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第二章
第十九話 捗らない事への苛立ち
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「そんな感じで始めましょうか」
朝食を済ませた多駆郎と浜砂。
後片付けが終わると早々に仕事へとシフトされる。
食卓とは別の場所にあるテーブル。
仕事関連で使うために置かれているものだ。
そこで今回の作業フローと、開発について簡単な説明が行われた。
と言っても、ほとんどが機械のメンテに関することだが。
「肝心の開発なんですが……少々難しくて頓挫しているんです」
「あら」
「設備が稼働していない理由の一つです」
「まだ配属されて間もない私ですけど、経験上から助言出来る事もあると思うので色々と話し合っていきましょう」
「ありがとうございます。それが出来ると捗りそうですが……」
「何か?」
「ある程度の事は話せるのですが、所から止められていることも多くて」
頭をポリポリとかき始めた。
困り顔になりながら話を続ける。
「特にこの開発については秘匿性が高いので、浜砂さんでも伝えられないことだらけなんです」
「……そうなんですか。所の方針では仕方ないですね」
「どうして助手を付ける話になったのか不思議なんですよ」
「私が無理にお願いしたからもしれませんね」
「ん?」
「即戦力として所員にしていただきましたけど、より早く貢献できるように研修させてくださいとお願いしたんです。それで瀬田さんのお話が出て」
「そういう流れだったんですね。難しいことばかりさせるなあ」
頭をかいたまま作業を始めようと設備に近寄った。
「設備の状態を見ると、如何に作業をしていなかったかが分かるなあ」
おでこに片掌を当て、苦虫を噛みつぶしたような顔をしている多駆郎。
「仕方ないですよ、学生さんなんですから。私も瀬田さんについて聞いた時驚きました」
多駆郎は大学二年生。
父親からは化学系に行くよう強く言われていた。
しかし、興味があるのは天体を軸に電波や音響。
興味のあることをやりたい。
その気持ちを貫くために父親と何度も喧嘩混じりに話し合いをした。
結果、好きなことをさせる代わりに研究所の仕事を手伝うということで和解した。
「仕事を手伝うことで好きなことが出来ているから、やむを得ないんですけどね」
「こなしてしまう瀬田さんが凄いです」
「何も凄くないですよ。ただ出来ることをしているだけ」
白衣の袖を捲る。
設備の稼働部を手袋もせずに弄りだし、あっという間に手が真っ黒だ。
「それが偶然にも研究所の役に立っているだけ。おかげで経費を気にせず好きなことが出来ている。悔しいけど」
親への反抗心を垣間見せる多駆郎。
恵まれた環境の中でも、人の心が満たされるとは限らない。
「ある意味、そのお父様への気持ちがあるから、負けないように踏ん張れるんでしょうね」
多駆郎は一瞬作業を止めた。
その一瞬で浜砂の言葉を反芻したのか、天井へ目線を向ける。
すぐに作業を再開する。
「そうかも知れないですね。悔しいけど」
「悔しい、ですか? ふふ。それを力に変えている瀬田さん、素敵ですね」
再び作業が止まる。
出てもいないのに、汗を拭う仕草をする。
「変なこと言わないでください。手が滑りそうになった」
「ごめんなさい。気を付けてくださいね」
「浜砂さん次第ですよ」
「あら、初めて名前を言ってくれましたね。名字ですけど」
「ほら、また変なことを」
調子を狂わされまいと無理やり作業を進め出す。
今度は本当に汗が滲み出していた。
「ふふふ。瀬田さん、実は面白い方なんですね」
「オレは面白くないことで有名ですけど」
不貞腐れ気味に言い返す多駆郎。
すでに調子が狂っているように見える。
それを見て浜砂は益々面白く感じているようだ。
「皆さん、見る目が無かったんですね。私は見抜きましたよ」
軽い笑いが止まない浜砂。
多駆郎は居心地が悪そうだ。
「手伝いせずに帰ってもいいですよ」
「……すみません。言い過ぎました」
「遅いですよ。自分で気付いてください。全然見抜けていませんよ」
その言葉でまた笑みを浮かべてしまう浜砂。
徐々に多駆郎との話が弾むようになっている。
◇
多駆郎主導のもと、全ての設備がメンテを終了した。
と同時に浜砂の定時も迎え、帰宅の途に就いた。
帰宅後、本部に定期連絡をする。
今回行ったこと全てを伝える。
「やはり秘匿案件を任されていました。内容は教えられないと」
『情報が確かなことが確認できた以上、お前は少しでも情報を収集するように動け』
「わかりました」
ソファーの背もたれにバッタリと大袈裟に倒れてみる。
「瀬田さんが秘匿事項を離せないのは承知していたけれど、それって、所に信用されていないってことじゃない」
ため息をつく。
強引に勝ち取った多駆郎の助手。
現状への苛立ちが募る。
「じっくり話していけば崩せるかな」
改めて与えられたミッションをこなそうと気持ちを切り替える。
両頬をパチっと叩いていることでそれが伺えた。
朝食を済ませた多駆郎と浜砂。
後片付けが終わると早々に仕事へとシフトされる。
食卓とは別の場所にあるテーブル。
仕事関連で使うために置かれているものだ。
そこで今回の作業フローと、開発について簡単な説明が行われた。
と言っても、ほとんどが機械のメンテに関することだが。
「肝心の開発なんですが……少々難しくて頓挫しているんです」
「あら」
「設備が稼働していない理由の一つです」
「まだ配属されて間もない私ですけど、経験上から助言出来る事もあると思うので色々と話し合っていきましょう」
「ありがとうございます。それが出来ると捗りそうですが……」
「何か?」
「ある程度の事は話せるのですが、所から止められていることも多くて」
頭をポリポリとかき始めた。
困り顔になりながら話を続ける。
「特にこの開発については秘匿性が高いので、浜砂さんでも伝えられないことだらけなんです」
「……そうなんですか。所の方針では仕方ないですね」
「どうして助手を付ける話になったのか不思議なんですよ」
「私が無理にお願いしたからもしれませんね」
「ん?」
「即戦力として所員にしていただきましたけど、より早く貢献できるように研修させてくださいとお願いしたんです。それで瀬田さんのお話が出て」
「そういう流れだったんですね。難しいことばかりさせるなあ」
頭をかいたまま作業を始めようと設備に近寄った。
「設備の状態を見ると、如何に作業をしていなかったかが分かるなあ」
おでこに片掌を当て、苦虫を噛みつぶしたような顔をしている多駆郎。
「仕方ないですよ、学生さんなんですから。私も瀬田さんについて聞いた時驚きました」
多駆郎は大学二年生。
父親からは化学系に行くよう強く言われていた。
しかし、興味があるのは天体を軸に電波や音響。
興味のあることをやりたい。
その気持ちを貫くために父親と何度も喧嘩混じりに話し合いをした。
結果、好きなことをさせる代わりに研究所の仕事を手伝うということで和解した。
「仕事を手伝うことで好きなことが出来ているから、やむを得ないんですけどね」
「こなしてしまう瀬田さんが凄いです」
「何も凄くないですよ。ただ出来ることをしているだけ」
白衣の袖を捲る。
設備の稼働部を手袋もせずに弄りだし、あっという間に手が真っ黒だ。
「それが偶然にも研究所の役に立っているだけ。おかげで経費を気にせず好きなことが出来ている。悔しいけど」
親への反抗心を垣間見せる多駆郎。
恵まれた環境の中でも、人の心が満たされるとは限らない。
「ある意味、そのお父様への気持ちがあるから、負けないように踏ん張れるんでしょうね」
多駆郎は一瞬作業を止めた。
その一瞬で浜砂の言葉を反芻したのか、天井へ目線を向ける。
すぐに作業を再開する。
「そうかも知れないですね。悔しいけど」
「悔しい、ですか? ふふ。それを力に変えている瀬田さん、素敵ですね」
再び作業が止まる。
出てもいないのに、汗を拭う仕草をする。
「変なこと言わないでください。手が滑りそうになった」
「ごめんなさい。気を付けてくださいね」
「浜砂さん次第ですよ」
「あら、初めて名前を言ってくれましたね。名字ですけど」
「ほら、また変なことを」
調子を狂わされまいと無理やり作業を進め出す。
今度は本当に汗が滲み出していた。
「ふふふ。瀬田さん、実は面白い方なんですね」
「オレは面白くないことで有名ですけど」
不貞腐れ気味に言い返す多駆郎。
すでに調子が狂っているように見える。
それを見て浜砂は益々面白く感じているようだ。
「皆さん、見る目が無かったんですね。私は見抜きましたよ」
軽い笑いが止まない浜砂。
多駆郎は居心地が悪そうだ。
「手伝いせずに帰ってもいいですよ」
「……すみません。言い過ぎました」
「遅いですよ。自分で気付いてください。全然見抜けていませんよ」
その言葉でまた笑みを浮かべてしまう浜砂。
徐々に多駆郎との話が弾むようになっている。
◇
多駆郎主導のもと、全ての設備がメンテを終了した。
と同時に浜砂の定時も迎え、帰宅の途に就いた。
帰宅後、本部に定期連絡をする。
今回行ったこと全てを伝える。
「やはり秘匿案件を任されていました。内容は教えられないと」
『情報が確かなことが確認できた以上、お前は少しでも情報を収集するように動け』
「わかりました」
ソファーの背もたれにバッタリと大袈裟に倒れてみる。
「瀬田さんが秘匿事項を離せないのは承知していたけれど、それって、所に信用されていないってことじゃない」
ため息をつく。
強引に勝ち取った多駆郎の助手。
現状への苛立ちが募る。
「じっくり話していけば崩せるかな」
改めて与えられたミッションをこなそうと気持ちを切り替える。
両頬をパチっと叩いていることでそれが伺えた。
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