることに気づいた。
そうだ、このまま家と反対方向に逃げれば散歩を続けられるんじゃないか?
俺は家と反対方向に歩き始めた。
よし!これで散歩を──
「ワフッ!」
俺はつながってるリードに引っ張られた。
「ちょっとどこ行くの!?」
って、上手くいかないか・・・・・・。
そして、香菜はリードを手繰り寄せながら、俺に近づいてきた。
「ワフッ!」
このままじゃ捕まるのも時間の問題だ・・・・・・こうなったら──。
「!」
俺は素早く左右に動いた。
リードも左右に動く。
「ちょっと大人しくしなさいよ!」
「ワオオン!(断る!)」
こんなことしたからと言って、捕まらなくなるわけじゃない・・・・・・だが、俺もそう簡単に捕まって散歩を終わらせる気はない!しかし──。
「捕まえた」
「くっ!」
やっぱり捕まっちまった。
「さあ、帰るわよ」
ちくしょう!
俺はジタバタと妹の腕の中で足掻いた。
「ワオン!ワワンワオオン(クソー!このまま帰りたくねえよ!)」
「ちょっと大人しくしなさい!」
「ん・・・・・・香菜?」
この声はまさか──。
「お兄ちゃん!?どうしてここに?今日は日雇いのバイトで遅くなるって・・・・・・」
「それが思ったより早くに終わってね。それより、どうしたんだ?ションを抱えて・・・・・・」
「ションが急に動かなくなって、だから・・・・・・」
「ションが動かなくなった?・・・・・・さては香菜!半分も歩いてないのに帰ろうとしたろ!?」
「え・・・・・・あ!そういえば確かに」
さすがご主人!
「ごめんね。あたしったら長い時間、外にいたから散歩した気になってた。今から散歩の続きするから」
「ワオン!」
お前の感覚はどうなっているんだ!と言いたいが・・・・・・散歩の続きさえしてくれりゃあいいさ。
「じゃあ、俺は家に帰るから」
「うん。分かった」
ご主人はそのまま帰っていった。
「じゃあ、今回はいつもより長く歩こうか」
「ワオオン!(うっしゃああ!)」
ご主人のおかげで俺と香菜はいつもより長い距離、散歩をすることになった。
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