妹は双子、カノジョである。~双子がダブるってマ!?~

沢鴨ゆうま

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Folge 04 尾行

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「ふむ。で、初めて告白されたと」
「目の前で見てたじゃねえか」

 裕二の奴、もう遊びモードに入ってやがる。
 す~ぐオレで遊ぶんだ、こいつは。
 今は授業も全て終わりホームルーム直後の下校前。

「で、藍原・ディスティニー・サダメ選手にお聞きします。今日のチャンスをどうされますか?」
「ん~だからそのミドルネームんとこは言うなと。どうもこうも、何の感情が湧く? 男的には綺麗な人から告られたんだから、決して悪い気はしていないし、勢いで付き合っちゃおうかなんて考えたりはするよ。でもさ、知らなさ過ぎて。裕二は隣のクラスの美人さんってことは知っていたわけだから、導入部分はスムーズかもだけどさ。オレはそうはいかないだろ」
「なるほど。ということは、見逃しで四球狙いと」
「わかりにくいわ! まあ、この話はお蔵入りじゃないかな。オレが微塵も知らなかった人に対して、恋のこの字すら思いようがないし」

 あれ以来、彼女は顔を出していない。
 ま、クラス中に知られているし、あちらのクラスでも話題になっていることだろう。
 さすがにそうなると気まずいんだろうね。
 どうあれ、オレは早く弟妹たちの様子が知りたくてしょうがないんだよ。
 あ~、帰りてえ。

「裕二、帰ろうぜ」
「そうだな。あの娘も来ないみたいだし。面白くなりそうだったのにな~」
「こんにゃろ。お前がそういう話になった時は徹底的に仕返ししてやるからな!」
「まだ何もしてないじゃん、嫌だなあサダメ君」
「ほら、まだとか言ってるし。何かする気満々じゃねえか。もういい、オレは帰るんだ」
「そう怒るなって。何も起きてないんだからカリカリしなさんな」

 確かになんだかイライラしている気がする。
 こういう時は早く帰った方がいい。


 裕二と校門で別れてから一人家路を急ぐ。
 家までは十五分だから走ってまで急ごうとは思わない。
 だけど、気持ち早歩きぐらいな感じで。
 毎日歩く道を同じラインで歩いていた。
 するとどうも自分のものではない不規則な足音がする。
 加えて嫌な予感しかしない目線を感じる。
 これは、つけられている?
 いやいや、オレごときを尾行したところで何の得にもならないでしょ。
 気のせい気のせい。
 中学校と高校それぞれに向かう交差点に差し掛かった。
 ちらほらと下校している中学生。
 その中に弟妹がいないか探してみるが、見当たらない。

 ――――つまんない。

 もう家に着いているか、オレが先に着くか。
 あ~、早くプライベートタイムに突入したい!
 さあ、後は家まで直進するのみだ。
 それだけのはずだが、やっぱり誰かついてきているんじゃないか?
 振り返るぐらいしてみるか。
 なんとなくフェイントまがいの動きをして振り返ってみた。

「ひゃ」

 ひゃ?
 今ひゃ? って聞こえたよな。
 おまけに、電柱裏で隠れているつもりの人間が見えているんだが。
 電柱からはみ出ているのは、見慣れた制服のスカート裾と肩の一部。
 女子につけられている!?
 今日はどうしたんだ?
 いよいよオレにも――――あ、そういえば。
 心当たりがあったな、あの娘なのか?

「もしかして、美乃咲さん?」
「ち、違います。――――んな~」

 えーっ!
 違いますって返事した後で猫のマネするかあ?
 あの声には聞き覚えがある。
 それにこんな返し方をする人と言えば、やっぱり美乃咲さんじゃないか。

「いや、美乃咲さん無理ありありだから。出てきてくださいよ。オレに用ですか?」

 もう美乃咲さんだと確信して声をかけてみた。
 ゆっくりと電柱から姿を現したのは、やはり彼女だ。

「まだお話の途中でしたので、その、続きのお話をしたかったのですけど、なかなか声を掛けられなくて」
「そういうことね。不審な動きをしていたらオレは逃げてしまうと思うんだけど」

 告白しに来た時と同じく、レアなモジモジのカバン持ちバージョン。
 そのスタイルで電柱の横に立っている。
 近寄っては来ないみたいだから、オレから近づいてあげた。

「んじゃ、話を聞こうか? でも、ほぼ答えは伝えたと思うんだけど」
「私と、付き合ってくださいませんか?」
「いや、伝わっていなかったのかな? 美乃咲さんのことをさ、オレ何も知らないんだよ。付き合うにはそれ相応の気持ちがないと無理じゃない?」

 美乃咲さんはモジモジの振りを強めて話を続けてきた。

「では、これから知ってください。今日こうやってお話させていただいたことで、藍原君は私の存在を知りました。これからは私の内面を知っていただければ付き合うかどうか、考えるラインに立たせてもらえると思うのです」
「随分強引だね。それだけオレのことを思ってくれているのは分かった。オレのことを良く思ってくれている人に失礼はしたくない。そこまで言ってくれるなら有りがちだけど、友達からって形でもいいかな?」
「ということは、お付き合いしていただける可能性が出て来たということですね? やっぱり藍原君は素晴らしい男性です! それでは、今から友達ということでお付き合いを始めましょう!」

 な~んか話がズレている気がしてならない。
 でもこの状況で納得してもらおうと思ったらある程度譲歩するしかないよな。
 知り合いという体でまずは友達に。
 それから付き合うかどうかを考えればいい。
 もしかしたらすっごくオレの好みな人かも知れないしね。
 まったく男ってのは――――。
 どうしてもこういう時、ハッピーエンドへの期待を持ってしまうんだよな。
 こういうところを女子がダメ出ししているんだと思う。
 チョロいんだよ、男は。

「友達ってことならオレもまだ気が楽だからそういうことで。じゃあね」
「承諾いただきありがとうございます! 私嬉しいです!」
「ああ、うん、じゃ帰るから」
「はい!」

 こんなんでもあれだけ喜んでくれるのか。
 機嫌を損ねずに話を済ませられたから上等だ。
 帰ろ。

 ――――あれ?

 まだ美乃咲さんがいる。
 ま、いっか。
 家の鍵を出してドアを開けようとしたら、中から物凄い足音が迫ってきた。

「兄ちゃんおかえり! 帰ってきてくれたんだ! 良かった……あ~、兄ちゃんだあ」
「ツィスカ、わたしもハグをしたいのだけど」
「待って、今は私の番!」

 ああ、これこれ!
 なんだかんだ言ってオレもこれが無いとダメな奴になってんだよな。

「ほら、兄ちゃん!」
「はいはい、落ち着け」

 ――――いつものしてます。

「あ~ん! ほんとに良かった。帰ってこないんじゃないかって勉強どころじゃなかったよ~」
「勉強、出来てないならキス三回抜きにするぞ」
「ちゃんとしたよ! しないと兄ちゃんが離れちゃうじゃん!」
「勉強どころじゃないって言うからだろ」
「三人ともちゃんと授業を真面目に受けた。問題ないわ。それよりわたしの番」

 カルラはツィスカをオレから剥がすように退かして抱き着いてくる。
 流れるような動きで濃厚なやつを口にしてきた。

「サダメだ。良かった、ほんとに。わたしはまだ生きることを許されたのね」
「大袈裟だなあ。朝の事は怒ってたわけじゃないんだから安心しなさい」

 ちょ、カルラ泣いてんじゃん!
 うわあ、すっげえ可愛い。
 涙を親指で拭いてあげたら、ウルウルな目でめっちゃオレをガン見してるよ。

「そんな泣くなよ~。もうカルラ、涙は卑怯だぞ」
「そういうつもりじゃない。けど、涙が出てくるの」

 だから可愛いってば。
 こいつらほんと凄いわ。

「僕もせめてハグさせて欲しいんだけど」
「タケルまでそんなに気にしてたのか? オレが学校にいる間何もしてやれないんだから、弟とはいえ男として姉ちゃんたちを守ってくれないと困るぞ」
「僕より姉ちゃんたちの方が強いから大丈夫だよ。僕は守られる方だ」
「こら、嘘をつくな嘘を。お前が弱いわけないだろ」

 タケル――実は小学校卒業まで合気道をやっていて、壱級を取得している。
 ちょっとした防御ぐらいはこなせるのだ。
 容姿が男らしくはないために習わされていたが、さらっと級位を上げていった。

「まあいいや、おいで。オレも心配だったんだ」

 タケルをハグしてやる。
 本当に男とハグしている感覚ではない。
 オレはさすがにタケルだとわかる。
 だけど他の男子がこんなシーンを体験したら驚くんだろうなあ。
 合気道に通っていた時も、相手の子がちょっと照れていたしな。

「さあ、そろそろオレを家に入れてくれないか? 逆に締め出されているような気がしちゃうよ」

 とその時、ツィスカが叫んだ。

「兄ちゃん、家の前で誰かがジッと見てる!」

 振り返るとなんと!
 美乃咲さんがこっちを見て立っていた。

「美乃咲さん!? なんでそこにいるの? 帰ったんじゃ」

 美乃咲さんはこっちに近づいてきて弟妹に挨拶をした。

「藍原君と友達としてお付き合いさせていただいている美乃咲美咲と申します。弟妹さんがいらしたのですね。凄く仲がよろしくて羨ましいです。藍原君とそんなに仲良くできるなんて。あ、家族なのですから当然ですね。私も混ぜていただきたいです」
「ちょっと美乃咲さん、それはおかしいでしょ。ってか、何か用ですか? もう話は終わったでしょ」
「藍原君のおうちを拝見したくてついてきたら、思わぬ状況を見てしまいまして。失礼しました」

 そう言うと、美乃咲さんは本当に帰ったようだけど、なんなのあの娘。

「兄ちゃん、友達って言ってたけど何あの人」
「そのまんま友達なんだけど、と言ってもついさっきそういう話になったばかりで」
「要注意人物かも。サダメ、気を付けてね」
「姉ちゃんたちは強いから毎日大丈夫だけど、兄ちゃんこそ気を付けてね」

 せっかくの帰宅イベントが台無しだ。
 変な空気のまま家に入ることになった。
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