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Folge 05 弟妹の学校生活
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「――それでね、今日の姉ちゃんたちは、ツィスカが二人から告白されたんだけど――いや、されかけたんだけど、二人共カバンで殴り飛ばされて撃沈。カルラは一人来て……カルラ、あれって何したの?」
「おいおい、ツィスカがカバンで殴り飛ばすのも毎回とは言え酷いが、カルラはシッシッて手を振るだけじゃなかったっけ?」
「それがね、僕が見かけた時はなんかビシッって音がして、告白しようとした男子が一瞬何をされたのかわからないって感じでジッと立ち尽くしてたんだ。どうしたんだろって見てたら突然腕を抑えて『痛いっ、あ、あ、痛いっ』って凄く痛そうにして教室を出て行ったんだよ」
オレは右腕に抱き着いているカルラに聞いてみる。
「何をしたのか教えな、カルラ」
カルラは抱き着く力を増してから甘え顔になってオレと目を合わせた。
「サダメのことが気になってイライラしているところにそいつが来たから、怒ったの」
「八つ当たりはマズイぞ~。そいつはカルラが好きで告白しに来たんだろ? 自分の事を良く思っている人に悪い態度をとるのは良くないな」
「わたしはそいつのこと知らない。告白までがみんな早すぎ。何もわたしのこと知らないのに好きになるわけがない」
そう言ってオレの脇に顔を埋める。
臭わなきゃいいけどな。
「気持ちはわかった。――で、そのビシッてやつは何をしたんだ?」
「ムチ」
無知?
そりゃオレはあんまり頭が良いとは言えないが。
ここで俺を罵倒するとは兄貴と知っての狼藉か?
「ムチ?」
「そう、鞭。護身用にいつも持ち歩いているの。間近に来られる前に攻撃ができるから結構優秀な武器よ」
脇から再び顔を出してオレと目を合わせてそう言った。
簡単に言うけど、どこで手に入れたんだ?
話の趣旨とは違うところが気になるじゃないか。
「いやいや、鞭なんか学校へ持っていってはいけないだろ。お前たちの身の安全を気にすると持っていなさいと言いたいところだが」
少し笑みを浮かべながらカルラはオレの話をジッと聞いている。
「心配してくれているのね、サダメ」
「そりゃいつもお前たちのことは心配しているよ。でも、鞭で男子にケガさせるとか、そういう悪い子だと考えちゃうな。もう少しやり方があるだろ。いつものシッシッでいいんじゃないか?」
言っててそんな対応が良いのか悪いのか判断つかなくなっている。
でも、鞭で追い払うよりマシなのは確かだろう。
「わかった、もう少しやり方を考えてみる」
「武器系は無しな! シッシッで充分だから」
カルラは腕にペタっと頬を押し付けて甘えと誤魔化しを同時にしている。
可愛いなあ。
頭を撫でてあげたい。
だけども、言うまでもなく左腕にはもう一人くっついている。
「ツィスカさあ、鞄で殴るってのはやめる気ないのか?」
「やっとあたしの話になったあ! 待ってたよ兄ちゃん!」
眼を輝かせながら怒られるのを待つんじゃない!
家族以外のことは全く気にしない子たちだから困ったもんだ。
「質問に答えろ~」
腕を上り棒のようにして拳一つ分程よじ登る。
楽しそうに犯行について語りだした。
「カルラと一緒でさ、全く知らない男が近寄ってきたら嫌じゃん! 話すどころか見たことも無いような人、女子だとしても警戒するよ」
「気持ちはわかるんだよ。大抵お前たちとは普段付き合いの無い奴らが告白なんてことを軽々しくしてくるわけだから。でもな、過剰な正当防衛は逆に加害者になっちまう」
「あたしは十分嫌な思いをしたし、知らない人が近寄ってくる恐怖を味わわされたんだよ! そのお返しとしては妥当でしょ?」
こいつらもバカじゃない。
それなりに考えての行動なハズなんだ。
でもな、起きた事柄だけを切り抜くとこいつらが悪く聞こえてしまう。
そこがもどかしいんだよ。
「タケル、その辺傍から見ていて周りの反応はどうなの? まずい雰囲気とかある?」
タケルはジュースを飲みながら姉たちの話を聞いていた。
「姉ちゃんたちのやり方を悪く言う人はいないよ。基本、みんな姉ちゃんたちのこと好きだから。女子も告白するぐらいだからね。ツィスカが殴るのもそれ自体は良くないことなんだけど、生徒間ではそうされても仕方ないとか、寧ろ殴られた男子は後で喜んでたりするから」
なんだよそれ。
もちろん、妹が悪行をしていることを気にはしていた。
だけど、それ以上に他の生徒が何かと問題有りな感じか。
じゃなきゃとっくに学校からオレが呼び出されているよな。
面談では褒められるばかりってことは学校側に伝わっていないのか?
「まあ、できるだけ静かに行動するように。一応保護者として言っておくぞ。ところで、タケルは何もないんだろうな?」
「ん~、僕はみんな仲良くしてくれるから嫌だなと思うことはないよ。強いて言うと――女子がやたらと触ってくることかな。髪の毛弄るとか、手相を見てあげるとかいいながら手を触るとか、腕とか肩を強引にマッサージしてくるとか、肩をポンポンて叩くから振り向くと人差し指でほっぺた突かれるとか、授業中に偶然目が合うとクスクス笑ってるとか、あ、これって嫌なことになるのかな」
「そういう感じか。女子からならよくある話だな。男子からは何もないのか?」
「一緒に大きな荷物を運ぶ時に僕は平気なんだけどみんなが手伝ってくれたり、ちょっと顔を洗ったらタオルを貸してくれたり。手とか肩が当たったらやたら謝られるとか」
「それは……今まで通り、か」
男子に女子のような扱いをされるのがタケルの日常だ。
これぐらいなら何も問題はない。
ま、今日の報告はこんなもんかな。
「よ~し、報告会は以上!」
「ちょっと待った!」
なんだ!?
ツィスカが思いっきり腕を握りしめて大声出すから左耳がキーンとしてるぞ。
「なんだよ?」
「さっきの人の事だよ! 兄ちゃんこそほんとに大丈夫なの!?」
「美乃咲さんか。蒸し返すなよ~。その話は終わっただろ?」
カルラも握る力を増して話に加わってきた。
「だって、今日友達になったといっても、ウチを見たいってことにはならないでしょ? やっぱりあの人は怖いわ」
「僕もちょっと背筋に冷たいものが走ったよ」
「ああ、もうちょっとちゃんと話しておくな。実は学校でさ、裕二と話をしている所へ彼女が来たのさ。そしたらいきなり付き合ってくださいって告られた」
――――――――!?
全員の凍り付いた空気が本当に部屋の空気を冷たくしたぞ。
どうも相当な衝撃を受けたらしい。
だよね、告白する話すら無かったオレが告られるって話、初めてだもんね。
――――――――!?
いや、凍てつき過ぎだろ!
そこまで固まられるとオレのモテない心が痛むだけだ。
もうちょっと兄貴を労わって欲しいなあ。
――――――――!?
お前らワザとだろ。
兄貴で遊ぶな!
「おい、兄ちゃんは傷ついたぞ。オレが告られるような男ではないというのか? じゃあ、お前らはそんなどうしようもない兄貴が大好きだという変態だということだな? ――――分かった。今日から風呂は一人で入るし、寝るときは部屋に鍵をかけてオレ一人で寝る。登校も一人で行くからな」
こんにゃろ。やり返してやったぞ。
…………。
「じゃ、とりあえず着替えてから飯を買いにコンビニにでも行ってくるか」
「……なさい」
「ん?」
「ごーめーんーなさいー、うわあーん!」
ちょ、ちょっと。
ツィスカが大泣きし始めちゃった。
他の二人も鼻をズルズルさせてるぞ。
――やり過ぎたか。
「はあ。あのな、オレも全く知らない女子にいきなり告られたんだ。さっきカルラが言っていたように、告るの早すぎるだろ? だから告白は受け入れていない。でもお前たちが見たように、家の近くまでついて来られたら友達ならって譲歩して納得してもらうしか逃げようがなかったんだよ。友達になるにも『はい、今日から友達です』って始めるか? それも異性と。仕方なくだよ」
こいつらはキャパ小さいくせに仕掛けてくるんだよな~。
まったく――――可愛い。
「はい。もうこの話おしまい! 藍原家のプライベートタイムが台無しになっちまう。みんな勉強もあるし、まだ着替えてもいないんだから、いつも通りに戻るぞ!」
「怒ってない? もういつも通りにしていいの?」
「寧ろいつも通りにしてくれ。オレは今日疲れたんだ。癒してもらいたいぞ~」
三人とも一気に笑顔に変わってそれぞれが動き出した。
「着替えたらすぐにご飯の準備するね!」
家事全てろくにできないオレがよくもまあこれだけ偉そうに言うよね。
でも、せめて兄貴面ぐらいしていないと。
この子たちはすぐに不安がるからさ。
笑っていられるように兄貴役をしないとな。
「おいおい、ツィスカがカバンで殴り飛ばすのも毎回とは言え酷いが、カルラはシッシッて手を振るだけじゃなかったっけ?」
「それがね、僕が見かけた時はなんかビシッって音がして、告白しようとした男子が一瞬何をされたのかわからないって感じでジッと立ち尽くしてたんだ。どうしたんだろって見てたら突然腕を抑えて『痛いっ、あ、あ、痛いっ』って凄く痛そうにして教室を出て行ったんだよ」
オレは右腕に抱き着いているカルラに聞いてみる。
「何をしたのか教えな、カルラ」
カルラは抱き着く力を増してから甘え顔になってオレと目を合わせた。
「サダメのことが気になってイライラしているところにそいつが来たから、怒ったの」
「八つ当たりはマズイぞ~。そいつはカルラが好きで告白しに来たんだろ? 自分の事を良く思っている人に悪い態度をとるのは良くないな」
「わたしはそいつのこと知らない。告白までがみんな早すぎ。何もわたしのこと知らないのに好きになるわけがない」
そう言ってオレの脇に顔を埋める。
臭わなきゃいいけどな。
「気持ちはわかった。――で、そのビシッてやつは何をしたんだ?」
「ムチ」
無知?
そりゃオレはあんまり頭が良いとは言えないが。
ここで俺を罵倒するとは兄貴と知っての狼藉か?
「ムチ?」
「そう、鞭。護身用にいつも持ち歩いているの。間近に来られる前に攻撃ができるから結構優秀な武器よ」
脇から再び顔を出してオレと目を合わせてそう言った。
簡単に言うけど、どこで手に入れたんだ?
話の趣旨とは違うところが気になるじゃないか。
「いやいや、鞭なんか学校へ持っていってはいけないだろ。お前たちの身の安全を気にすると持っていなさいと言いたいところだが」
少し笑みを浮かべながらカルラはオレの話をジッと聞いている。
「心配してくれているのね、サダメ」
「そりゃいつもお前たちのことは心配しているよ。でも、鞭で男子にケガさせるとか、そういう悪い子だと考えちゃうな。もう少しやり方があるだろ。いつものシッシッでいいんじゃないか?」
言っててそんな対応が良いのか悪いのか判断つかなくなっている。
でも、鞭で追い払うよりマシなのは確かだろう。
「わかった、もう少しやり方を考えてみる」
「武器系は無しな! シッシッで充分だから」
カルラは腕にペタっと頬を押し付けて甘えと誤魔化しを同時にしている。
可愛いなあ。
頭を撫でてあげたい。
だけども、言うまでもなく左腕にはもう一人くっついている。
「ツィスカさあ、鞄で殴るってのはやめる気ないのか?」
「やっとあたしの話になったあ! 待ってたよ兄ちゃん!」
眼を輝かせながら怒られるのを待つんじゃない!
家族以外のことは全く気にしない子たちだから困ったもんだ。
「質問に答えろ~」
腕を上り棒のようにして拳一つ分程よじ登る。
楽しそうに犯行について語りだした。
「カルラと一緒でさ、全く知らない男が近寄ってきたら嫌じゃん! 話すどころか見たことも無いような人、女子だとしても警戒するよ」
「気持ちはわかるんだよ。大抵お前たちとは普段付き合いの無い奴らが告白なんてことを軽々しくしてくるわけだから。でもな、過剰な正当防衛は逆に加害者になっちまう」
「あたしは十分嫌な思いをしたし、知らない人が近寄ってくる恐怖を味わわされたんだよ! そのお返しとしては妥当でしょ?」
こいつらもバカじゃない。
それなりに考えての行動なハズなんだ。
でもな、起きた事柄だけを切り抜くとこいつらが悪く聞こえてしまう。
そこがもどかしいんだよ。
「タケル、その辺傍から見ていて周りの反応はどうなの? まずい雰囲気とかある?」
タケルはジュースを飲みながら姉たちの話を聞いていた。
「姉ちゃんたちのやり方を悪く言う人はいないよ。基本、みんな姉ちゃんたちのこと好きだから。女子も告白するぐらいだからね。ツィスカが殴るのもそれ自体は良くないことなんだけど、生徒間ではそうされても仕方ないとか、寧ろ殴られた男子は後で喜んでたりするから」
なんだよそれ。
もちろん、妹が悪行をしていることを気にはしていた。
だけど、それ以上に他の生徒が何かと問題有りな感じか。
じゃなきゃとっくに学校からオレが呼び出されているよな。
面談では褒められるばかりってことは学校側に伝わっていないのか?
「まあ、できるだけ静かに行動するように。一応保護者として言っておくぞ。ところで、タケルは何もないんだろうな?」
「ん~、僕はみんな仲良くしてくれるから嫌だなと思うことはないよ。強いて言うと――女子がやたらと触ってくることかな。髪の毛弄るとか、手相を見てあげるとかいいながら手を触るとか、腕とか肩を強引にマッサージしてくるとか、肩をポンポンて叩くから振り向くと人差し指でほっぺた突かれるとか、授業中に偶然目が合うとクスクス笑ってるとか、あ、これって嫌なことになるのかな」
「そういう感じか。女子からならよくある話だな。男子からは何もないのか?」
「一緒に大きな荷物を運ぶ時に僕は平気なんだけどみんなが手伝ってくれたり、ちょっと顔を洗ったらタオルを貸してくれたり。手とか肩が当たったらやたら謝られるとか」
「それは……今まで通り、か」
男子に女子のような扱いをされるのがタケルの日常だ。
これぐらいなら何も問題はない。
ま、今日の報告はこんなもんかな。
「よ~し、報告会は以上!」
「ちょっと待った!」
なんだ!?
ツィスカが思いっきり腕を握りしめて大声出すから左耳がキーンとしてるぞ。
「なんだよ?」
「さっきの人の事だよ! 兄ちゃんこそほんとに大丈夫なの!?」
「美乃咲さんか。蒸し返すなよ~。その話は終わっただろ?」
カルラも握る力を増して話に加わってきた。
「だって、今日友達になったといっても、ウチを見たいってことにはならないでしょ? やっぱりあの人は怖いわ」
「僕もちょっと背筋に冷たいものが走ったよ」
「ああ、もうちょっとちゃんと話しておくな。実は学校でさ、裕二と話をしている所へ彼女が来たのさ。そしたらいきなり付き合ってくださいって告られた」
――――――――!?
全員の凍り付いた空気が本当に部屋の空気を冷たくしたぞ。
どうも相当な衝撃を受けたらしい。
だよね、告白する話すら無かったオレが告られるって話、初めてだもんね。
――――――――!?
いや、凍てつき過ぎだろ!
そこまで固まられるとオレのモテない心が痛むだけだ。
もうちょっと兄貴を労わって欲しいなあ。
――――――――!?
お前らワザとだろ。
兄貴で遊ぶな!
「おい、兄ちゃんは傷ついたぞ。オレが告られるような男ではないというのか? じゃあ、お前らはそんなどうしようもない兄貴が大好きだという変態だということだな? ――――分かった。今日から風呂は一人で入るし、寝るときは部屋に鍵をかけてオレ一人で寝る。登校も一人で行くからな」
こんにゃろ。やり返してやったぞ。
…………。
「じゃ、とりあえず着替えてから飯を買いにコンビニにでも行ってくるか」
「……なさい」
「ん?」
「ごーめーんーなさいー、うわあーん!」
ちょ、ちょっと。
ツィスカが大泣きし始めちゃった。
他の二人も鼻をズルズルさせてるぞ。
――やり過ぎたか。
「はあ。あのな、オレも全く知らない女子にいきなり告られたんだ。さっきカルラが言っていたように、告るの早すぎるだろ? だから告白は受け入れていない。でもお前たちが見たように、家の近くまでついて来られたら友達ならって譲歩して納得してもらうしか逃げようがなかったんだよ。友達になるにも『はい、今日から友達です』って始めるか? それも異性と。仕方なくだよ」
こいつらはキャパ小さいくせに仕掛けてくるんだよな~。
まったく――――可愛い。
「はい。もうこの話おしまい! 藍原家のプライベートタイムが台無しになっちまう。みんな勉強もあるし、まだ着替えてもいないんだから、いつも通りに戻るぞ!」
「怒ってない? もういつも通りにしていいの?」
「寧ろいつも通りにしてくれ。オレは今日疲れたんだ。癒してもらいたいぞ~」
三人とも一気に笑顔に変わってそれぞれが動き出した。
「着替えたらすぐにご飯の準備するね!」
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