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Folge 71 慣れない遠出
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「そんなものかな」
着替えさせてようやく出発できる。
女子四人の露出度も随分と下がった。
これはこれで良いのだよ。
普段見ていないファッションは新鮮。
結局何を着ても、どんな仕草もありがたいのだ。
「これじゃサダメを楽しませられないよ」
「充分に楽しんでいるぞ。みんな良い感じだよ」
「そ、そう? 気に入ってくれたならいいや」
妹の目覚めレベルが八十パーセント程になったようだ。
目覚めが遅いカルラは珍しい。
昨日は余程気合が入っていたんだな。
「この感じだと、さくみさが着替えさせたのか?」
「さくみさ?」
「うん。二人を纏めて呼ぼうと思ったらこうなった」
「あの。何故妹が先に言われるのかしら」
「『みささく』だとさ、ムササビみたいだし、『さ』が続くと言い難いから」
「美咲、サダメが決めたことだよ、いいじゃん」
「そうですね。ではさくみさで」
主従関係は継続らしい。
「気分で変えるかもしれないから。その辺は適当に」
なんて話は移動中でいいんだよ。
とりあえず出発だ。
動きの鈍い連中をなんとか引率する。
慣れない電車もなんとかクリア。
風情のある駅舎を抜けて到着感に浸る。
「んー、伸びッ! ……まだあ?」
「ツィスカ。まずはこの綺麗な空気とか風景とか、その辺をだな……」
「サダメ、普段外に出ないわたしたちよ。籠る場所までのことなんて楽しめないわ」
なんて残念なことを言うんだ。
オレは育て方を間違っていたようだ。
反省してしまう。
色々な所へ連れて行けば良かった。
ついつい家でじゃれるだけになっていたな。
尚更今回の旅行に感謝だ。
少しでも外の良さを知って欲しいな。
「ここからは私が案内しますので」
寧ろオレは場所を知らない。
頼むしかないよ。
「よろしくー」
と頼みはしたが。
別荘のあるブロック前まで巡回バスに乗っただけ。
案内の域に達していないぞ、美咲!
「これが別荘か。立派過ぎないか?」
「どうなんでしょうね。物心ついた頃にはすでにありましたし」
そうだよな。
育った環境が少々違うから、感覚も違うよな。
別荘があるのが普通。
ウチも親の仕事からすれば似たようなことになったかもなんだけどな。
おかげで大きめの家に住めているわけで。
「ささ、入って一息つきましょう」
立派なログハウス。
中に入る前から木の匂いに包まれる。
玄関ドアを開けるとカウベルが鳴った。
喫茶店にでも入ったような気分だ。
入るとさらにはっきりと木の匂い。
丸太の梁や暖炉、奥には階段もある。
「冷たいお茶でも出しますね。適当に座ってくつろいでください」
美咲がてきぱきと動き出す。
まだ家事の類をしている姿は見たことが無かったな。
なんとなく眺めてみる。
振り返る度にキラキラと光が散っているように見える。
もし朝のミニスカートだったら。
髪の毛と一緒にヒラヒラとしてもっと綺麗なんだろうな。
脚がジーンズに隠されていても見入ってしまうのだから。
「ちょっとサダメ。美咲を見過ぎだぞ! ボクを見なって」
「咲乃は朝にいいもの見せてもらったから」
「え! あれ、良かったの?」
「うん、似合っていたよ」
「……もお、そういうことはさあ、もっと早く言ってよぉ」
腕を人差し指でグリグリと押されている。
穴が開きそうだ。
パーカーとは違う長袖シャツ。
これも似合いますねえ。
この子もバリエーションが多くて見ているのが楽しい。
「妹と話すことが減っていますわよ、お兄様」
あちゃー。
ツィスカがプンプンだ。
「お前たちは言うまでも無く可愛いから」
「言わなきゃ駄目よ」
「……言ってないか?」
「今日は言ってないよ!」
「二人共寝ぼけから覚めるのに時間掛かっていたからだよ」
「キスも無いし、頭なでなでもないし、ハグも無いし、頬ずりも無いし……」
ブツブツ――――
えっと。
物足りない感じがしていたのはそれか。
遠距離移動に別荘。
さくみさに色々と任せていたし。
日常と違うから弟妹を構っていなかったかも。
タケルなんて声すら聞いていないのでは?
「お前たちから来てくれればいいのに。兄ちゃん寂しいなあ」
ちょっとした危機回避。
嘘ではないもんね。
「懐かれるのが好きなんだよなあ。知っているはずだよなあ」
これも本当のこと。
甘えて来る弟妹が可愛いのだ。
たまにこっちから甘えにいく。
このパターンが好き。
「……後でたっぷり甘えるからね」
「サダメ、落ち着かないの。どうしよう」
「カルラがそんな弱音を吐くなんて、気になる事があるのか?」
「だって、家族旅行だよ? どうすればいいの?」
動揺するほどに珍しい事。
気持ちは分かるなあ。
オレ自身が弟妹と絡むことを忘れていたぐらいだから。
「修学旅行と同じ気分でいいんじゃないか? 一泊だしさ」
「修学旅行……そうね、そうしてみるわ」
「タケルは大丈夫か?」
「ちょっと疲れちゃった」
「声を全く聞いていないなと思ったら、やられていたのか」
「なんだか緊張しちゃって。でもみんながいるから安心もしてて」
「わかる。何も変じゃないよ、安心しな。いつものメンバーだけだしね」
まだお昼時。
昼飯でも食べればみんな落ち着くだろう。
オレも含めて。
着替えさせてようやく出発できる。
女子四人の露出度も随分と下がった。
これはこれで良いのだよ。
普段見ていないファッションは新鮮。
結局何を着ても、どんな仕草もありがたいのだ。
「これじゃサダメを楽しませられないよ」
「充分に楽しんでいるぞ。みんな良い感じだよ」
「そ、そう? 気に入ってくれたならいいや」
妹の目覚めレベルが八十パーセント程になったようだ。
目覚めが遅いカルラは珍しい。
昨日は余程気合が入っていたんだな。
「この感じだと、さくみさが着替えさせたのか?」
「さくみさ?」
「うん。二人を纏めて呼ぼうと思ったらこうなった」
「あの。何故妹が先に言われるのかしら」
「『みささく』だとさ、ムササビみたいだし、『さ』が続くと言い難いから」
「美咲、サダメが決めたことだよ、いいじゃん」
「そうですね。ではさくみさで」
主従関係は継続らしい。
「気分で変えるかもしれないから。その辺は適当に」
なんて話は移動中でいいんだよ。
とりあえず出発だ。
動きの鈍い連中をなんとか引率する。
慣れない電車もなんとかクリア。
風情のある駅舎を抜けて到着感に浸る。
「んー、伸びッ! ……まだあ?」
「ツィスカ。まずはこの綺麗な空気とか風景とか、その辺をだな……」
「サダメ、普段外に出ないわたしたちよ。籠る場所までのことなんて楽しめないわ」
なんて残念なことを言うんだ。
オレは育て方を間違っていたようだ。
反省してしまう。
色々な所へ連れて行けば良かった。
ついつい家でじゃれるだけになっていたな。
尚更今回の旅行に感謝だ。
少しでも外の良さを知って欲しいな。
「ここからは私が案内しますので」
寧ろオレは場所を知らない。
頼むしかないよ。
「よろしくー」
と頼みはしたが。
別荘のあるブロック前まで巡回バスに乗っただけ。
案内の域に達していないぞ、美咲!
「これが別荘か。立派過ぎないか?」
「どうなんでしょうね。物心ついた頃にはすでにありましたし」
そうだよな。
育った環境が少々違うから、感覚も違うよな。
別荘があるのが普通。
ウチも親の仕事からすれば似たようなことになったかもなんだけどな。
おかげで大きめの家に住めているわけで。
「ささ、入って一息つきましょう」
立派なログハウス。
中に入る前から木の匂いに包まれる。
玄関ドアを開けるとカウベルが鳴った。
喫茶店にでも入ったような気分だ。
入るとさらにはっきりと木の匂い。
丸太の梁や暖炉、奥には階段もある。
「冷たいお茶でも出しますね。適当に座ってくつろいでください」
美咲がてきぱきと動き出す。
まだ家事の類をしている姿は見たことが無かったな。
なんとなく眺めてみる。
振り返る度にキラキラと光が散っているように見える。
もし朝のミニスカートだったら。
髪の毛と一緒にヒラヒラとしてもっと綺麗なんだろうな。
脚がジーンズに隠されていても見入ってしまうのだから。
「ちょっとサダメ。美咲を見過ぎだぞ! ボクを見なって」
「咲乃は朝にいいもの見せてもらったから」
「え! あれ、良かったの?」
「うん、似合っていたよ」
「……もお、そういうことはさあ、もっと早く言ってよぉ」
腕を人差し指でグリグリと押されている。
穴が開きそうだ。
パーカーとは違う長袖シャツ。
これも似合いますねえ。
この子もバリエーションが多くて見ているのが楽しい。
「妹と話すことが減っていますわよ、お兄様」
あちゃー。
ツィスカがプンプンだ。
「お前たちは言うまでも無く可愛いから」
「言わなきゃ駄目よ」
「……言ってないか?」
「今日は言ってないよ!」
「二人共寝ぼけから覚めるのに時間掛かっていたからだよ」
「キスも無いし、頭なでなでもないし、ハグも無いし、頬ずりも無いし……」
ブツブツ――――
えっと。
物足りない感じがしていたのはそれか。
遠距離移動に別荘。
さくみさに色々と任せていたし。
日常と違うから弟妹を構っていなかったかも。
タケルなんて声すら聞いていないのでは?
「お前たちから来てくれればいいのに。兄ちゃん寂しいなあ」
ちょっとした危機回避。
嘘ではないもんね。
「懐かれるのが好きなんだよなあ。知っているはずだよなあ」
これも本当のこと。
甘えて来る弟妹が可愛いのだ。
たまにこっちから甘えにいく。
このパターンが好き。
「……後でたっぷり甘えるからね」
「サダメ、落ち着かないの。どうしよう」
「カルラがそんな弱音を吐くなんて、気になる事があるのか?」
「だって、家族旅行だよ? どうすればいいの?」
動揺するほどに珍しい事。
気持ちは分かるなあ。
オレ自身が弟妹と絡むことを忘れていたぐらいだから。
「修学旅行と同じ気分でいいんじゃないか? 一泊だしさ」
「修学旅行……そうね、そうしてみるわ」
「タケルは大丈夫か?」
「ちょっと疲れちゃった」
「声を全く聞いていないなと思ったら、やられていたのか」
「なんだか緊張しちゃって。でもみんながいるから安心もしてて」
「わかる。何も変じゃないよ、安心しな。いつものメンバーだけだしね」
まだお昼時。
昼飯でも食べればみんな落ち着くだろう。
オレも含めて。
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