妹は双子、カノジョである。~双子がダブるってマ!?~

沢鴨ゆうま

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Folge 35 当たり!?

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 彼女体験期間内では最終登校日の咲乃。
 いつも以上にベッタリとオレにくっついて登校した。
 普段からベッタリなのだから、めり込みそうだった。
 ラスト一週間をツィスカから告げられてすでに金曜日。
 オレのことを好いてくれているのだから、気持ちはわからなくもない。
 当事者であるオレが他人事のように考えてしまうのも、マズイよな。
 何故かと言えば、いまだにオレは恋愛についてピンと来ていないから。
 付き合うことと、仲良くするってことの線引きができないんだよ。
 妹や咲乃が彼女だと言われても。
 友達より特別に仲良くしているという感覚しかない。

「お! なになに? 物思いにふけっちゃって」

 あちゃぁ。
 裕二に気付かれてしまった。
 学校にいる間はほとんど一緒にいるから当然と言えばそうなのだけどさ。

「気にするな」
「なんだよ、親友の心配をするのは親友の役目だろ」
「仮面親友なんていらない」
「あ、親友は傷つきましたよ! あ~あ。親友の心に傷を負わせるとは」

 かぁ、めんどくせぇ。
 そっとしておくのも優しさだぞ。

「ボクという彼女がいるんだから、そういうのは任せておいてよ」
「これは失礼しました。そうだよね、彼女の役目だね。俺も彼女欲しい!」

 言ってろ。

「サダメ、大丈夫? ボクと離れるのが寂しい?」

 考えていた事とは少し違うのだけど、心配するのは彼女が優先になるのか。
 親友よりは近い存在。
 でも家族よりは遠い。
 家族で彼女の妹は――
 最強じゃね!?

「サダメ?」

 そういうことか。
 最強の妹が当たり前になっている。
 その感覚がいわゆる恋というものに疎くさせているのかもしれないな。
 なるほど――納得したようなしていないような。
 なんとなく理由がつかめた気がするな。

「ちょっと、サダメ?」

 それじゃあさ。
 オレはやっぱり妹以外の人と恋に落ちるなんて無理ってことになるんじゃ?
 さすがにそれはマズいだろ……マズいんだよな。
 いや、そもそもそれがマズいと思えていないことが――――
 あ?
 何か柔らかいものが……。

「おいおい、相変わらずだねぇ咲乃ちゃん。それ、男子諸君には厳しいムチなんだからさぁ」

 オレ、ダンジョン入りしていたのか。
 やっちまった。
 この雰囲気だと相当な時間無反応だったみたいだな。
 咲乃がキスして気付かせるぐらいだもんな。
 オレは咲乃の両肩をつかんでゆっくりと離れさせた。

「気が付いた?」
「ああ、ごめん。長かった?」
「五分。ボク、それ以上は待てなかったからさ」
「あはは」

 昼休みの食事後。
 裕二からの質問を挟みながら世間話をしていたところだ。
 周りの一部からは相変わらず厳しい目線を感じる。
 随分と減った方だけどね。
 学校でキスしている光景に慣れてしまうって、すごいよな。
 慣れてしまうほど咲乃がしていたってことだけど。

「来週から美咲ちゃんがここに来るわけかぁ」

 あ!
 こ、こいつ……。

「だからお前は!」
「え? あ、あ!」

 裕二が両手で口を塞いでいる。
 女子か!
 イケメンじゃないし、気づかな過ぎだし。
 弁当は白菜ばっかりだったし、駅前のラーメン屋は煮干ダシだし。

「裕二お前さぁ、頼むわ」

 咲乃は半べそをかいてオレの胸に顔を埋めている。
 猫にするように頭を撫でてあげるしかない。
 逃げ込む場所がオレってのは、妹たちと同じですごく嬉しいんだよな。
 ――可愛いな。

「えっと。裕二様のおかげでイチャつけているから無罪でいい?」
「お前さ、蹴っていい?」

 ちょいと力を込めて裕二のスネを蹴ってやった。

「な、ちょ、お前!」

 咲乃はそのぐらいの痛さを受けたんだよ。
 その辺で転がっとけ。

「ふふふ」
「咲乃、大丈夫か?」
「うん、ありがと。今ので元気出たよ」

 目には少し涙が残っているけど、それがまた綺麗だ。
 親指で拭ってあげるとさらにニッコリとしてくれた。
 じっと見ちゃうだろ。
 美人なんだからなおさらだ。

「咲乃、ちょっと飲み物飲んでくるよ」
「わかった」

 転がっている裕二を横目に見ながら教室を出た。
 向かう場所は自販機の集会所。
 そこに到着する頃には頭の中はぼんやりとしていた。
 だってさ。
 やっぱり急に彼女が変わるとか、わけわかんないじゃん。
 ようやく咲乃とのリズムというか、一緒にいる形が出来てきたというのに。
 付き合うってことがどういうことなのか。
 このまま進めばわかるかもって。
 そんなことを考えながら歩いているうちに自販機集会所に着いた。
 自販機集会所はオレが勝手に付けた名前。
 ネーミングセンスゼロだね。
 とりあえず落ち着きたい。
 手近にある自販機をチラ見して、いつも飲んでいる微糖のコーヒーを買う。
 透明なフタを開けてペットボトルに入ったデカいコーヒーを取り出す。

「あれ? まだボタンが光っているってことは……」

 これって、当たりじゃね?
 ボーっとしていた頭が叩き起こされた。

「まだ天は見放していなかったか」

 わけのわからないことを思わず呟きながら、せっかくなので選ぶ。
 当たると悩むよね。
 二本目が手に入るなんて考えていなかったわけだから。
 それに、妙に失敗をしないようにじっくりと吟味してしまう――不思議だ。
 その結果、咲乃のことが頭をよぎったので、ミックスフルーツジュースにした。

「こんなことでも喜んでくれるかな」

 なんて呟きながらジュースを取り出した。
 あれ?
 まだボタンが光っているぞ。
 マジかよ。
 当たりを押してさらに当たるなんてことあるのか。
 ラッキー過ぎる! 前より悩むじゃないか。

「え~っと、どれにしようかな」
「何やってんの、サダメ」

 悩んでいる所へ裕二が来た。

「お前復活したのか。早いな」
「ああそれな。ちょいとラッキーなことがあった瞬間痛みが取れた」
「なんだよ、何があった?」

 ニヤニヤとしやがって。
 もう一度蹴るぞ。

「俺さ、倒れていただろ?」
「そりゃあオレが蹴ったからな」
「その時にちらっとだけど咲乃ちゃんのスカートの中が見えたんだ」

 はぁ!? こいつ……。
 許さん!

「待て待て待て!」
「問答無用!」
「いや、自販機だよ自販機!」
「は?」
「もうすぐ押せなくなるぞ。当たったんだろ?」

 自販機の当たりは確かにある程度時間が経つと無効になる。
 それを言われて攻撃を止めてしまった。
 まずはボタンを押しておこう。

「ところでさ、サダメ」
「なんだよ」
「料金表示の数字が減っていく一方なんだが、当たりと関係あるのか?」

 あ。
 ああ。
 あああ!?

 こ、これって投入した料金の表示……。
 てことは、当たりじゃなくてオレの金で買っていただけって事!?
 膝の力が抜けて座り込んだ。

「マジかよ」

 その言葉を吐くと同時に誤ってボタンに触れてしまい、ゴトンと音がした。

「気づいてなかったのか。てっきり咲乃ちゃんと俺に買っているものだと」
「お前に買うわけないだろ!」

 自販機から取り出した缶コーヒーを裕二に放った。
 なのにアイツ、上手く受け取っちまいやがって。

「あざっす!」
「むかつく! 散れっ!」

 なんだよ、何がラッキーだよ。
 真逆じゃん。
 結局トボトボと教室へ戻る。
 咲乃にジュースを渡しながら寄りかかった。

「サダメどうしたの?」
「いや、何も聞かないで」

 オレの500円玉……。
 買い物をするときは、ボーっとしていないときにしようと心に誓った昼休みでした。
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