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第三章
第二十一話 慢心
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夏休みも終わりに近づいていた。
しかし、多駆郎絡みの不安な事件によって何もせずに終わろうとしている。
高校最後の夏休みだというのに。
そんな夏休みを過ごしているのが早貴。
自室に向けて階段を上がっている所だった。
携帯が鳴っているのが聞こえる。
「あ、はいはい」
その声が相手に聞こえるわけではないが、つい言ってしまう。
「タクだ! もしもし」
『もしもし、こんばんは』
デスク前の椅子に座る。
「もしかして、行っても大丈夫になった?」
『それが……』
多駆郎は今回の事件についての経緯を話した。
「そんなことに……じゃあ、助手さんはもう来ないの?」
『この件に関係無ければまだ来ると思う。今は開発が済んだところだから休暇中なんだ』
「仕事は一段落したんだね。そっちに行くことはできないの?」
『確認をとってみるよ。それを確認してから連絡すれば良かったね』
少々慌てていたこともあったのだろう。
確かに早貴への不安を取り除くには、多駆郎の家に行けるかどうかで決まる。
それ故、早貴は毎回多駆郎の家に行けるかどうかを確認している。
「でも、タクが無事そうで良かった。それだけでも安心するよ」
『まあ盗まれはしたけど会社のモノだし、自分の物は無事だから』
「なんかせっかく作ったものを取られるのって悔しいね」
『うーん。喜んで欲しい人とは違うっていうところが嫌なぐらいかな。開発はまた新しいものを作れば、もっと良いものになるし』
「タクは凄いね。そういう前向きな所が勉強になるの」
最近会えない続きである幼馴染。
会話が随分弾んだ。
◇
「浜砂が情報を掴んで、それを貝塚に渡したらしい。やられたよ」
「そうなのか。おやじからの指示だったから安心しちまっていたな」
木ノ崎は、父親から事の経緯を伝えられていた。
眉間に皺を寄せ、複雑な表情。
「俺も貝塚から振られた話だったからな。会社としてかと思いきや、まさかあいつ自身の名前で発表されるとは思わなかった。まんまと騙されたわけだ。貝塚派が出来上がっていたようだな」
「そっちも珍しく慢心していたのか? おやじらしくねえじゃんよ。敵を作っていたなんて、いよいよ歳か?」
「お前に引き継ぐ前に動かれた……慢心だったのかもしれんな。一番近くにいたあいつの企みに気づかなかったぐらいにな」
ため息が双方向で流れた。
親子でため息という、なんとも気分の悪い状況だ。
「亮太のことも社内外で随分と言われているようだ。女を引き離すなんて必要の無いことだったらしい。ただお前の悪評を作るためだけの指示なんだと」
「くっそ! 情けねえな」
「二人共蹴落とされたわけだ。こっちも信頼できる連中が抑え込むように動き始めちゃあいるが、たぶんどうにもできんだろう。いよいよ終わりだな」
木ノ崎家が引きずりおろされる結末。
おまけに恥も上乗せさせられる事態となっていた。
しかし、多駆郎絡みの不安な事件によって何もせずに終わろうとしている。
高校最後の夏休みだというのに。
そんな夏休みを過ごしているのが早貴。
自室に向けて階段を上がっている所だった。
携帯が鳴っているのが聞こえる。
「あ、はいはい」
その声が相手に聞こえるわけではないが、つい言ってしまう。
「タクだ! もしもし」
『もしもし、こんばんは』
デスク前の椅子に座る。
「もしかして、行っても大丈夫になった?」
『それが……』
多駆郎は今回の事件についての経緯を話した。
「そんなことに……じゃあ、助手さんはもう来ないの?」
『この件に関係無ければまだ来ると思う。今は開発が済んだところだから休暇中なんだ』
「仕事は一段落したんだね。そっちに行くことはできないの?」
『確認をとってみるよ。それを確認してから連絡すれば良かったね』
少々慌てていたこともあったのだろう。
確かに早貴への不安を取り除くには、多駆郎の家に行けるかどうかで決まる。
それ故、早貴は毎回多駆郎の家に行けるかどうかを確認している。
「でも、タクが無事そうで良かった。それだけでも安心するよ」
『まあ盗まれはしたけど会社のモノだし、自分の物は無事だから』
「なんかせっかく作ったものを取られるのって悔しいね」
『うーん。喜んで欲しい人とは違うっていうところが嫌なぐらいかな。開発はまた新しいものを作れば、もっと良いものになるし』
「タクは凄いね。そういう前向きな所が勉強になるの」
最近会えない続きである幼馴染。
会話が随分弾んだ。
◇
「浜砂が情報を掴んで、それを貝塚に渡したらしい。やられたよ」
「そうなのか。おやじからの指示だったから安心しちまっていたな」
木ノ崎は、父親から事の経緯を伝えられていた。
眉間に皺を寄せ、複雑な表情。
「俺も貝塚から振られた話だったからな。会社としてかと思いきや、まさかあいつ自身の名前で発表されるとは思わなかった。まんまと騙されたわけだ。貝塚派が出来上がっていたようだな」
「そっちも珍しく慢心していたのか? おやじらしくねえじゃんよ。敵を作っていたなんて、いよいよ歳か?」
「お前に引き継ぐ前に動かれた……慢心だったのかもしれんな。一番近くにいたあいつの企みに気づかなかったぐらいにな」
ため息が双方向で流れた。
親子でため息という、なんとも気分の悪い状況だ。
「亮太のことも社内外で随分と言われているようだ。女を引き離すなんて必要の無いことだったらしい。ただお前の悪評を作るためだけの指示なんだと」
「くっそ! 情けねえな」
「二人共蹴落とされたわけだ。こっちも信頼できる連中が抑え込むように動き始めちゃあいるが、たぶんどうにもできんだろう。いよいよ終わりだな」
木ノ崎家が引きずりおろされる結末。
おまけに恥も上乗せさせられる事態となっていた。
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