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Folge 34 理解不能
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「タケルが凄く嬉しそうね」
「ほんとね。サダメと二人で入ったのは正解だったみたいで良かったわ」
久しぶりにタケルと二人だけで風呂に入って話をした。
風呂を出てからタケルの表情はずっと明るい。
これだけの事でこいつらの気分を明るくできるのか。
オレでも役に立てているってことなのかな。
いやいや。
こいつらが大人なだけだよな。
いつまでも兄になりきれないオレがそんなこと……。
助けてもらっているのはオレばかりで。
「だからなんで急にそんなこと言い出すの」
「元々は私が最初にお声を掛けたからです」
「先着順で決めるものじゃないでしょ?」
「先着順ですよ! だから皆さん必死なんじゃないですか」
「そんなに必死な人いないと思うけど」
「咲乃は今まで関わらなかったから知らないだけです!」
「美咲に経験があるような言い方しないでよ、ボクと同じじゃない」
なんだなんだぁ? 朝から騒がしい。
それに何の躊躇も無く我が家に入って来るとは。
「ちょ、家の鍵は閉めて無いのか?」
「え? だってあの二人が来るから開けてあるわよ」
「それでも不用心過ぎるだろ」
「大丈夫よ、サダメとタケルがいるんだから」
「そういうところは頼られるのな」
まったく、男の価値って結局は体を張れるかどうかってことなのか?
それすら求められるものが無いよりはマシかも知れないが。
あ、いやいや。
そんな低レベルな次元で物事を考えるのはマズイ。
自分を安売りしちゃだめだぞ、サダメ。
それはいいとして、美乃咲姉妹が喧嘩とは珍しいな。
何を言い争っているのかな。
「サーちゃんは私のです!」
「あのさ、サダメの彼女はボクなんだけど?」
「う、そ、それは……」
「はい、ボクの勝ち」
「勝ち負けの話じゃなくて……」
「いや、先着順がどうとか言ってたよね。なら勝負じゃない」
「ああん、もう!」
はは、オレのことでした。
ま、まあ、今あの二人から出てくる話題と言えば、オレしかないとも思うけどさ。
おっと、調子に乗ってはいかんいかん。
あの二人に会う前と比べて対人感覚が変わってしまったようだ。
オレに対する評価と言うか何かが麻痺してしまっているようで、自分基準が分からなくなってきた。
モテるのも辛いものなのな――ああそういうとこだよね。
いけないと思ったそばからこれだよ。
「二人共おはよ……あら、素通りされちゃった」
「まずは兄ちゃんでしょ。しかたないわ」」
そう。
美乃咲姉妹はまっすぐに向かって来た。
タケルと一緒に食卓で朝食の用意をしているオレの所へ。
「おはよ、サダメ」
「サーちゃん、おは……あ!」
挨拶をしながら咲乃の唇が躊躇なくオレの唇へと着地した。
平和な朝だ。
「ちょっと! いきなり何をやっているのよ!」
「何って見ての通り朝の挨拶じゃない」
「挨拶って……」
「恋人同士なら当然でしょ、ね? サダメ」
どうも平和な朝だという情報はガセだったらしい。
さて、恋人同士で朝の挨拶がキスというのは当然なのかがオレにはわからない。
気まずい空気を少しでもなんとかしようと、自然にタケルへと目をやった。
「咲乃ちゃんは兄ちゃんにキスするまで止まれないんだから、しかたないよね」
そう来たか。
確かにそれこそが咲乃なのだけど。
どうにかしたいとこだけど無理なのかな。
それを嫌かと聞かれると、正直嬉しいから困る。
オレって駄目なやつだ。
知ってた?
――ぐはっ。
これでもがんばっているはずなんですよ、はずなのです、はず。
「美咲はしないの?」
「わ、私!?」
「だって、好きなんでしょ?」
「で、でも彼女じゃないし」
「ああそっか、そうだったね。ごめんごめん、ボクだけがサダメの彼女だった」
「ちょっと! それは違うわよ」
ツィスカがツツツっとオレの横に来た。
そして腕に抱き着く。
「咲乃ちゃん、ちょっと調子に乗り過ぎよ。彼女はあたし」
「わたしもね」
しっかりとカルラも主張する。
そう。
あくまでも咲乃が彼女なのは仮だから。
オレの正彼女は妹二人……。
正彼女ってなんだ?
いよいよハーレム感が増して来ているなあ。
大丈夫かな、オレ。
「ごめんなさいツィスカちゃん、言い過ぎでした」
「気を付けてね」
咲乃はオレの彼女という位置を必死で守る行動をとる。
その一番が妹たちの機嫌を損ねないようにすること。
とにかく妹の言うことには従うんだ。
「あのツィスカちゃん、私も体験させてはもらえないかしら?」
美咲がツィスカにそんなことを言い出した。
最近はオレから離れてタケルと話していたのにどうしたっていうんだろ。
タケルの話では、まだ話せる状況では無いようだったし。
「美咲ちゃんも彼女体験したいの? う~ん、どうするカルラ?」
「どうするって、咲乃ちゃんが体験できているなら同じことだからいいんじゃない?」
おいおい。
話が通ってしまうのかよ。
「え!? ボクがそのまま彼女になるよ!」
「うーんと、あくまで体験中だからね。姉妹なんだし、どちらにも体験してもらいましょう」
「そんな……」
まるでドラマの芝居のようにがっくりと首をうな垂れる咲乃。
相当なショックを受けたようだ。
大変わかりやすい。
「でもいきなりここで終了っていうのも咲乃ちゃんが可哀そうだから今週いっぱいで交代」
いつものこととはいえ、オレ抜きでオレの事が決まってゆく。
この話の中心はオレだと思うんですけど。
何かを言ったところで聞いてはもらえないけどさ。
――情けなさ過ぎる。
「そういうことになったから、兄ちゃん」
「嫌と言う理由は無いけど、それで美咲はいいの?」
「ぜ、ぜひ!」
美咲は押したいのか引きたいのかどっちなんだ?
「そ、そうなのか……」
「サダメ、夜には私のところへ帰って来てね。それまで我慢してる」
「いや、オレから頼んでいる話では無いんだけど」
「美咲ちゃん良かったね! 咲乃ちゃんは残り一週間しっかり満喫してちょうだい」
はあ――みんなが話を畳みかけるから頭がついていけない。
もう完全にオレの脳では理解不能になっています。
これって有りな話なのか? いきなり彼女を変えられてもどう接すればよいのやら。
――――先が思いやられるなあ。
「ほんとね。サダメと二人で入ったのは正解だったみたいで良かったわ」
久しぶりにタケルと二人だけで風呂に入って話をした。
風呂を出てからタケルの表情はずっと明るい。
これだけの事でこいつらの気分を明るくできるのか。
オレでも役に立てているってことなのかな。
いやいや。
こいつらが大人なだけだよな。
いつまでも兄になりきれないオレがそんなこと……。
助けてもらっているのはオレばかりで。
「だからなんで急にそんなこと言い出すの」
「元々は私が最初にお声を掛けたからです」
「先着順で決めるものじゃないでしょ?」
「先着順ですよ! だから皆さん必死なんじゃないですか」
「そんなに必死な人いないと思うけど」
「咲乃は今まで関わらなかったから知らないだけです!」
「美咲に経験があるような言い方しないでよ、ボクと同じじゃない」
なんだなんだぁ? 朝から騒がしい。
それに何の躊躇も無く我が家に入って来るとは。
「ちょ、家の鍵は閉めて無いのか?」
「え? だってあの二人が来るから開けてあるわよ」
「それでも不用心過ぎるだろ」
「大丈夫よ、サダメとタケルがいるんだから」
「そういうところは頼られるのな」
まったく、男の価値って結局は体を張れるかどうかってことなのか?
それすら求められるものが無いよりはマシかも知れないが。
あ、いやいや。
そんな低レベルな次元で物事を考えるのはマズイ。
自分を安売りしちゃだめだぞ、サダメ。
それはいいとして、美乃咲姉妹が喧嘩とは珍しいな。
何を言い争っているのかな。
「サーちゃんは私のです!」
「あのさ、サダメの彼女はボクなんだけど?」
「う、そ、それは……」
「はい、ボクの勝ち」
「勝ち負けの話じゃなくて……」
「いや、先着順がどうとか言ってたよね。なら勝負じゃない」
「ああん、もう!」
はは、オレのことでした。
ま、まあ、今あの二人から出てくる話題と言えば、オレしかないとも思うけどさ。
おっと、調子に乗ってはいかんいかん。
あの二人に会う前と比べて対人感覚が変わってしまったようだ。
オレに対する評価と言うか何かが麻痺してしまっているようで、自分基準が分からなくなってきた。
モテるのも辛いものなのな――ああそういうとこだよね。
いけないと思ったそばからこれだよ。
「二人共おはよ……あら、素通りされちゃった」
「まずは兄ちゃんでしょ。しかたないわ」」
そう。
美乃咲姉妹はまっすぐに向かって来た。
タケルと一緒に食卓で朝食の用意をしているオレの所へ。
「おはよ、サダメ」
「サーちゃん、おは……あ!」
挨拶をしながら咲乃の唇が躊躇なくオレの唇へと着地した。
平和な朝だ。
「ちょっと! いきなり何をやっているのよ!」
「何って見ての通り朝の挨拶じゃない」
「挨拶って……」
「恋人同士なら当然でしょ、ね? サダメ」
どうも平和な朝だという情報はガセだったらしい。
さて、恋人同士で朝の挨拶がキスというのは当然なのかがオレにはわからない。
気まずい空気を少しでもなんとかしようと、自然にタケルへと目をやった。
「咲乃ちゃんは兄ちゃんにキスするまで止まれないんだから、しかたないよね」
そう来たか。
確かにそれこそが咲乃なのだけど。
どうにかしたいとこだけど無理なのかな。
それを嫌かと聞かれると、正直嬉しいから困る。
オレって駄目なやつだ。
知ってた?
――ぐはっ。
これでもがんばっているはずなんですよ、はずなのです、はず。
「美咲はしないの?」
「わ、私!?」
「だって、好きなんでしょ?」
「で、でも彼女じゃないし」
「ああそっか、そうだったね。ごめんごめん、ボクだけがサダメの彼女だった」
「ちょっと! それは違うわよ」
ツィスカがツツツっとオレの横に来た。
そして腕に抱き着く。
「咲乃ちゃん、ちょっと調子に乗り過ぎよ。彼女はあたし」
「わたしもね」
しっかりとカルラも主張する。
そう。
あくまでも咲乃が彼女なのは仮だから。
オレの正彼女は妹二人……。
正彼女ってなんだ?
いよいよハーレム感が増して来ているなあ。
大丈夫かな、オレ。
「ごめんなさいツィスカちゃん、言い過ぎでした」
「気を付けてね」
咲乃はオレの彼女という位置を必死で守る行動をとる。
その一番が妹たちの機嫌を損ねないようにすること。
とにかく妹の言うことには従うんだ。
「あのツィスカちゃん、私も体験させてはもらえないかしら?」
美咲がツィスカにそんなことを言い出した。
最近はオレから離れてタケルと話していたのにどうしたっていうんだろ。
タケルの話では、まだ話せる状況では無いようだったし。
「美咲ちゃんも彼女体験したいの? う~ん、どうするカルラ?」
「どうするって、咲乃ちゃんが体験できているなら同じことだからいいんじゃない?」
おいおい。
話が通ってしまうのかよ。
「え!? ボクがそのまま彼女になるよ!」
「うーんと、あくまで体験中だからね。姉妹なんだし、どちらにも体験してもらいましょう」
「そんな……」
まるでドラマの芝居のようにがっくりと首をうな垂れる咲乃。
相当なショックを受けたようだ。
大変わかりやすい。
「でもいきなりここで終了っていうのも咲乃ちゃんが可哀そうだから今週いっぱいで交代」
いつものこととはいえ、オレ抜きでオレの事が決まってゆく。
この話の中心はオレだと思うんですけど。
何かを言ったところで聞いてはもらえないけどさ。
――情けなさ過ぎる。
「そういうことになったから、兄ちゃん」
「嫌と言う理由は無いけど、それで美咲はいいの?」
「ぜ、ぜひ!」
美咲は押したいのか引きたいのかどっちなんだ?
「そ、そうなのか……」
「サダメ、夜には私のところへ帰って来てね。それまで我慢してる」
「いや、オレから頼んでいる話では無いんだけど」
「美咲ちゃん良かったね! 咲乃ちゃんは残り一週間しっかり満喫してちょうだい」
はあ――みんなが話を畳みかけるから頭がついていけない。
もう完全にオレの脳では理解不能になっています。
これって有りな話なのか? いきなり彼女を変えられてもどう接すればよいのやら。
――――先が思いやられるなあ。
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